【1-0-1】
――身体が灼けるように熱い。いや、それでは生ぬるい。肌が焼け、肉の焦げる臭いが鼻を突く。吐き気が込み上げる。
気を失いそうになる中で、私はかすかに残った意識を必死に手繰り寄せていた。
誰かの声が聞こえる。『もう限界だ』『死ぬかもしれない』……好き勝手に言ってくれる。あれほど威勢のいいことを並べていたくせに。
確かに、状況は想定以上に厳しい。正直私自身も甘く見ていた。今となっては、あの楽観的な自分を殴り飛ばしてやりたいけれど。
それでも私はまだ生きている。普通の人間なら、とっくに命を落としていただろうこの状況で、私はまだ踏みとどまっている。
皆の助けがある。それは確かだ。だが、それだけではない。
この身体だ。――私は、昔から妙に丈夫だった。
怪我をしても滅多に深手にはならず、負ってもすぐに癒える。他人から見れば異常なほどに、私は壊れにくい。
私はそれを否定的に思ったことはなかった。むしろ、感謝していた。好きなものを食べ、元気に動き回り、未来を思い描ける。――それがどれほど幸福なことか、私は知っていたから。
だから私は、何かになりたいとか、何かを成し遂げたいとか、そんな大層なことは思わなかった。ただ、生きて、死んでいければそれでいい。本気で、そう思っていた。
けれど、それでは駄目だった。私は、……“俺”は、自分が為すべきことを見つけてしまった。
だから、ここで死ぬわけにはいかない。絶対に、生き延びる。力を手に入れる。私の望みを叶えるために。――復讐を遂げるために。
私は、やりたいことをやる。相手が誰であろうと、どれだけ崇高な理想を掲げていようと、神と呼ばれる存在であっても関係ない。たとえ奴らを倒したその果てに、世界の敵と呼ばれたとしても。
この物語は、異世界に転生して、チート能力を授かったわけでもなければ、裏切られた勇者でも、追放された英雄でもない。
ただもがき、苦しみ、みっともなく足掻いた、“私”の復讐の物語だ。
そして今、私は死の淵にいる。走馬灯のように、これまでの道のりが頭をよぎる。
……ああ、先に言っておくけれど、これから語る回想が『長い』だの『冗長』だの、出来たら文句は言わないでほしい。これは、私が命懸けで積み重ねてきた記録だ。それなりの長さにもなるさ。
だから可能であれば、ちゃんと見てほしい。
なぜ、私がそう決意したのか。
何を選び、何を失ったのか。
私の物語が始まる、その第一歩までを――。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――
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