【4-8-3】
「みんな来てたんだね」
「ええ。見てましたよ。スーニャ、お疲れ様でした」
「うんありがとう。レナード」
「スーニャおつかれ」
「今治癒魔法を使いますからねー。楽にしてください」
「うん。モノもジーもありがとう」
スーニャはジーに言われその場で尻餅をつく。不死鳥の力を有しているといっても、体力や精神力が無限にあるわけではない。あのミーム様を相手にしていたのだ。ただ生きていただけで奇跡といえよう。
「毎度貴様には驚かされているが、まさか本当にミームを仕留めてみせるとはな」
「……いえいえ、ギリギリでした」
「それでも成功したんだ。誇るがいい。貴様はこの世界で初めて太古の神々を殺した存在なのだからな」
リム様がミーム様のご遺体に目を向けたので私も釣られて視線が動く。彼女は確かに死んでいるようでピクリとも動く事はなかった。
「しかしよく思いついたな。あの手法なら初めから倒せたのではないか?」
「いや、流石にそれは無理ですよ。ククルに相当に削って貰ったからこうなりましたけども、最初から正面切ってでは、魔素を奪う前に殺されちゃいますって」
「ふむ? そんなことあるまい?」
「いやいやいや。本当に瞬殺されるだけなんで。それくらいの差はあるんで」
手を横に振りながらにそんな事を言っている。ジーに『あんまり動かないで!』と嗜められ謝っている姿は、到底神を倒した人物とは思えなかった。
「レオ? 来てたんだね」
「……ああ。見届けにな」
「そっか。それで? 何か感想は?」
「そうだな。……素直に信じられないという思いだ」
私の回答に『そりゃそーだー』とスーニャは笑っていた。
「それで、お前はこれからどうするんだ? もう目的も果たしたのだろう?」
「あー、ね。でもさ、とりあえずはゆっくりしたいなぁ。今はそんなの考える余裕ないよ」
確かに言う通りだ。とにかく体を休めたいというのが本音だろう。今話すべき内容ではなかった。
「そうだな。すまなかっ――「――それに、これからの事ってレオの方が大変なんじゃん?」
スーニャの言葉に言葉が詰まる。確かに、考えるべきは私の方だ。だからこそ無意識に先ほどの問いが出たのかもしれなき。なにせ人族の神が死んだのだ。ラフェシアの混乱は避けられないだろう。
「……少し聞いていいか?」
「どうぞ?」
「ガブリエット殿はどうした?」
ほんの一瞬だけスーニャの表情が固まり、ただすぐに元に戻った。
「殺したよ。今ここに私がいる時点で分かるでしょ?」
その言葉は自然を取り繕っているように感じられた。腑に落ちない部分はあるが、しかし今私が気にすべきなのは、ラフェシアの主軸であった二人を失った事だ。
加えてまだ聞いておかねばならない事がある。
「すまないが、もう一つ。ククル様は生きておられるのだな?」
「? ああククルはまだ生きてるよ。……生きてるよね?」
「いや私は預かり知らないが――「――えー? 私の話?」
身体がビクッと跳ね上がる。声の方へと視線を向ける。そこにはククル様が起き上がってこちらを見ていた。
「んーーー、はぁ〜。いっぱい遊んだぁ。楽しかったけど、もうお終い?」
「ん、もうお終い。ククル助けてくれてありがとね」
ククル様は『ぶー、残念。もっと遊びたかったなぁ〜』と頬を膨らませていた。
「もう十分でしょーが。私ももう疲れたし」
「ふふっ。冗談だよー。私も当分休まないと回復しないんじゃないかな」
『実際今は遊ぶ力も残ってないんだー』と話すククル様は、噂に聞いていたような不安定な様子はないように思えた。
「あそなんだ? 流石のククルでも消耗するんだね。じゃあマグノリアでゆっくり休めんだらいーよ」
「うーんー、どうしよっかなぁ。ふーむー」
頭を捻りながらになにやら考えているご様子だ。
「……ね? スーニャについてってもいい?」
「え゙。……なんで?」
「だって館に帰るとみんな遊んでくれないし、外にも出してくれないんだものー!!」
『ね? お願い?』と上目遣いで頼む姿はただの可愛らしい少女だ。無論状況を理解していなければ、だが。
「いやー、ほら私一応リムさんの管理下で一緒に暮らしてるわけだからさ。とするとそれ決めるの私じゃないし?」
スーニャは助けを求め、リム様の方をチラチラと見つめる。
「……私の研究を邪魔しないならなんでもいい。ただなスーニャ、貴様がちゃんと管理しろ。でなければ許さん」
「え! じゃあいいって事?」
「え゙!? リムさん?」
『無論研究に協力してもらうという条件付きだがな』なんて笑っていた。ククル様は『やったー!』と喜びの声をあげ、スーニャは慌てている。
「ほら亜族側が納得しないし! だからダメダメ!」
「……なんで? スーニャは私といるの、イヤナノ?」
「あ、いやいやそんなこと無いですよ〜? ただね、みんなに説明が――」
目の前で慌ただしい光景が広がっている中、私が考えている事は全く別だった。
ラフェシアから神がいなくなるという事は何を意味するのか。そしてこれから先私は何をすべきなのか。それらで私の頭はいっぱいだった。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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