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異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第4部】黄昏時

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【4-7-5】

 崩壊は私達がいる足場だけではなく、塔全体にすら及んでいる。亀裂どころではない。足場がグラつき崩れていく。私達が崩落に飲み込まれるのは時間の問題だった。


「ね!! ミーム! なんで今までこうしてこなかったんだろう? こんな楽しかったのに!!」

「ククル。さっきも言ったでしょう? 考えもしなかったって。それにギィもいたことだし、そう仕向けられていたのかもしれないわね」


 二人は会話をしながらに戦いを続けていた。そしてまた攻撃がぶつかり合った瞬間、部屋の完全な崩壊が始まった。


 足元が崩れ、浮遊感が全身に伝わる。私達は瓦礫と共に地面へ向けて落下していく。


「……うっそー」


 流石にこんな展開は予想していない。ミームはともかく、ククルの様子が心配だったが、むしろ心配すべきは自分の事だろう。私は着地に備え、受け身の姿勢を取る。


 かなりの高さからの落下だった筈だが、あっという間に地面に至った。途轍もない衝撃が自分を襲う。この身体といえどもそれは吸収し切れるものではなく、私はしばらくの間身動きすらも取ることはできなかった。


「――落ちるって、こういう気分なのね? 初めてだけれど不思議な感覚ね」

「ね! なんかお腹の中がフワッとなったよ!!? もう一回もう一回!」


 二人は既に瓦礫の中から起き上がっており、ダメージなどまるで受けていない。むしろ落下を楽しんでさえいたようだった。


「でも、これでもっともっと広く使えるね?」


 先ほどまでは部屋の中にいた。それが今は外にいるのだから確かに遮るものは無くなった。といってもそんなもの最初から気にも留めていなかったように思えるが。


「ほら! こんなおっきくも出来るよ!?」


 ククルが両手を頭上へ掲げる。先ほどよりももっともっと大きな炎が噴き上がる。まるで空が彼女の炎で埋め尽くされてしまうのかというほどに。


「あら私もやってみようかしら?」


 ミームもまた同様に手を空に掲げ、今度は氷の層が空を覆っていく。空には炎と氷が入り混じる摩訶不思議な光景が広がっていた。


「……ねえククル。力比べはもうやめましょう?」

「んーどういうこと?」

「だってこれ以上こうやって争って、この辺りの地形が壊れるのも困るし。……そもそも意味などないでしょう? 私達の力は変わらないのだから」

「じゃあもうおしまい?」


 その言葉に慌ててしまう。ここで終わりになってしまえば私の目的は果たせなくなる。しかしミームもそのつもりはないようだった。


「いえ? だから、お互い全力でぶつかり合いましょう?」


 空に広がった氷が彼女の手に集まり始める。それはやがて一つの剣を形作っていく。


「私はこの剣に私の全てを込める。貴方も同じことをなさい」


 パキパキと音を立てながらに形成された剣は、あまりにも纏う魔素が濃すぎるためか、周囲の空間が確かに歪んで見えた。


「ふふっ。初めてかもしれない。自分の力を余す事なく全て使うというのは」


 その剣は彼女の手に収まる。その様子をククルは目をキラキラしながらにみていた。


「……私も作れるそれ?」

「ええ。気持ちいいわよ? 全力っていうのも」

「キャハッ!」


 ククルもまた空へと手を掲げる。炎が空を覆い尽くす。


「もっとかな? もっと出せるよね!!」


 さっきよりももっと熱くもっと濃く。その熱量は私の炎など比べるに値しない。


「アハハッ!! こんなの初めて!! 自分の力で自分の手が焦げる。骨が軋む。力の抑えが効かない!!!」


 その炎もまたククルの手元に集まっていく。そして構築された斧をククルが軽く振るう。


 ただそれだけで辺りの物質は一様に溶解する。辺りの瓦礫も、木も草も土も全てがカスすら残ることはない。


「ああこれをぶつけたらどうなるのかな!? 例え貴方でも死んじゃうのかな。ミーム?」

「さぁ? それは貴方かもしれないわよ? ククル?」

 

 ――ここだ。私の力は彼女達には遠く及ばない。ただ今私が介入出来るとしたらこの瞬間しかない。

 

 常に彼女達は身体を魔素で強化している。その為に他の誰の攻撃も意味を為さない。ならばもし力を弱らせたなら? その断面なら私の攻撃も意味を為すのではないか?


 今まで私は二人の戦いをただ眺めるだけだった。その全ては、今この時の為だ。


 私もまた力を身体に込める。彼女達のように魔素を充填させる。狙いは彼女達がぶつかり合った後。その刹那の瞬間を狙――。


「――貴方には少し退場してて貰おうかしらね」

 

 パシュンと気の抜けた音が聞こえた。


「……あ、え」


 耳元を何かが掠めた気がした。痛みはなかった。ただ視界が赤くなった。目の当たりを手で触る。普段慣れたはずの手触りがない。ただ粘着質な何かがあった。


「あれ、アハは。コレっ……て」


 視界が暗転する。何も考えることが出来ない。姿勢を保てない。――また同じ音と、ミームの声が聞こえた。


「貴方如きが踏み込んでいい領域じゃあない」


 その場に崩れ落ちる。いやそれも想像だ。身体に衝撃があったから倒れたと思っただけだ。


「せっかく良い気分なのだから、邪魔はさせない」


 回復がやけに遅い。頭が回らない。ただぼんやりと目の前に広がる紅い液体を眺める事しかできない。


「さあ、ククル始めましょう?」


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