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転生した俺は、”私”へもう一度生まれ変わる。為すべき事を為すが為に。――異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第1部】夜明前

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【1-3-1】 引金

 降誕祭を終え、二を表すミームの月になった。降誕祭以降俺たちは大人の仲間入りを果たし、週に数回は簡単な狩りには参加をしている。今まではトーリ、カーナとも一緒だったのが別々での行動も多くなっていた。なお、二人ともメキメキと腕を伸ばしているらしい。俺はというと二人ほどの派手さはないものの、周りに迷惑を掛けない程度には役立っているのではなかろうか、という具合だ。


 ……いーさいーさ。のんびりのんびりマイペースに行くのが俺の主義だし、地道に行くのが一番さー、なんて自分で自分を慰める。悔しくなんてないからな?


 ちなみに今日は三人とも久々のお休みだったので、いつ以来かに集まっていた。


「トーリは凄いわね〜。また獲物捕まえてきたんでしょ? あの時の様子なんてウソみたいね〜」

「うるせーやい。それにそんなことねーよ。カーナだってまた魔法上達したらしいじゃん? もう大人にも負けねーって聞いたぞー!」


 三人で集まっても会話はやはり狩りの話になった。何を捕らえたのかとか、あの人のあの技術は凄いとか。しかし何だか二人とも大人びたように感じる。三日会わざればというには時間は経過しているけれども、やはり子供の成長は早いという事だろうか。そして話題は自然と降誕祭の話に移って行った。


「しかしあの時は本当に焦ったよなー」

「ホントよねー。私一歩も動けなかったもの。もしスーニャがいなかったらと思うとゾッとするわ」

「いやでもほら、あれは俺の責任だしさ」


『そんなことない!』と二人から否定される。


「そもそもオレが焦ってたのが悪かったんだよなー」

「あの時のアンタ普段と全然違ったものね〜。でも周囲の警戒って全員の役割でもあるし私も悪かったわよ」


『もう二度とごめんな経験だけどね〜』と笑い合う姿を見て大事がなくてよかったと改めて思う。そこからはまた別の取り留めもない話題へと切り替わっていった。

 

 三人で話したい話題も話し尽くし、そろそろ解散しようとした時トーリが真剣な面持ちで話題を振ってきた。


「……なぁもう一回だけ三人で狩りに行かないか?」

「え、何言ってんだよ?そんなん許されないだろ?」


 カーナにも同意を求めたのだが、彼女は口を閉ざしたままで肯定も否定もしなかった。


「またリム達は遠征に出てるし、前みたいに助けにも来ないだろうしさ。三人での狩りもこれからどこかであるだろうし、焦る必要はないだろ?」

「……いや、行きましょう。私も実は行きたいと思ってたの」


 口を開いたカーナは、予想とは異なりトーリの提案に賛成をしてきた。


「実はあの日から、あの日のことを忘れた事はないの。あの時の恐怖もね。今ならもっと上手に出来るだろうし、そうすることは私にとって前に進むことに繋がる気がする」


 真剣な言葉だった。トーリもゆっくりと頷き、俺をまっすぐと見つめ回答を待っていた。


「……あーもう! じゃあわかった。行こう」


『確実に怒られるから覚悟しとけよ!?』と釘を刺しておく。ただそんなことは聞く耳も持たずで『そうこなくっちゃ』なんて二人は歓声をあげていた。そしてそのままに、いつ実行するのかの相談を始める。決行は1週間後の日没後。ちょうど今里から出立していたリムも同行している遠征隊の帰還予定日だった。

 

 日々与えられた仕事をこなす内にあっという間に時間は過ぎる。気が付けば俺たちは約束の日を迎えていた。


 あらかじめ決めておいた時間、場所に集まる。事前に相談していたが灯りを持つのはカーナの役割りだ。俺とトーリはいざという時に備え手を空けておくことにした。俺たちは静かに森の中に入っていった。


「……とりあえずはバレずにすんだかな?」

「とりあえずは、だけども」


 小声で話す。あえて夜の森にしたのは両親達にバレない為だけではない。獣達は俺たちが昼間行動することを知っている。そのために夜の方が活発である場合が多い。降誕祭の時は開催前の数週間は狩り自体が禁止されていたために、昼間でも動物が油断し行動していたのだ。


 夜の森をゆっくりと歩み獣の痕跡を探す。降誕祭の時とはうって変わって二人から気持ちの昂りや力みのようなものは感じなかった。純粋に目の前に集中をしている。本当に成長しているんだな、なんて親心のようなものを感じているとむしろ俺が集中しろと二人から注意をされた。


 痕跡はすぐに見つかった。暗闇の中ではあるものの足跡もありすぐ近くにボウがいることがわかった。大きさからして大人であろうか?


「よし痕跡は一通りみたな?」

「ええ。大型のボウね。足跡は一種類しかないから一匹だけかしら? フンも新しいからまだ近くにいるかも」

「ああ。ただ油断は出来ないから、周囲を警戒しつつ足跡を追うぞ」


 二人ともすっかり熟練のハンターである。……これ俺いらないんじゃ?

 

 程なくしてボウは見つかった。川沿いで水を飲んでいるようでこちら側にはまだ気付いていないようだ。


「いたな。よし今度こそやるぞ」

「ええ、今度こそ失敗しないでよ〜?」

「あははっ。分かってるよ」


 トーリは弓を射る準備を始める。


「じゃあ行くわよー。――ちなみに私、詠唱破棄も覚えたから」


『え?』なんてトーリと二人で声をあげる。


「まあ見てなさい。――顕現せよ、ファイアーボルト!」


 詠唱なしに魔法陣が展開し、発現した炎がボウへと向かっていく。詠唱破棄とは、通常では詠唱を必要とする魔法に対して、言葉の通り詠唱を要せず使用することをいう。詠唱がない分短時間での使用が可能だが、その分深い集中力と使用する魔素量は多いと聞く。いずれにせよカーナの年齢で扱えるものなど少ないだろう。炎はボウへ直撃し、ボウは襲われている事に気付いたのか大きな声をあげ始めた。


「――まったく、先に言っとけよなあ!」


 慌てて弓を放つもトーリの弓矢もまた正確だった。真っ直ぐとボウの頭へと吸い寄せられていき、頭蓋へと命中、そのままに貫通し奥の樹へと突き刺さった。ボウは即死だったのか声もあげずに倒れ込む。それでも俺たちは暫くの間警戒を解かなかった。


 最初に口を開いのはトーリだった。


「死んだかな?」


 ふーっとゆっくりと息を吐きつつ、カーナも応える。


「ええ。やったみたい」

「周りにも獣の気配はなさそうだし、今回は大丈夫だな」


 俺もようやく肩の力を抜く。みな前回と同じような事態を招かないよう注意を払っていた。


「普段やってることだけどさ、改めてこの三人で狩りが出来てよかったよ」

「私も。トーリが提案してくれて本当によかった」

「いや、オレこそだ。なんだかようやく、降誕祭を終える事ができたような気がするよ」


『もう随分前のことなんだけどさ』なんて笑っている姿を見るとやはり来て良かったと思う。これからこの二人はもっと成長して村を引っ張っていくんだろうな、なんて感慨に耽ってしまう。


「あそーいえばカーナ詠唱破棄先に言えよ!? 慌てたじゃねーか!」

「ふっふーん、凄いでしょ? いっぱい練習して使えるようになったんだからー。これなら急な時でも対応できるしねー」

「危ないから先に言えって言ってんだよ!」

「えーでも驚かせたかったしー」


 なんて軽口を叩き合う姿を見ていると笑みが溢れる。もっと長くこうしていたいが、森の中でもあるしそろそろ撤収しよう。


「はいはい。その辺りにして二人とも帰るぞー。それでお説教され行くぞー」


 うえーなんて声があがるが致し方ない。手早く浅布の上にボウを乗せる。大人やもっと人数がいれば抱えて運べたかもしれないが、三人ではこうして引きずっていくしかなかった。


「獲物をとったのに怒られるのかぁ……」

「いや完全に私達が悪いから」


『それでもさー』なんて言いつつトーリも本気で言っているわけではない。カーナもそれを理解していたため、言葉尻は刺々しくも視線は柔らかかった。


「まあでも、またいつ三人で来ましょう?」


 カーナもカーナで楽しかったのだろう。彼女の提案に俺はトーリと顔を見合わせ、そして当然合意した。


「もちろん!絶対にね」


『なんなら明日でもいーぞー』というトーリにそれは早すぎるだろうと皆で笑い合った。またいつか絶対に実現しよう。その時には二人に負けないような技術も身につけておかなければいけないな。リムにも相談して手ほどきして貰おうか。これからを楽しみに、三人で踵を返し里へと帰り始める。


 ――そして、耳を劈くような爆撃音がこだました。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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