【4-8-2】
私達がスーニャ達を見つけた頃、戦いは佳境に入っていた。
「ククル様は気を失われているようですね。スーニャもミーム様もすでに全身に傷を負っています」
レナード殿が状況を説明してくれる。
「ああ。スーニャの狙いはククルと共にミームを倒すことだったのだろう。見込みが外れたわけだが、さてどうなるかな?」
「……ご主人。下手したらスーニャ死んじゃいますよ?」
ジーが心配そうな表情でリム様へ話しかける。
「わかっている。最悪の場合には介入するさ。……だが、どうなるか見ものだろう?」
そんな悠長な事を言っている余裕が果たしてあるのか。ミーム様がその気になってしまえば、たとえスーニャといえども命はないだろうに。
「そら。動き出しそうだぞ?」
スーニャがゆっくりとミーム様に近づいている。傷が深いのか随分と身体が不自由そうだ。
「フン。ミームはかなりククルに手こずったようだな」
私はミーム様が怪我を負っているところなど見た事もない。彼女の満身創痍と表現するに適切なその様子は、まるで信じ難い光景だった。
「……ご主人、スーニャ勝てる?」
「さてな。普通に考えたら無理だ。どうあがいてもな。だが思ったよりもミームは消耗している。もしスーニャに何か他の手立てがあれば、な」
「……じゃあせめて応援してあげましょう。スーニャー! ファイトですよー!」
「スーニャ、ふぁいとー」
「……二人とも聞こえてしまいますよ」
ジーとモノがスーニャへ応援を送る。それを呆れたようにレナード殿が嗜めた。
「……ただ、気持ちは分からないでもないですがね。僕もスーニャを応援してますからね」
彼は照れたような笑みを浮かべながらにスーニャを見つめている。
「呆れた。貴様らスーニャに絆されすぎだ」
「えー? ご主人だって随分気にしてませんかー?」
ジーの言葉にモノもレナード殿もウンウンも頷いている。
「……知らん。ほらスーニャが動くぞ」
「ご主人誤魔化した?」
「モノ、しーですよ」
口元に指を当てながらにモノを嗜めている。そして目の前では、スーニャがミーム様へ向け爆発魔法を放っていた。
「……まさか、あれも使えたのか」
あの魔法は生前にカイリが使っていたものだ。それを今スーニャが扱っているというのは、まったくもって因果という他なかった。その爆発によって砂塵が巻き起こる。スーニャとミーム様の姿が見えなくなる。
「ミーム様にあの魔法は効くのだろうか……」
「ハッキリ言って無意味だろうな。私達は殊更魔法への耐性が強い。それはスーニャも分かっているだろう。つまりこの狙いは――」
リム様が言葉を続ける中で、スーニャとミーム様の姿が影になって見えた。
「――ここだろうな」
その言葉と同時に片方の影がもう一方へ接近していく。形から剣を突き出しているのが分かった。
「奴の攻撃の中で唯一私に有効だったのは、魔素で自らを強化しての攻撃だ。今スーニャはそれをさらに極限まで研ぎ澄ましている。たった一撃に自分の全存在を掛けてな」
つまりこの一撃でスーニャがミーム様を倒せなければ、敗北が決まる。私達は言葉を止めその攻撃の行末を見守った。
「――ダメ、だったか」
リム様はふぅと息を吐く。
「ここまでだな。後はスーニャが殺される前に連れ帰るぞ」
スーニャの攻撃はミーム様に届きはした。傷を負わせる事も成功した。ただ倒すには至らなかった。
「さて、どうするかだな。今よりもっと素材を強化するとなると選択肢は限られる。ひとまず魔素をもっと高めることか? いやしかしどの種族を――「――リム様!! 見てください」
伏し目になりながら考え事をしていたリム様へ、レナード殿が声を掛ける。
「なんだ。今これからのことを――」
リム様は五月蝿そうにしながらも前へと目を向け、そして言葉を失う。ただそれは私達も同じだった。
――まさかまだ先があるとは。
スーニャの身体から炎が巻き上がる。ミーム様は何故か慌てた様子でスーニャを振り払おうとしている。何を焦っているのだろうか。
「……そうか。そういうことか!! ハハハッ!! なるほどな。それは確かに貴様にしかできんな!!」
「どういう事ですか?」
「スーニャは直接ミームの魔素を限界まで吸い取り、攻撃に使うつもりだ。太古の神々の魔素を使うんだ。先ほどの魔法などとは比べものにならん威力のはずだ。更にミームを弱らせる事にも繋がる。流石のアイツも今の状態では受け切れんだろうな」
状況を理解した私は目の前の光景から目を離すことが出来なくなる。万が一にもその可能性は無いと言った。そう思っていた。
だが、まさかお前は実現してしまうのか。世界の理を自分の意思で変えてしまうのか。
――そうなったら世界は、私は、どうなるのだろうか?
結果として、スーニャはミーム様を確かに倒した。皆んながスーニャに駆け寄り、思い思いの言葉を掛けている。
しかし私だけはボンヤリとその光景を眺めていた。
まだ理解が追いついていない。今まで自分の中にあった確かなもの、信じていたものが、ポッカリと消えてしまった。そんな感覚だった。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――
評価・ブックマーク・ご感想という形で、どうかあなたの想いをお残しください。続きを書く励みになります。
(……でないと、力尽きるかもしれません)
※評価は星マーク、ブクマはお気に入りからお願いします。




