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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第1部】夜明前

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【1-9-2】

 馬車に揺られながら街道を進む。ラフェシア国内には数本の街道が設けられていて、その道をひたすすめば各州へ辿り着ける。ガレリオへは二、三日あれば着くだろう。


 する事もないために私は道ゆく人々や山々を眺めながら時間を潰す。こんなゆっくりとした時間はいつ以来だろうか。


「レオ将軍、ガレリオに戻られるのはいつぶりですか?」


 共に同行しているカイリに話しかけられた。ダラダラとした時間に駄目になりそうな自分を律しつつ、問いに対して考える。はて? いつぶりだろうか。


「……三年、いや四年ぶり? かな」


 カイリは私の答えを聞いて呆れた様子だ。


「レオ……。もう周りに誰もいないし昔みたいに話すけれど、貴方帰らなさすぎよ?」

「いやしかし、仕事がだな……」

「忙しい忙しいって言ってちゃいつまでも帰れないでしょ? 時間って作るものなんだから」


 年甲斐もなく母親に怒られるようだった。しかも正論のために言い返すこともできない。


「うむ、いやまあ……。しかしカイリだって帰っているのか?」

「私は帰ってるわよ? わりと頻繁に」


 いよいよ立つ瀬がなくなる。しかし忙しいのは事実なのだ。手紙もたまには送っているし問題はない、はず。


「私が遊びに誘ってもいつも仕事仕事って断るし、最近オシャレにも気を遣ってないんじゃない? 髪も枝毛が伸びてボサボサだし。そんなんだからいい年なのに浮いた話の一つもないのよ」


 ぶつぶつとカイリの愚痴が続く。こうなってしまった彼女は当分収まることがないことは昔から知っている。私は彼女の言葉を右から左へ受け流しながら、また周りの風景を眺める事にした。しかし故郷か。確かに久方ぶりだ。

  

 ガレリオはラフェシア国内の中南部地域に位置する。他諸国と比べても、長い歴史と広い領土を持つ由緒ある国だ。私たちは皆一様にガレリオ国民であることに誇りを持っていた。


 それゆえにラフェシア、当時のシェスカの傘下になるかを決める会議は大いに紛糾した。


『なぜシェスカの下になどつかねばならん。我々はガレリオだぞ?』皆同じことを言う。しかし理解はできた。共感もする。いかに他諸国を飲み込みつつあるとしても、我々には及ばないと。


 私もそう考えていた。あの方に会うまでは。

 

 古の六柱。太古の神々。彼女達は伝承の通りに我々よりも早く生まれ、そしてこの世界をコントロールしてきた。


 曰く人々を導き国家を創った。曰く疫病を治癒し世界を救済した。曰く驕り高ぶり世界の害悪と見做された種族を滅ぼした。これら以外にもその逸話は枚挙にいとまがなく、どこか荒唐無稽感を伴っている。


 ただ彼女達は確かに存在していて、その姿を歴史の表舞台に現す時には、良くも悪くも何かしら大事が起きるとされている。


 私ですら直接その姿を見た事はなく、表立っては言えないが存在自体疑っていたほどだ。あるいは存在したとて逸話は脚色されるものだ。事実の部分など、いかほども残っていないのではないかとすら思っていた。


 そんな私が彼女を初めて見たのは、とある式でのことだった。


 ガブリエット殿が国主となって数ヶ月も経たない間に、シェスカは周辺国へ宣戦布告と降伏勧告を発した。諸国は当然従う訳もなく応戦した。当たり前だろう。シェスカはお世辞にも強国とはいえなかった。今でいうところのラフェシアの最北の山脈地帯にあったその国は、領土は貧しく目立った産業も持たない。他諸国に頼み込み資金援助を受けているとの話すら聞いたことがある。そんな国が戦争を始めたなど、笑い話にもならなかった。


 しかしその評価はすぐに一変する。近隣諸国は瞬く間に陥落し、更にその近隣諸国へ再度の宣戦布告と、降伏勧告が為された。そして抵抗した国はまた圧倒的な力で攻め落とされる。まるでタチの悪い冗談だ。


 私達ガレリオに迫るのも時間の問題だった。私は自分の目で直接状況を確認するため直属の兵を従え、シェスカと当時争っていた国へ赴いた。どのような戦術を用いているのか、その強さの根源は何かを理解したかったのだが、私が着く頃には既に相手国は降伏を受理し、調停式が開かれる段階だった。


 予定とは変わってしまったが、私はせめてもとその調停式を遠目から見る事にした。ゆくゆくは我々の国にもその牙を向けるであろうシェスカの中枢が、どのような面々なのか見たかったのだ。普通外部の人間は出れないのだが、私は多少無茶をし式が執り行われる城内の大広間へと秘密裏に侵入した。


 シェスカから傘下しているのは三名のみだった。一人はまだ若い女性、噂には聞いていたがその方こそがガブリエット=シェスカ殿だとこの時に知った。そしてもう一人は老齢の男性で国の政り事を束ねているようであり、今回の調停式の取りまとめの役割を任されていた。そして最後の一人こそがミーム様だ。私はまだ彼女の存在に気付いてはおらず、彼女もまた顔を布で覆っていたために周りのもの達も何者なのか認識はしていなかった。


 私はこの時に正直がっかりとした事を覚えている。シェスカの圧倒的な強さの理由を知ることができるかと思いここまで来たのだが、女性と壮年の男性、そして少女と、肩透かしを食らった気分だった。ただせめて式を見届けようと彼女達を見続ける。定刻となり調停式がつつがなく執り行われる。――はずだった。


 ここで私は、私の希望通りにシェスカの強さの理由を目の当たりにすることになる。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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