表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第1部】夜明前

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/167

【1-5-2】

 朧げだが上空に光が見えた。俺は相変わらずに一歩ずつ階段を登っていく。


 目の前に子供がいる。よく見るとそれは小さな頃の俺だった。今度は何が始まるのかと眺めていると、驚いたことにそいつは俺に話しかけてきた。


「段々思い出してきた?」

「……え!? 話せるのか!?」

「そりゃ話せるよ。君も出来るだろ?」


 呆れたような顔をしながら話す。その冷めた態度に我ながら生意気な子供だと思う。ただ話を聞かなければ。


「なぁここはなんなんだ? みんなはどうなった? どうやったらここから出られるんだ? ……それにあのミームの記憶は?」


 早口に捲し立てる。相手は嫌そうな顔をしている。しかし初めて意思疎通ができた相手を質問攻めにしても致し方ないことだろう?


「……まだまだみたいだね。それじゃあここからは出られないよ。君が全部を思い出さないと」


ヤレヤレと肩を竦めている。やたら生意気に感じるが、周りからみたら俺ってこんな感じだったのだろうか……。


「ただもうあまり時間もないんだ。ここからは僕も一緒に行くから、早く全部見て。――全部、思い出して」


 そうして彼は階段を登り始める。


「おい! 質問に答えろよ!」


 俺も後を慌てて追いかけた。


 暫く歩き続ける。彼はダンマリを決め込む腹なのか、俺の質問には何も答えてくれなかった。ただ暫くしてようやく口を開く。


「ほら見て。君の記憶のはずだよ」


 前を見ると、リムが敵? と斬り合っている場面だった。確かこの敵は……。――そうだ。ガブリエットだ。彼女の攻撃によってリムの剣が弾き飛ばされる。後方には俺がいて、まさに飛び出さんとするところだった。


「……そうだ。ここで俺はリムを守ろうとしたんだ」

「そう。そしてそれは失敗に終わったんだよ」


 飛び出した俺を庇い、リムはガブリエットの剣に切り裂かれた。思わず『やめろ!!』と声をあげ二人に近づく。ただ触れようとしても身体をすり抜けるだけだった。


「無駄だよ。これは映像に過ぎないから。変えることは出来ない過去だから」

「……なんでこんなものを俺に見せたんだ?」


 俺は、俺は何も出来なかった。ただただリムに守って貰っていただけなんだ。彼女だけでない、トーリとカーナだって、俺がもっとうまくやっていれば生きていられたはずだった。今までのことだって、全部全部俺が……。


「言ったでしょ? 全部思い出してもらうって。君にはそうしなくちゃいけない義務がある。ほら次行くよ」


 未だ歩き出さない俺を、小さい俺が『早く!!』と叱咤し、渋々歩みをすすめた。


 次は、傷ついた俺とリムが横たわっている場面だった。手を合わせ俄かに彼女の身体が光り始める。俺は必死にそれを止めている。ただその光は俺の身体の中に吸い込まれ始め、映像の中の俺は気を失う。


「そうだ……。リムはその身体を俺に渡したんだ。そうすれば俺が生き残れるかもしれないって」

「そうだよ。リムはその身体を、命を使ったんだ。リムの記憶が見れたのは彼女の存在を受け継いだから。さっき見たのはその中の一部。ただ二人とも瀕死の状況だったから、ほんの一部しか引き継げなかったみたいだけど」


 ふぅと息を吐き、言葉を続ける。


「だから、君は生きなければならない。生きて君の物語を為さなければならない。それは僕の、――いや俺の責務だ」


 まっすぐに俺を見つめてくる。


「ねえ、君は何をしたいの? 何のために生まれてきた? 今悔しい? 悲しい? それとも何にも感じない?」

「俺は……」


 答えあぐねていると彼の小さな顔が歪む。そして彼は怒気を隠さず話し始めた。


「――僕は、悔しい。悔しくて悔しくて仕方ない!! 何でこうなったのか!! 憎くて仕方ない!! 復讐してぶっ殺してやりたいって思ってる!!」


『お前はどうなんだ!?』と俺に掴み掛かってくる。


「俺は、いや俺だってそうだ……。少なくとも俺たちは何も悪くなかったはずだ。それなのになんで俺たちは死ななければいけなかったんだ……? いったいなんで……」

「憎い? 悔しい?」

「……憎いし、悔しい」

「殺してしまいたいくらい?」

「……ああ。殺してやりたい」

「それが間違っていることだったとしても?」

「……そんなの関係ない。俺は、みんなの仇を取りたい。ただそれだけだ!!」


 小さな俺は満足したような笑みを浮かべつつ頷いている。


「――やっと正直になったね。それでいいんだ。君は、君の為したいことを為せばいい」


 彼は先の階段を指差しつつ喋り続ける。


「さぁここからは一人で行って。僕はついて行けないからさ。これから先は今みたいに自分の気持ちの通りに動くんだ。それが僕含めたみんなの願い、なんだからさ」


 その言葉通りに彼は消えていった。

 

 ――俺はまた歩みを続ける。遥か遠くに見えた光はだいぶ近づいていた。


 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

評価・ブックマーク・ご感想という形で、どうかあなたの想いをお残しください。続きを書く励みになります。

(……でないと、力尽きるかもしれません)


※評価は星マーク、ブクマはお気に入りからお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ