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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第1部】夜明前

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【1-7-2】

 モノに向かって私がどれだけ剣を振るっても、奇を衒った攻撃を繰り出しても、その身体を捉えることはおろか、掠ることすらできなかった。


 次にモノが構えて、私に剣を振るう。私は避ける事も出来ず、受けた剣は簡単に弾き飛ばされた。……いやこんなにも差があるものか? まるで、次元が違っていた。

 

「モノ、どうだ?」


 リムさんがモノへ声をかける。モノは汗一つかかず息もあがっていない。こっちはもう満身創痍だというのに。


「スーニャ弱い」


 ガンッと何かで殴られたような衝撃を受ける。確かにそりゃ天性のものはないかもしれないけれども、まさかこんな少女からそんな風に言われるなんて……。


「具体的にはどのような部分がだ?」


 リムさんも全く意に介さず話をすすめる。リムさんも少しくらいフォローしてくれても……。


「スーニャ力弱い。速さもない。目も良くない。それに体力無さすぎ」


 実際に手も足も出ていないので、ぐうの音も出ない。しかし姉のリムはガブリエットとやり合えてたはず。モノが強いといってもガブリエット程ではないだろう。それであれば私とモノとのこの差は一体?


「ふむ。では次にいくぞ」


 リムさんと次に向かった先はジーの元で、また別の素養を確認してもらう。


「ーーふーむ? いやスーニャ。魔法の才能ないですねー」


 ジーからもバッサリと言い放たれる。私はガックリと項垂れる。まぁ、こっちの結果は予想していたもののやはりショックではあった。


 私とジーは手を合わせて向かい合わせに座っている。ジーの魔素を私に流すことで、私の中の魔法回路を無理やり起こしているらしい。ただうんともすんとも反応がないようだった。

 

「うーんここまで反応ないのも珍しい気がするけど」


 ジーは怪訝そうな顔をしているが、それでも無いものは仕方がなかった。しかし本当にどうしたものか。これでみんなの仇を取れるのだろうか……。さっそく暗礁に乗り上げ私は頭を抱える。


 それに拾ってくれたリムさんへも申し訳がたたない。もう用済みだ、なんて言われたらどうすれば……。そんな私の予想とは対照的にリムさんはご機嫌だった。


「ふふっ。上々の結果だな」


 なぜそんな発言をするのだろう? 彼女の目的のためにはこの結果はむしろ足を引っ張るものだろうに。


「スーニャ。一度外に出ろ。それとモノ、貴様の剣を持ってこい」


 ピクッとモノの耳が揺れる。普段ほとんど変わることのないその表情が、若干の喜色と緊張感を写している。その後別の部屋へ向かうモノを見送り、私たちは外へ出る。何が行われるのかと思っているとリムさんが話を始めた。


「スーニャよ。貴様の身体は、瀕死の状況を切り抜けるために、多くの部分を回復に用いたようだ。だから今の膂力は人並み程度しかない。いやむしろそれ以下か。魔法は元々素養がないようだが」


『あくまで推測だがな』と付け加え、彼女は話を続ける。


「貴様の目的は今のままでは到底叶うことはない。ラフェシアはアレで一応、世界を牛耳ろうとしている国だ。ましてやその上層部なんて、今の貴様とは次元を異にする存在といえよう」


 分かりきっていた事実だ。ただそれでも私は……。唇を噛み締めているとリムさんが私の頬を撫でてきた。


「安心しろ。私が貴様を生まれ変わらせてやる」


『そしてその道筋も今見せてやる』と彼女が囁く。どう言う意味なのだろうか? 


 話を聞こうとしたタイミングでモノが外へと出てきた。驚いたことに、彼女は身の丈よりも長く体よりも大きな大剣を携えている。使い古されているのか端々は錆び、欠けていて、持ち手の部分の布は剥がれ落ちそうになっている。これがモノの本当の武器なのだろうか?

 

「始めるか。モノいつでも掛かってこい」


 驚きから思わず声を上げてしまう。リムさんがモノと戦う? ただ私が確認する暇もなく、モノはすでに臨戦体制に入っていて、自分よりもずっと重いはずの剣を構えていた。そして戦いが始まった。


 まずはモノが仕掛ける。先ほどまでいた場所から一瞬で姿を消す。私は土埃が上がった所で彼女が動いたことに気づいた。


 モノはリムさんに向けて剣を振るっている。ただまるで初めから剣の軌道が読めているように、リムさんはそれをヒラヒラとかわす。当たらない所ではない。掠りさえもしなかった。まるで私とモノが戦っていた時のように。


「前よりも早くなったか? 鍛錬の成果だな」


 リムさんはというと全く余裕の様子だった。対してモノは攻撃に集中していて声を上げることもしなかった。


「……そろそろいいか?」


 モノのふるった剣を指で掴む。事もなげな動作であったが私からすると信じられない状況だった。そしてそのままにモノごと元いた位置へと放り投げる。


「モノ構えろ。受けられたら、何か褒美でも考えてやる」


 荒い息をしたモノは防御の体制に移る。それを確認した後、ーーリムさんは姿を消した。


 そして、轟音と共にモノの身体にその拳が突き刺さる。あのモノが一切反応出来ていなかった。


「……やりすぎたか?」


 あ、珍しい。リムさんが若干焦っている。攻撃を受けたモノは、数秒した後に『きゅ〜』と声をあげつつ崩れ落ちた。


「――やりすぎ!」


 今度はリムさんと、何故か私も一緒にジーに怒られた。プンプンと怒っているジーを前にしながら、リムさんは『いや加減はしたんだぞ?』なんて言い訳をしていたが『そんなの関係ありません!』と怒られ、言うすべなしだった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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