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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第1部】夜明前

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【1-7-3】

 コホンと咳をしながらリムさんが佇まいを直す。私たちはあの後部屋の中に戻り、一息をついていたところだった。ちなみにモノは奥の部屋で寝かせている。


「それで、どうだった?」


 主語の無い質問ではあったものの意図は理解できた。


「……このままでは、私は到底貴方達に敵わないと思いました。果たしてラフェシアにもどの程度対抗できるのか」


 リムさんが頷く。


「その通り。そしてそれは私の目的が達成出来ない事も意味する。貴様には私よりも更に強い存在になってもらわないといけない」


 いやいやいや、それは果たして到達出来る領域なのだろうか……? 私はあくまでガブリエットやそれを指示した者達への復讐が目的であって、とてもリムさん以上の存在になるというのは想像ができなかった。しかし私の温度感を察してかリムさんは説明を続ける。


「貴様の相手はガブリエットとその上なのだろう? 奴らを殺すことが人生の目的。そうだな?」


 私もまた頷く。その言葉に誤りはない。


「――それはつまり、ラフェシアの頂点であり、私の姉であるミーム=ラフェシアを相手にするということだろう?」


 息を呑む。その名前には聞き覚えがあった。人族の神であるミーム=ラフェシア。太古の神々の次女。まさかラフェシアの王がまさしく彼女その人であるとは。しかしそれであれば別の疑問が浮かび上がる。


「……リムさんは、私がミームを殺すということに何も感じないんですか?」


 何故協力してもらっているのか疑問に思う。普通家族を殺されるとなれば止めてしかるべきなのに。


「……ん? なにか変か?」


 しかし当のリムさんは全く意に介してないようだった。


「いえ、あの、一応姉に当たるわけですし……」


 思わぬ反応に少し動揺しながらも言葉を返す。


「あー、なるほど。そうか。貴様達的にはそうかもしれない」


 うんうんと首を振る。そして彼女は一言で答える。


「――別に何にも感じない」


 本心から言っているのだろう。そこには躊躇も感傷も、一切の感情の色は感じられなかった。


「むしろもし貴様がミームを殺せるということは、貴様の存在自体が私の目的の達成を意味する。そんな喜ばしいことはない」

「そう、ですか」


 彼女の狂気を孕んだ目を見て私はそう答える他なかった。神々というのはみんなこんな感じなのだろうか。彼女は何事もなかったかのように話を続ける。


「それでだ。貴様にどうなって強くなって貰うかを説明しようと思う」


 私は真剣に耳を傾ける。彼女が話している通り、このままの状態では復讐なんて元より私は誰にも勝てない。強くなる必要があった。たとえどんな事をしても。


「うむ。いい目をしているな」


 満足そうにリムさんが頷く。


「ただ、その前にやって貰う事がある」


 また話の腰を折られる。しかしなんだろうか? 今度はどんな話が出るのか想像も付かない。


「私の後についてこい」


『あと短剣を一本持ってこい』と言われジーに手渡される。私はただ言われるがままに着いていく。行き先は奥の部屋で、更に階段を降り地下へと進んで行った。私はこの時初めて、この家が地下にも空間を有していることを知った。


「ここのお家って地下もあったんですね……」

「ああ。研究をする上で地上のスペースだけでは限界があるのでな。地下の空間を増築したんだ」


『下は私の個人空間みたいなものだ』などと言いながら下へと降りていく。思った以上に階段は長く地下深くまで続いている事がわかった。


 ようやく地下の階へと辿り着く。前方には細長い空間が見え、左右には扉で仕切られた部屋が何部屋にも分かれている。上の居住スペースよりもよっぽど広いのではなかろうか?


「この部屋に入るぞ」


 右手前から二番目の部屋に入る。部屋自体のスペースは狭く、真ん中にはベットがあるのみだ。ただそのベッドの上には人が寝かされていた。


「コイツに見覚えはないか?」


 彼女の言葉を受けその人へと近づく。顔をよく見る。

 

 ――確かに知った顔だった。

 

「……知っているだろう? 貴様の村を滅ぼした元凶の一人。ラフェシアの将レナードだ」


 ベッドで横たわっているのは確かにレナードだった。息もしているようで胸が上下している。


 ……なぜ? リムが確かに、殺したはずなのに。私は短剣を握りしめる。


「コイツがここにいるのはーー」


 リムさんの説明が入ってこない。呼吸もまともにできない。歯を食いしばる。そして私は衝動に身を委ねた。

 

 短剣を振りかざしレナードの喉元へと振り下ろす。躊躇いはなかった。――だが首に突き刺さる寸前で、リムさんによって止められる。


「スーニャ、少し落ち着け」


 私はフー、フーと荒い息をたてる。とても冷静になどなれなかった。仲間が、家族が、こいつに殺されたのだ。我慢など出来るはずもない。


「……リムさん、これはどう言う事ですか? 冗談じゃ済まされませんよ?」


 短剣はギリギリの部分で止まっている。実際に切先はレナードの喉元に届いていて血が首筋を流れていた。


「コイツは――「――いえ、自分で言わせてください」


 寝ていたはずのレナードが目を開ける。私の短剣を避け、ベッドから立ち上がる。私はまたどういうことかと驚いたものの、宿敵が生きている姿を見てマグマのような熱が身体を支配していくのを感じていた。


「スーニャさん、俺が貴方の家族達の命を奪ったのは間違いないことだ。貴方には私の命を奪う権利がある」


 冷静な態度がまた私の神経を逆撫でる。また短剣を振るおうとしたがリムさんに制止された。そこで一度呼吸を直し疑問をぶつける。


「……いったい、これはどういう状況なんですか?」


 殺したはずのレナードがなぜここにいるのか? リムさん達との関係は何なのか? 知らなければならない事が多くある。


「それについては私から答えよう」


 リムさんが口を開く。今度は私も話を聞いていた。


「まずレナードはそもそもラフェシア出身ではない。多少特殊ではあるが、モノやジーの姉弟と言って遜色ない。そしてラフェシアにいたのは私の命令だ。間者として情報が欲しかったのでな。長い間潜らせてた」


 衝撃的な内容に理解が追いつかない。ただそれでも確認しなければならない事は残されている。


「……なぜ私たちの村を襲撃した?」

「それは――「――今度は俺からの方がいいでしょう」


 レナードが再度話を始める。


「俺はラフェシアの軍に所属していて動向を探っていたところ、ある日ガブリエット殿と共にあなた方への襲撃を指示されたのです。理由はわかりません。ただミーム様の命でした」

「さっきも言っていたけれど、私の仲間を殺したのは事実?」


 唇を噛み締めながらに質問する。今にも飛びかかってしまいそうな自分を抑える。


「――はい。事実です」


 首を絞めようと手を伸ばす。そしてまたもリムさんに止められる。


「……スーニャ、一応聞こう。許す気はあるか?」


 たとえリムさんから頼まれても、こればかりは無理だった。


「無理です。私は、この人を許せない」


 今目の前でレナードが生きている。息をしている。それすらも許容出来ない。


「そうか。――仕方ない。では殺せ」


 そう言われ短剣を渡される。思わぬ展開に面食らう。リムさんを見るも怪訝そうな顔をしていた。


「なんだ? 殺したいんだろう? 好きにすればいい」


『レナードも抵抗するなよ?』なんて言っている。彼も彼で頷いている。周りからみたら異常な絵面だろう。殺される側が、殺される為の準備をしているのだ。理解不能な場面だ。


 ――しかし、私は再度短剣を振りかざす。そこに一切の躊躇いはなく、罪悪感もなく、あるのは復讐を成し遂げられる高揚感だけ。


 剣が彼の喉元を貫く。勢いをつけたからか何も感触を感じない。辺りに血が飛び散る。彼は直後に崩れ落ち、少しの間痙攣した後動かなくなった。


 私はゾクゾクと背中を何かが這い上がっていく感覚を感じながら立ちすくんでいた。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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