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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第1部】夜明前

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【1-6-3】

 彼女達の自宅に着いたのは夜も明け始めた頃だった。神が住む家が果たしてどのようなものかと身構えたものの、それは想像していたような不気味な洋館でも歴史を感じさせるおどろおどろしい古城でもなかった。……ファンタジー的という意味では負けていなかったけれど。


 彼女達の家は大きな老樹が元になっているようで、木の内部を切り出し居住スペースが作られていた。まるでゲームや漫画に出てくるような家だ。私達は玄関から部屋の中へ入っていく。中は思ったより開けていて左側にはリビング兼ダイニングキッチンが広がっている。彼女達はこの自宅の事をグンネラの隠れ家などと呼んでいた。


 しかし私達の里から辿り着ける距離にあるとは驚きだった。リムさんに言わせれば『貴様らの方が後から移り住んできたんだぞ? それにこのあたりは隠れ住むには都合がいい』ということらしかった。

 

 私達が帰ってきたのを察知したのか、家の中からトテトテトテと誰かの足音がした。


「ご主人! お帰りなさいー!」


 現れたのはこちらもまた猫耳娘だった。真っ白な毛並みを持ち白いドレスを着ている。彼女がモノが言っていたジーだろう。 


「あ、お客様? 珍しいー! こんにちは!」

「スーニャといいます。突然ごめんね」


 雰囲気もモノと対照的な快活な子だった。彼女は『んー?』とこちらを見てくる。なにか気になるところでもあっただろうか?


「……スーニャって男の人、ですか? それとも女の人?」


 ピシッと、私の中に亀裂が生じた音が聞こえる。……気になっていた事をどストレートに突かれた。いやでも待て、まだ真意はわからない。とりあえず相手の意見を聞こう。


「……ジーでいいんだよね? ちなみに貴方からはどう見える?」

「うーんパッと見ると完全に女性? でも男性の匂いもしますね。ちょっとだけご主人と近い感覚、かな?」


 完全に女性……。改めて指摘されやはり凹む。私も正直気にはなっていたのだけれども……。前よりも小さな手だとか、声の感じが違うとか。自然に私とか言ってるし……。


「スーニャどうでもいいがとりあえず風呂へ入ってこい。 モノ、手伝ってやれ」

「ん。承知」


 モノに手を引かれ浴室へと連れてかれる。全身血だらけだし、汗やら雨やら色々ベタついていて気持ち悪い。お風呂に入れるのであれば是非になのだが……。


「? スーニャ早く服脱いで」

「うん、いやそうなんだけど」


 脱衣所で私はまだ抵抗をしていた。なんだか見てしまったら申し訳ないような、罪悪感が湧くような……。


『えっちなことはしちゃだめだからねー!』そんな事をいってたリムを思い出す。いやしかしこれは不可抗力で……。


「ほら早くする」


 早く早くと服を脱がされる。私はしぶしぶながら、覚悟を決めて服を脱ぐ。『やっと脱いだ』と手を引かれ浴槽へと進んでいく。あれ、裸の女児に手を引かれている光景もまた宜しくないのではー? なんて思いつつも受け入れる他なかった。私は観念してモノと浴室に入る。

 

 ――ちなみに私の身体がどんなものだったのかは秘密にしておく。


「スーニャ、おっぱ――「――こらこらこら!」


 風呂から上がり髪の毛を拭きつつ鏡を見る。分かっていた事だけれども、そこにはリムの顔があった。ただ茶色や黄色が混ざっていたその髪は成り変わりの影響か、血のような紅色に変わっていた。しかし改めて自分がリムを受け継いだのだと理解させられる。


 ただ、あの夢の中での記憶はあったがそれ以外を思い出すことはできなかった。瀕死ゆえの成り変わりの失敗かもしれない。リムが使っていたあの力も全く使い方が分からなかった。

 

 私は一先ず現状を受け入れ今後のことを考える。リムさんは私の目的を叶える代わりに協力をして貰う、と言っていた。彼女の研究の手伝い、ということだろうか? 考えなければならないこと聞かねばならないことが沢山あったけれども、ただ身体はすでに限界だった。私はフラフラとしながらモノに支えられつつ脱衣所を後にする。


 リビングには先ほどまでと変わらずリムさんとジーがいた。ジーは給仕をしているようで、リムさんは何か飲み物を飲みつつ書物を読んでいた。

 

「あがったか」


 こちらへ視線だけを移し声をかけてくる。


「ええお陰様で汚れを取ることが出来ました」

「それならいい」


 ふ〜、と飲み物に息を吹きかけている。こうしていると本当にただの可愛らしい少女にしか見えなかった。


「ご主人。スーニャ眠そう」


 モノが気を利かせて私の状態を伝えてくれる。本当に優しい子だ。頭をナデナデすると満更でもない表情を浮かべていた。


「そうか? なら奥の部屋を使っていいぞ」


『ただまずは最低限手当はすませろ』と言われジーに手当を受ける。彼女は手慣れた手つきで処置をしてくれた。

 

 私はその後三人に感謝を伝え、指示された部屋へと向かう。そこにはベッドと簡易的なイス、そしてテーブルがあるだけだったけれど、今の私には身体を休める事が出来るだけで十分だ。ベッドに入り込み幾許もしないうちに私は意識を手放した。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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