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異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第4部】黄昏時

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【4-8-1】 彷徨

「……信じられん」


 確かに自分からけしかけた。そうなる未来を想像もした。ただ、起こり得ないことは分かっていた。


「本当に、貴様は為したのだな」


 何故ならそれがこの世界の常識。彼女はこの世界において完全無欠で、他者とは次元を異にしていて、本当の意味で神にあらせられる存在なのだから。


「スーニャ」


 ーーならば、それを打ち破った存在は、果たして何と呼ばれるのだろう。



 私達はあの後すぐに馬車に乗り込み、ミーム様の居城へと急いだ。途中止めるものもいなかった為ただただスムーズな道のりだった。


「……貴様が見に行ってなんになるのだ?」


 目の前にはリム様がいて私をつまらなそうに見ていた。


「むしろ自分の地位を貶めるだけだろう? 理解ができんな」

「……確かにそうかもしれません」


 彼女が言う事は正しい。今の私の行動は全くもって意味のあるものとは思えない。むしろ自国の事を思えば、やめておいた方が良いことだ。自分でも分かっている。


「でも、行かずにはいられなかったんです」

「貴様は自らアイツを向かわせたと聞いているが、それほどまでに期待していると?」

「……まさか。貴方達を倒す事なんて、出来やしないですよ」

「ふむ? ならば何故?」

「改めて考えると、何故なのか自分でも明白ではありません。ただ、貴方が今抱いている気持ちともしかしたら同じなのかもしれません」

「私が抱いている気持ち?」

「ええ。貴方も、まさかスーニャがミーム様を倒せるなどと本気で思っている訳ではないのでしょう?」


 リム様は私の言葉に驚いた表情を浮かべた。


「……何故そうだと?」

「貴方の表情や雰囲気からです。貴方はスーニャがどこまで食い下がるのかに期待しているように見えました」


 私の言葉にククッと喉を鳴らして笑みを浮かべる。


「もっと直情的な女かと思っていたがな。随分と機微にも聡いじゃないか」

「……ということは、やはり」

「ああ。今のスーニャではまだ勝てないだろう。なんせ有効となる攻撃がないのだから」


 私はスーニャと戦い敗れた。完全な力負けだ。そんな彼女を以てしてもやはり太古の神々には及ばないのか。彼女達を傷つけ、倒すには至らないのか。


「……では何故スーニャを行かせたんですか?」


 殺されてもおかしくは無い。むしろそうなる可能性の方が高いはずだろう。


「奴なりに考えがあったらしいからな」

「考え、ですか? それはどういう?」

「知らん。だが構わんさ。経験は代え難いシロモノだ。この戦いを越えたら奴はもっと強くなるぞ」


 リム様はまるで実験を楽しんでいるかのように笑みを浮かべている。


「そうか。貴方にとってはスーニャもまた観察対象の一つにしか過ぎないのですね。もし死んでしまってもそこまで、だと」

「言葉が悪いな。スーニャは他とは違う。奴は死なんさ。そう簡単にはな」


『だから好き勝手にさせている』などと言っているが、それが太古の神々が相手では状況も違うだろうに。


「話が逸れたな。貴様が何故アイツを追ってきたのか話していたのだったか」

「……私には行かせてしまった責任がありますからね。それに、あり得ないとは思いつつもアイツならどうにかしてしまう。そんな気がしたんですよ」


『貴方も同じ考えかと思っていました』と言うと、彼女は愉快そうに笑った。


「ハハッ。まあ期待したくなる気持ちは分からんでもないがな。確かにアイツはここまで随分と急激に成長してきた。他では考えられないスピードでだ。そもそもが今生きていること自体が奇跡と言ってしまっていい」


 スーニャがここに至るまでの経緯は聞いていた。カイリをはじめとした多種族の身体を移植して、その強さを身につけていることも。


「ええ。知っています。私の親友もまたその礎になったのですから」 


 今はもうスーニャに怒りは無い。ただ、自分の身を顧みず復讐のために身を焦がすその末路が、果たしてどこに至るのか。


「私もアイツに関わってしまったんです。最後を見届ける権利くらいあると思います」

「クク。そうかもしれんな。まあ好きにしたらいい」


『邪魔さえしなければ私としては構わんさ』と手をヒラヒラと振りながらに話が終わる。私は馬車から前方を眺める。居城まではもう少しだ。


 スーニャは果たしてどうなったか。あっさりとやられてしまったか、それとも上手く逃げおおせたのか。あるいは、本当に自分の目的を達成せしめたのか。


 私は自分の胸騒ぎを抑えることができなかった。そしてこの期に及んでも、居城へ早く着いてほしいという気持ちと、永久に着いてほしく無いという想いが自分の中でせめぎ合っていた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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