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異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第4部】黄昏時

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【4-8-4】

「――レオ?」


 私の様子を訝しんだのだろう。スーニャが声をかけてくる。


「いやなになんでもない。……ああそうだった。これからの事、だったな」


 分かっている。スーニャの問いへの答えにはなっていない。ただそれは確かに言う通りだった。


「……これからは当分落ち着かないだろうな」


 考えなければならない事が山積みだ。正直何から進めればいいのかすら分からない。


「あーね。まあミームを倒しちゃったのは私だし、そこは申し訳ない気持ちもあるけども」


 スーニャが頬を掻きながらにそんな事を言っている。しかし私もけしかけたのだから、そこは責められまい。


「ただミーム様は死んだ。ククル様は生きている。これは非常に重要な要素だ。これから先の私達にとってはな――「――あ! なら私も死んだことにしてよ!」


 ククル様がさも名案だ! とでと言わんばかりの表情でこちらを見てくる。


「だってそれだったら私も本当に自由じゃない? 今までみたいに隠れる必要もないし!」

「いや、えっと。ククル様?」


 そんな申し出、私が判断出来るはずもない。ただ私の反応に彼女は明らかに不満そうな表情を浮かべていた。


「なに? ダメ? なんで? ……ドウシテ?」

「……ちょっとククル。あんまり我儘言わない」


 スーニャがククル様の頭をペシと叩く。それでもククル様は納得していないようで、むーと唸っていた。というかスーニャ、ククル様にそんなことしていいのか……?


「だってだって!! 私だって自由にお菓子食べたり、遊びたいー!!」

「アンタがいなくなると色々言い訳作りが大変なんだよー」


 確かにその通りだが、しかしミーム様の事もどう説明すればマグノリア、ラフェシア双方の理解が得られるのだろうか。想像するだけで頭が痛くなる。


「だからやっぱりマグノリアに戻りな? それでリーリアさんにお菓子でも貰えればいーじゃん」

「えー! 絶対ヤダ! 私も行く行く行く行くー!!!」


 ……スーニャ。ついでに厄介払いしたいという魂胆が明け透けに見えて説得が雑になっているぞ。


「ああほらアンタそんなに騒ぐと、まだ傷も癒えてないんだから、――ククル!?」


 ククル様がフラッと体勢を崩す。咄嗟にスーニャが抱き抱える。慌てて様子を見ると『キュ〜〜』と言いながらに目を回していた。


「……そいつはミームと争ったばかりだからな。力を限界まで使う事など基本的にない。だから自分の身体の状況もよく分かってはいないんだろう」


『私にとっても参考になるな』と言っているのはリム様だ。それをスーニャは呆れた表情で聞いていた。


「それでリムさんは本気でククルを連れて行くつもりで?」

「私は構わんと言ったが? それにだ。コイツが言った事は本当だ」

「言った事?」

「ああ。今のククルには力は殆ど残されていない。回復するまでには相当な時間が掛かるだろうな」


 確かに当分休まないといけないという話はあったが、そよ事を言っているのだろうか。


「そんなの、まあ数日とか長くても数十日とかで元通りじゃ?」

「……貴様の基準に合わせるんじゃない」


 ハァとこれ見よがしにリムさんがため息を吐いている。


「かなりの期間が必要だ。私達はスーニャのように外部からエネルギーを吸収出来るわけでもないからな。少しずつ自分の力で治していく事になる」

「えーと、じゃあククルは今は本当に力もないって事です?」

「うむ。そこらにいる人族や亜族の少女ともはや変わらん」


『えー!』と皆から驚きの声があがる。私もまた同様だ。


「それでそれがいつ元通りになるかも分からないと?」


 スーニャの言葉にリム様はゆっくりと頷く。今度はスーニャがため息を吐く。


「……力を失ったククルって、ホントにただの女の子じゃん。保護してあげるしかないですよ」

「ククク。そーかね」


 スーニャがリム様を『意地悪ー』なんてジト目で見ている。ただククル様が力を失っていることが知れたら、良からぬ事を考える輩が現れる可能性もある。


 それにスーニャ達が保護するのなら、それはこの世界で一番安全な場所であるともいえる。……反対に言えば世界で一番危険でもあるのだが。


「じゃそーいうことで。で、レオ毎回ごめんね遮っちゃって。えーと、なんだったっけ?」


 私はコホンとわざとらしく咳をし話を再開する。


 いや、もう取り繕うのも難しい。赤裸々に聞いてしまおう。


「スーニャ、私達はこれからどうすればいいと思う?」

「えっと?」


 流石に戸惑っているようだった。当たり前だろう。スーニャは国の政、いやそもそもが人族と亜族の争いにすらも関係ないのだ。こんな事を聞かれても困惑して然るべきだ。

 

 だがそれくらいに私も困っていた。そしてそれを引き起こした張本人なのだ。頭を捻らすくらいはさせてもいいだろう。


「今人族からはミーム様がいなくなり、亜族には、まあ私は聞いてしまったが、ククル様は死んでしまった体にするのだろう? 両種族の旗印を失う事になる。これから両種族は荒れるだろう。……なあどうしたらいいと思う?」

「……えーと、両種族、互いに力を合わせていこーって感じにはならない?」

「ならんな。むしろ悪化するだろう」 


 ばっさりと否定してやる。あちゃーと頭を抱えている。

 

「――じゃあさ、こうするのは?」

 

 スーニャのその案に目を丸くする。それは普通ならば、あり得ない考えだった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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