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異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第4部】黄昏時

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【4-9-1】 レオ

 彼と再会したのは、別に牢屋でもないし、厳かな会談の場でもない。


 彼はただのんびりとお茶を飲んで外を眺めていた。私が入ってきた事には気づいているのだろうが、こちらを振り返る事は無かった。私はそんな彼に声をかける。


「――それで、何用かな。ギルバート」


 ギルバートとはあの時から顔を合わせてはいなかった。あの時氷漬けになった彼であるが、部下達が何とか解放したらしい。その時にはレナード殿が言った通りというべきか、頭は十分に冷えたようで、それ以上事を荒立てることはしなかったのだとか。


 私も城に戻り、副官が泣きそうな顔で処理していた業務を手伝っていたところ、彼に呼ばれたわけである。


 ギルバートはようやくこちらを見る。そしてスゥと息を吸った。


「――すみませんでした」


 その言葉と同時に頭を下げられる。


「……すみませんでした、とは?」

「軽率、でした。将にあるまじき行動だったと思っています」


 その言葉に嘘はないように思えた。


「……そうか。いや貴殿の気持ちも分かっている。全てが誤りとはいえないだろう」


 ギルバートの立場からすれば亜族に憎悪を抱く事は致し方ない面もある。それが行き過ぎた形で現れただけに過ぎない。


「いえ、私事と公事を履き違えるようでは国を治める事など出来ません。今回の事は反省すべきでした」


 まるで憑き物が取れたかのような顔をしていた。彼も本心では自分が間違っていると分かっていたのだろう。それが良くも悪くも吐き出す事が出来、今はこうして落ち着いているのだ。


「あの後皆が僕の様子を心配していた。叱咤してくれるものもいた。そんな彼らを見ていたら、自分だけが過去に囚われていたように思えて情けなくなりました。偉大だった父も、今の僕を見てはきっと失望した事でしょう」


 彼は外から見える木々を眺めていた。ちょうど風が吹き、緑の葉が揺れている。 


「僕は僕の我儘で多くの人を巻き込みました。それによって命を無くした人もいる。……彼らに報いるのは父を超える偉大な王になる事だと、そう信じています」


 彼は照れ臭そうに笑いながらにこちらを振り向く。


「でもレオ将軍に比べたらちっぽけな理想でしょうか?」


 私は彼のそんな発言に思わず苦笑してしまう。


「何を言う。立派だよ。それに私もそんな大層なものではない」


 私など別に優れた人間でも何でもない。ギルバートの方がよっぽど上手く国を治めることだろう。ただ私はそんな中で改めて一つだけ聞いておきたい事があった。


「……答えにくい質問とは分かっているが、いいか?」

「? ええ」

「……亜族の事は今はどうなんだ?」


 私の質問に顔を若干曇らせる。


「そうですね。……まだ本心から蟠りがないとは言い切れません」


 私は黙ったままその言葉に耳を傾ける。


「ただ先ほど言った通り、今は前を向くべきだと思っています。だってそうしないと、いつまでも先に進めないでしょう?」


 私はその言葉を聞いてあの時のカイリの言葉を思い出した。ーー憎むな。許せと。そうしなければ世界はどこまでも憎しみの連鎖が続く。彼女はそんな言葉を残していた。そしてそれは、今ギルバートが言った言葉と全く同じ意図のはずだ。


「そう、か」

「? どうかされましたか?」


 私の反応を見てギルバートが怪訝そうな表情をしている。


「……いやなに、今回の話に当たってな。貴殿からは特に反対されそうだと踏んでいたんだ。それが思ったものと違ったのでな。拍子抜けしたんだよ」


 わざとらしく私はおどけてみせる。ギルバートは今度は困ったような笑みを浮かべていた。


「まあ率直に言ってしまえば、貴方のお考えには驚きました。おっしゃる通り以前の僕だったら反対したでしょう」 

 確かにあの時の彼の様子からすれば、それこそルドリアの軍と正面から争う事になっていたかもしれない。 


「でも今は反対しませんよ。素晴らしい案だと思っています」

「そうか。安心したよ。貴殿を敵に回したくないからな」

「あはは。それなら何よりです。……ただ、まだ前の僕のような考えのものもいるかもしれません。くれぐれもお気をつけ下さい」 


 言葉尻の最後の頃には、彼の顔から笑みはなくなり、真剣なものになっていた。


「ありがとう。ご助言痛み入る」


 私もまたそれを真っ直ぐに答える。そしてその場を後にする。廊下を歩きながら私は今の状況を考えていた。確かに彼の言う通りまだ異を唱えるものは多いだろう。だが、ギルバートが変わられたように皆も変われるはずだ。

 

 ――いや、そうしていかなければならない。でなければ平和な世界などいつまでも来る事はないのだから。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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