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7*

注意。血の描写があります。

 朝が訪れた。ネヴィタに新しい陽光が降り注ぐ。朝露が反射して、家々の屋根が、輝くようだった。

 執務室の窓から、初老の男がその光景を眺めていた。長い僧服はだいぶくたびれているが、司祭だけがまとうことを許された正統なものだ。この教会を取り仕切る彼は名前をフォルカー・ブラントといった。

 まだ日も昇らぬ頃に起きだして、朝課を済ませると、ここから朝日を迎える。彼がこの部屋を構えてからずっと続く習慣だった。

 空が白々と色抜けていく、ただそれだけの光景に、ほっと息を吐く。

今日も無事に一日を始められる。

 ノックの音に返事をして、入ってきたものを振り返った。フォルカーは目を瞬いた。

 書類を抱えたオルネオが、机の前にやってくるところだった。

「何か?」

 フォルカーより半生も生きていない青年だが、教会内において重要なのはその役職だ。支部の一切を任される司祭といえども、教皇直属のアルフラードには腰を低くせねばならない。

「今、お時間よろしいでしょうか」

「えぇ……」

「係りの者に頼みまして、帳簿の方、改めさせてもらいました」

 オルネオが書類を一束、机に置く。エルジバ教ネヴィタ支部の判が押されたそれは、確かにここのものだ。

「月に一度、アルデバ教会へお布施を施されていますね」

「えぇ、善意で差し上げています。アルデバ教会を取り仕切っているテオドル・バルテルは事情があって、屋敷から出ることがままなりません。それの援助です。思想は違いますが、それはそれ。助け合いが必要になることがあるのです。罰則の対象でしょうか?」

「いいえ。本部に知れれば面倒でしょうが、この程度は見て見ぬ振りが出来ます。公にしたくないような話は、他の支部でもよく聞きますから。しかしエリク・ベルネットを一千ガロで釈放するなどという話は初めて聞きました。ご存知でしたか、ブラント司祭」

 フォルカーは鷹揚に革椅子へ腰掛けた。連れ添った年月の分、良い具合に渋い艶を放っている。

「エリク・ベルネット」

 考えるように、ゆっくりとその名前を口にした。

「聞き覚えがありませんか?」

「もちろん、覚えていますよ。たしか本部のほうに捕らえられているはずですね」

「テオドル・バルテルとは懇意になさっているそうですね」

 オルネオが話の方向を変える。

「懇意、というと御幣がありますな。何度かお会いしたことは、もちろんあります」

「滞在中、少し勉強させていただきました」

 書類に古い資料を重ねる。

「十年近く前、正確には八年前、ネヴィタに新しく教会を建設しようとした際、多くの住民が抵抗したそうですね。ここには未だに古い信仰が残っていて、エルジバ教を良く思わない人たちが大勢いた。貴族らと異教徒らが組みになって市街戦を行ったとか。詳しい資料はエルジバ教がほとんど捨ててしまいましたが、街の方々は今でも覚えていました。相当、酷かったようですね。就任された当初、さぞご苦労されたことと思います。首謀者として捕まえたベルネット家の当主を公開処刑しようとしたものの、暴動を恐れて行えなかったとか。エリク・ベルネットは本部に輸送したとあります。しかしそれだけで街は治まりません。そんなときに異教徒側のリーダー格だったバルテルが甘いことを囁いてきたのですね。献金をよこす代わりに、エルジバ教会に協力すると」

 フォルカーは声を上げて笑った。

「いきなり何を言い出すんです」

「首謀者とはいえ、エリク・ベルネットが逮捕。異教徒であるテオドル・バルテルが敷地内軟禁では、どうも処遇に差があるように感じます」

 構わずにオルネオは続けた。最後の資料を乗せる。

「当時の犯罪者記録です。結構な数があります。バルテルの言葉には乗らざるを得なかったのでしょうか。エルジバ教会が街に建って三月ほど経つと少しずつ治安も安定してきています。効果があったことが数字の上でも証明されてしまいました。司祭にも思うことはあったでしょうが、とりあえずこれで、両者の関係は定まりました。それから四年後、テオドルは一家離散して路頭に迷っていたベルネットの娘も引き取り、より人々の信頼を得るようになります。納得しなかったのは娘のダリアです。自分自身や家族にされた仕打ちを、彼女は忘れられなかった。バルテルは“蠍”という組織を作ってエルジバ教会に反抗するふりをしてごまかし、父親の釈放に金がいるんだと嘘をついてダリアに集金の手伝いまでさせました。表立って動けない分を、ダリアでカバーしようと考えたのです。“蠍”の活動は人々の鬱憤を晴らす為のパフォーマンスもあったのでしょうか? いささかやりすぎな感も否めませんが、目を瞑らざるをえなかったんでしょうかね。そうしてなだめすかしてはいたものの、ついにダリアは業を煮やしてしまいました。このままでは、いつまで経っても埒があきません。一気に蹴りをつける方法はないかと考えをめぐらせていました。ダリアに聖女の情報を流したのは、ブラントさまですね?」

 司祭はじっとオルネオを注視している。

「ブラントさまにとって“蠍”は邪魔な存在でした。しかし、武力でもって制圧することもはばかられました。これぞ大罪といえるものがあればいい、そうお考えになられたのでしょう。ブラントさまから話を聞いたダリアは、聖女を人質に父親の解放をアシトラの本部へつきつけるつもりでした。しかし肝心の聖女がさらわれて、計画は頓挫したわけですが……さて、いろいろありましたが、昨夜バルテルが亡くなりました」

 フォルカーは目を見開いた。

「亡くなった?」

「バルテルにとっても、ダリアはいらない存在になってしまったんです。聖女誘拐など、かってに目立つ振る舞いをされました。どうも、ベルネット家の威光は今でも衰えていないようですね。ダリアがいなくなり、ベルネット家の威光が消えれば、よりどころを失った人がアルデバ教会にすがりついてくる可能性もあります。そしてバルテルは今回の一件に便乗することを思いつきました。しかし、実際ダリアをどう始末するか、具体的な方法はまだ考えていませんでした。そこへ、モルト女史が押し入ってきたんです。バルテルはそれを好機と捉えました。彼は、“蠍”の主犯はダリアで、過去の一切の責任を彼女一人に押し付けることにしました。ダリアにとっては、これ以上ない裏切りです。そうして彼は、ダリアの手により亡くなりました。彼女は最後まで信じていましたよ。己の行動は父に貢献しているとね」

 皺の重なった瞼の下で、瞳孔が揺れた。瞬き一つで治まってしまうほどの、ささいなものだったが。

「それで?」

 フォルカーはゆったりと構えた。

「わたしは何かしらの罪に問われるのかな?」

「現状ではなんとも」

「そのダリアとか言う娘に聖女の話をしたなどというのは、君の妄想だ。わたしは、そんなことはしない」

「証拠はありません」

「それと、異教徒への援助だが、確かに教会の意志に反する行為だ。しかし先ほど君が言ったように、多くの場合、黙認される。理想で現場は動かんよ」

「わかります。実際、この街を納められるのは、もうブラント司祭しかいらっしゃらない」

「わたしは何もしていない」

「はい、何も」

 オルネオは繰り返した。

「何もなさいませんでした」

 フォルカーは口を真一文字に引き結んだ。

「そして一人の人間が、無用な罪に手を染めました。些細なことで防げたはずです。ブラントさまは保身のために彼女を見捨てたんだ!」

「わたしにどうしろというのだ!」

 机に両手をついて、オルネオはフォルカーの顔を覗きこむ。

「協力していただきたいのです。ジャック・シリウスをこれ以上、野放しにはしたくない。ここにいる間に捕まえたいんです」


 日の出から、だいぶ時間が経っていた。カルミナの付き人二人は、この一晩を辛抱強く耐えて待った。

 その家から壮年の男が一人だけ出てきたので、見張っていた彼らは顔を見合わせた。一時も目を逸らさなかったのに、どこからともなく現れたのだ。さらに彼が出てきたあと、そこにはなかったはずの木板があった。なにより、夕べここへ入っていったはずの女が、まだ出てこない。

 二人のうち、一人は男を追いかけ、もう一人は家に近づいた。木板の取っ手を握り、手首をひねって引くと、ぽっかりと室内への口が開く。

 目の前の階段を使い、二階へ上がる。彼は腕で鼻を覆い、顔をしかめた。その耳に、微かな音が聞こえてくる。

 ゆっくりと慎重な足取りで上がり、二階に顔をのぞかせた。

 部屋の中央で、少女が椅子に座っていた。階段の方を向いて微動だにしない。椅子の高さと足の長さが合わず、靴底は床から浮いていた。目線はどこか遠くに向かっていて、瞬きもしないまま、口だけが動いている。それは懐かしさを髣髴させる旋律で、幼い少女が好んで口ずさむような童謡だった。

 瀟洒な服を着た少女の膝の上には、女の生首が乗っていた。こげ茶色のうねる髪に包まれた顔は眠るように目を閉じて、いっそ穏やかだったが、肌のところどころを血で汚している。

 間仕切りのないその部屋には、他に誰もいないようだった。

 彼は戸惑いつつ二階に足を踏み入れた。少女の瞳に人影が映った途端に、歌は尻すぼみに消えていく。

 次の瞬間、少女の腹が内側から裂けた。血液と内臓が零れ落ちる。薄暗がりに緑色の光沢が、ちらちらと瞬く。体制を崩した少女が椅子から床に落ちる。血の滝に打たれた生首が転がる。

 同時刻、男を追いかけていた方は、対象が建造物へ入っていくのを確認していた。入り口の上には銀行の文字がくっきりと彫られていた。


 出先から戻ってきたカルミナは、付き人から聞いた話をそのままオルネオに伝えた。彼は目を伏せた。

「そう……ですか」

 どうにかシリウスを表へ引きずり出したかった。いくら彼ほどの人間でも、一つのエアリアル体にいくつも複雑な命令は出来ないらしい。あの子どもは案内と運搬役を兼ねていた。主人の元へ帰るように予め組まれていた。果たす前に潰えた役目を、やってもらうことにした。

 これまでシリウスが実際に手を掛けてきたのは子どもだけだった。認識が甘かった。

方法を考えたのはカルミナだが、ラウラが行くのを止めたのはオルネオだ。計画をぶち壊した張本人の顔を見てやりたい、そう言ったダリアも止めなかった。行くの行かないの、ラウラと口論していたが、最終的に、あの勢いに任せてしまった。事の後で、彼女は興奮していたのだろう。

「言い訳をしておくと、夕べまでは入ろうとしても入れなかったのよ。許された人しか中に入れないように、細工されてたみたい」

 少女自体が鍵になっていたらしい。

「それで、聖女候補は?」

「中にいたわ。こっちに運んで、取り調べに使ってた倉庫に入れてある」

「父親と会わせますか? 連れてきたんですよね?」

 カルミナが顔の前で手を振った。

「ダメダメ。錯乱してるもの」

 娘の誘拐に加え、教会からの呼び出しで、気持ちが休まらないのだろう。そのうえ、教会に娘の真相がバレていると知ったら、追いつめるだけだ。

「今の状態で会わせたら面倒になるわ」

「仕方ありませんね。……あの、それとは別に、一つ頼みたいことがあるんですが……」

 そこへシリウスを追っていた方が戻ってきた。迎えに行った者ともども、苦い顔をしている。

「こちらへ来る途中、赤目の女に捕まりまして……」

「話したのか」

 部屋に居るようきつく言っておいたのだが、やはり言うことを聞くような性格ではなかったか。

「銀行? なんでそんなとこ行ったのかしら?」

「アリス・フォレスを置いて、ラウラの件にも釣られず……銀行は逃亡資金でしょうか」

「全部、諦めて、逃げるって言うの?」

「どうでしょうね。とりあえず、俺はラウラのところへ行きます」

 付き人二人をアリスの見張りに向かわせ、カルミナはオルネオに着いてきた。表の方へ近づくにつれて周りの人の声が大きくなる。

「なんだか騒がしいわね?」

 慌てている一人を捕まえてカルミナが問い質した。

「外に化け物が……!」

 二人は顔を見合わせた。走って外に出ると、人々が一様に上を見ている。

 降り仰いだ教会の屋根に、大きな黒い猿がいた。

「なに、あれ?」

「廃家にいたとかいう、例の化け物じゃないですか」

「なんでここにいるの!」

「探しに来たのかもしれません。ラウラを」

 屋根伝いに移動していく黒い怪物を、オルネオが鋭い視線で射止めた。


 銀行から手続きを終えたシリウスが出てきた。懐中時計で時間を確認する彼に、路地から声がかかる。

「やっぱな。てめぇは高みの見物決め込むよな」

 両手をポケットにつっこんで、薄暗がりにラウラが立っていた。

 シリウスは、わずかに目を見張ったが、それも一瞬のことで破顔する。

「ようやくお会いできましたね」

 旧友との再会を喜ぶような口調だった。

「機会だけなら、いくらでもあったんだろうがな」

 相対したラウラの全体からは、疲れたような、気力が吸い取られたような気だるさが漂っていた。

「お一人ですか?」

「おとなしくしてろって言われてな」

「置いていかれたのですね」

「うん、そうなんだ」

 幼子のように素直に頷くと、そのまま俯いてしまう。

「わかんねぇな。わかんねぇよ。わかっちゃいけねぇのかな、てめぇみてぇな奴のこたぁ」

 それは独白に近かった。

「ダリアが戻ってこねぇんだ」

「ご友人ですか? わたしはそのような名前の方を知りませんが」

「さっき、てめぇの住処を偵察に行った連中から、首が出てきたって報告があってよ」

「体も部屋の隅に置いてありますよ」

 空気が一段と重くなった。

「なんで殺った。そんなことする必要なかったはずだ」

「いったいどういう事情があったのか、詳細はわかりませんが、わたしは彼女の来訪を、あなたからの合図だと受け取りました。シェリルの異変は見てすぐに気づきました。あなたが何か細工をしたのだと思いました。なら、こちらからも返事をしなければならないと思いました」

 シリウスは両の掌を組んで微笑んだ。

「お会いしたかった。できれば、もっとスマートな形で」

 対して、ラウラの目は荒んでいる。

「ガキ以外には手ださねぇなんて、甘い考えだったな。よぅ、教えてくれ。こちとら、てめぇの嗜好に何一つ符号しねぇわけだが、どこがそんなに気に入ったんだ?」

「あなたはわたしの嗜好を差し置いても欲しい。貴重な存在なのです」

 ラウラが路地から踊り出た。握った右手の拳から、銀色の鎖が垂れている。

 十分に重みがついた拳がまっすぐにシリウスの顔面に吸い寄せられた。叩き込む寸前、なにかに阻まれた。見えない壁がシリウスを守る。しかしそれも次の瞬間には崩れた。物理的速度を取り戻した拳はしかし、その一瞬で後退したシリウスを捕らえることはできなかった。

 内心、シリウスはエアリアルの処理速度を賞賛した。分散しているエアリアルを固め、崩すことは基本的な技術だが、息をするように行うのはよほどのことだ。専門の血族でも不器用な人間は少なくない。施設のことは、シリウスも噂でしか聞いていないが、どうやらエルジバは、本気で新しい生物兵器を量産するつもりだったらしい。

 エアリアルをナイフ型に整形し、二つほど投げてみる。難なく叩き落された。シリウスは少しだけ気分が高揚してくるのを自覚した。

 シリウスはラウラに背を向けて走った。人ごみに入る。人の密集する街中では、どうしてもこれだけで、エアリアルの量が足りなくなる。

 エアリアルは無限に生成されるわけではない。密閉した空間でエアリアルを消費すればもうそこではエアリアルが生まれない。自然界のどこかで作られてはいるはずなのだが、それが何なのかはっきりしていないのが現状だ。人の多いところでは少なく、自然に近ければ近いほど増える、ということだけは、事実らしい。

 今回の旅は驚くことばかりだ。リオール・フォレスから連絡が来たときに、まず驚いた。その時、シリウスは別の街にいた。フォレス家には診察という形でアリスの様子を定期的に訪れる約束をしていたが、まだその時期ではなかった。取るものもとりあえず駆けつけて事情を聞いた。他の人間に頼るより自らが動いた方が早いように思われた。そうして、アリスを取り戻し、父親へ返せばそれで終わるはずだった。彼女に会うまではそうだった。

 その白髪と赤い目を見て、是が非でも欲しいと思った。

 教会の方へ連れて行かれた後、外に出てきた彼女の側には常に人がいて、接触には注意を要した。あの男は教会の人間らしい。教会とはなるべく関わりたくなかった。

 一人になる機会を窺っていたのはシリウスだけではなかった。アリスを攫った“蠍”の一味だった。

 近づけないのなら、仕方ない。あの女なら、上手く取り次いでくれるだろう。わざわざ攫ってきたのだから、アリスのためなら働いてくれるかもしれない。

 アリスは素晴らしい少女だ。しかし少女ならいくらでもいる。あの赤い目を持つ人間と再び出会える機会が、この先どれほどあるだろう。彼女と引き換えられるなら、アリスを差し出しても構わない。

 前の町で連れてきたシェリルを使うことにした。話し合いはすんなり通った。

 だが戻ってきたシェリルが連れて来たのは命令と違う人間だった。命令以外の自発的な行動は不可能なはずだ。エアリアルには、シリウスの記憶にない命令言語が追加されていることが予想された。

 妙だなと思った。エアリアルを扱える人間などそうはいないのだから、シェリルを弄ったのは赤目の女だろうとシリウスは考えた。計画は失敗したのだ。彼女は、こちらのやり方に対して文句があるに違いない、けれどダリアというらしいあの女の台詞は助けを求めるものだった。

明らかにシェリルを道案内として仕組んでいるところから、赤目の女が意志を持ってそうしたのは間違いない。だが碌に話しもしたことがないような人間に、助けなど求めるだろうか。

何かある、と思った。少なくとも、赤目の彼女自身がここへやってくることはないようだ。

 シリウスの中の勘が、危険だといっていた。よくない事態が動いている。気にかかるのは彼女の身柄が教会にあるということだ。元々、彼女は教会に関わる施設の人間だ。あの連中はロクなことをしない。

 ここは身を引いたほうがいいと判断した。だが、ただ逃げるようでは面白くない。シリウスは、あまりからかわれるのが好きな方ではない。

 自分以外の誰かに弄られた少女を手元に置いておきたくはなかった。頼まれた事を成し遂げなかった女も必要なかった。来いというなら、行ってやろうではないか。下手な知恵を絞って、小ざかしい真似をするとどういうことになるのか、思い知るといい。

この街にあるなけなしのエアリアルで作った戦士はあっさり壊されてしまったらしい。街中では量が不足して、大きなエアリアル体はいくつも作れない。身体能力はあちらの方が格段に上だ。一般人を好んで巻き込みはしないだろうが、限界がある。頼れる人はいない、かけこむところもない。赤目の彼女はすぐにも追いついてくるだろう。


 教会のお目こぼしをもらっているのだ、ということは自覚している。ばれなければいいと思い、手にした能力は好きなように使わせてもらっている。

 もともと、エアリアルを扱う彼らは、財宝や墓を守るのが役目だった。怪物を創っては盗賊から宝を守らせていた。その仕掛けを破り、誰もが忘れ去っている財宝を頂いて、ラウラは暮らしている。結果として墓を荒らすこともある。心は痛まない。人知れずしまわれていた宝石は、いずれ誰かの指を飾ることになるのだろう。

教会の誰かがエアリアルというものに目をつけ、戦力にしようと考えたのが、四年以上前の話だ。その頃、教会は戦力が欲しかった。根強く残る異教徒に力を知らしめようとしていた。

その為に人間が集められた。身分も性別も関係ない。家督を継ぐ権利のない貴族の次男や、行く当てのない孤児が一緒の施設に押し込められた。

ある地方で試験的な実戦が行われた。結果は散々だった。もっと有利に進められると上の方は高を括っていたようだ。開戦当初はよかったが、敵側にエアリアルを古くから扱う一族が力を貸したところで戦況は逆転。見よう見真似で行っているほうは、身近な武器を生成するのが精一杯で、普通の兵士に少しカビが生えた程度の戦力にしかならなかった。神話に登場するような怪物たちとの戦い方など施設では教わらなかったのだ。

 知った顔が何人も死んだ。何だかやるせなくなって、ラウラは乗っかった車軸から脱落することに決めた。そうして施設を脱走した。根性がなかった、といえばそうなのだろう。あそこで踏ん張る意地にどれほどの価値があるものか、と当時は思った。理由は、挙げようと思えばいくらでもある。特異な容姿からあまり集団には馴染まなかったこと。とても大事な人がいなくなって、その人はもう同じ時代にいることはできないのだなと感慨を抱いたということ。

 昔の知人が、たいそうな役職のご身分になっていた。己にもそういう道があったのだろうか。あのまま耐え忍んでいれば、何かしら、得られるものでもあっただろうか。今更ながら、そんなことを考えてしまう。

 シリウスは市場通りに入っていた。人で賑わっている。何人か、ラウラに目を留める人がいた。フードで髪を隠しているが、この肌の白さはやはり彼らと違うらしい。

 エアリアルを扱う部隊は教会内でも公にされていないはずだ。一般人の前でこれを使えばやっかいなことになるだろう。

 見失わないようについていく。人の多さに比例して、エアリアルの量が少なすぎる。

 どこからか女の悲鳴が聞こえた。悲鳴は感染して周囲に不安を植え付ける。

「鼠が!」

 たかが鼠という顔をしつつ、女の周辺で人々の足が止まり、足元を見回している。また別のところで「こっちだ!」と野太い声が上がる。続いて、わぁと若い男の悲鳴があり、足をもつれさせて後ろの果物籠に尻を落とした。店主の怒鳴る声と、違う悲鳴が続けざまに起こる。

「どれだけいるの?」

「十匹はいるんじゃないか」

「いいえ、一匹よ」

「一匹くらいで」

「あなた、肩に乗ってるわ!」

 男が慌てて肩を見る。しかしそのときにはもういないのだ。

 その場は軽い恐慌状態に陥った。

 ようやく市場を抜けたときには、シリウスの陰も形もなくなっていた。見失った。

「くそっ」

 地団太を踏む。悔しい。ダリアの仇だというのに。

 悪態をついているラウラの横を、僧服の集団が走っていった。何事かと、人々が行き急ぐ彼らを見送る。

 後ろの方から話声が聞こえてきた。

「町の入り口を封鎖するって」

「えぇ? どうして?」

「“蠍”って強盗を捕まえるためだって、さっき広場で教会の奴が言ってたよ」

 上の方で何かしらの動きがあったらしい。

「かってに動き回るなと言った」

 息の上がった、聞きなれた声がする。睨みを利かせて振り返る。

「教会は嫌いだ」

「知ってる」

「ダリアを行かせるのは止めた方がいいっつった!」

「終わったことだ」

「てめぇも嫌いだ」

「わかってる。シリウスは? 会いに行ったんだろう?」

 どこまでも感情を崩さない。悔しい。

「逃がした」

 こみ上げてくるものを抑えて、短く言う。

「そうか」

 失態を責めもしないのだ。

「ここの教会関係者にも、探してもらうよう頼んだ。俺もこれから探す。お前も探せ」

 オルネオの足はすでに動いている。

 ラウラは、彼と反対方向に駆け出した。


 杖を肩に担いで廊下を闊歩するカルミナを、阻む者はいなかった。

 一人の教徒が不安顔で彼女に近づく。

「あの、これは、なにか不吉の前兆でしょうか?」

「そんなわけないでしょ!」

 そう一喝した後、思い出したように下がろうとした者を引き止めた。

「これから私が悪魔退治をします。危険だから、みんな屋内にいるように。目が腐るといけないから、覗き見るのもダメよ」

 口々に呟かれる祈りの言葉を背に、カルミナは窓枠へ手をかけた。

 二階の張り出し窓から屋根に降りる。

 少女の行動を、誰もが遠巻きに眺めていた。カルミナが出た後は、窓を閉めてカーテンを引いてしまう。

 屋根の中ほどまで歩きながら、杖を回して、空中のエアリアルを呼ぶ。緑色の光が奇跡を描いた。

 エアリアルは常に空中に散っていて、普段は目に見えない。凝縮した結晶に息を吹き込むと、命令を下せるようになる。その言葉は独特で、人のものとは異なる。呼びかけると、粒状に淡い緑色や銀色に輝く。

施設ではそれを、妖精であると断言した。こちらの呼びかけに、意志をもって反応しているから間違いないというのだ。

その言い分を鵜呑みにするのはどうか、とカルミラは疑問に思う。幼いころ読んだ絵本とまったく違う。妖精とは、もっと可愛いものだ。けっして、あんな埃だか塵だか、わからないようなものではない。施設に在留中、そんなことを公言したため、教師連中からは睨まれた。未だに彼女は持論を曲げない。これは、妖精では、ない。

 そこらを這いまわっていた猿がカルミラに気づいて近づいてきた。窺うようにゆっくりと、距離を測りつつ三足を使って寄ってくる。

 巨大な体は腕を一本失っていた。

「不恰好ねぇ」

 この猿はエアリアルで造られているのだろうから、崩せばいいだけだ。杖の先端に小声で囁く。複雑な命令にはならない。

 猿が威嚇するように立ち上がった。

 カルミナが小さな体で杖を構える。

 屋根を蹴って、カルミナが矢のように飛び出した。足を狙って杖を振る。横から風を切って腕が降ってくる。カルミナは猿の足の間を滑って後方に出た。帽子が取れる。くぐる際に触れたエアリアル体は鋼のように冷たかった。振り向きざまに杖で足を叩く。猿は自由落下中の帽子の上を空振りしているところだった。叩いた足は欠けたが体制を崩すほどの攻撃にならない。続けざまに、猿の背後を打った。虫に刺されたというように猿が肩越しにカルミナを振り返る。

「あなた、固すぎ」

 不満を述べるカルミナを蹴散らすように足が浮いた。避けようとして、思い直したカルミナはその足にしがみつく。感覚などないだろうに、それでも違和感があるのか、猿は振り払おうとする。風圧にカルミナは息を呑んだ。腕の無いほうにしがみついたので、攻撃はない。

 足が屋根に下りた。どうしようもなく猿は立ち尽くしている。

「どんなエアリアル体でも、核を壊さなければ行動し続けるって習ったわ。あなたはどこにあるのかしら?」

 エアリアルを凝縮した核を持たなければ、空中に霧散しているそれを操ることは出来ない。カルミナの杖の先端にも付いている。

 この形を保つのも、行動する様式も全てそこから命令が出ているのだ。

 杖で体を叩き、崩れたところを掴んで、側面をよじ登る。声帯はないようで、唸り声もない。ただもどかしそうに、右に左に揺れ動く。

 人間であれば心臓の位置を杖で叩いた。手ごたえはない。

「じゃあもっと高いところかしら」

 カルミナの息が上がる。施設にいたころは無茶な運動もよくさせられたが、外に出ると木登りをする機会さえなかった。

 肩口まできたとき、反対側の手が伸びてきた。無造作な動きで払い落とそうとする。杖で指先を削ってやった。

 杖を後ろに振りかぶり、力の限り、顔面を叩き込む。

 猿の体が後ろに反った。そのままゆっくりと倒れこんでいく。手を離す時機を逃して、カルミナは慌てた。

 屋根に横たわろうとする寸前、黒い巨体は塵のように霧散した。

 宙を掴んだカルミナが屋根の側面へ投げ出される。玩具のように転がって、そのまま地面へ落下した。

 良い具合に垣根の上だった。身を縮こまらせていたカルミナは、体が動くことを確認しつつ、枝葉を折りながら地面に転がる。豪快に飛び込んだもので、せっかく綺麗に整えられていた垣根は酷い有様になった。

 建物から、二人の男が飛び出してくる。カルミナのお付だった。

「お嬢様!」

「痛ったぁ」

 顰め面で、顔についた葉を払うカルミナの側に、二人が膝を着く。

「お怪我は?」

「平気よ」

 落下中に心臓が一瞬止まったような衝撃を受けたので、戻った脈が大きく痛いくらいだったことと、枝が体中に刺さって痛いというくらいで、ほぼ無傷だった。

「なによ、二人してくることないでしょうに。施設に居た頃はね、毎日が生傷だったし、二階から落ちるくらい、あなたたちにも慣れてもらわなきゃ困るわ」

 それは言われた方も困ってしまう。

「見張りはどうしたの?」

「申し訳ございません」

「……何が申し訳ないのよ」

 二人が目を伏せている時点で、嫌な予感しかしなかった。


 日が傾き始めていた。

 隠れられる場所に当たりをつけていけば、範囲は狭まるはずとラウラは思っていたが、ネヴィタは広い。

 教会の連中とすれ違うたびに、怪しいものを見る目つきをされるので、それも苛立たしさを上昇させた。

「……てめぇら、真面目に探してんだろうな」

 悪意を込めて呟く。これだけの人間がいて、人一人探せないのか。

 ポケットの中に手を突っ込んで結晶を弄った。触れるものがあると安心する。

 教会で、運びこまれたダリアの遺体を見た。以前にも、知っている顔と永別した。そのときも、死に顔はろくに見れなかった。

 ダリアと過ごした日は短い。腹を割って何でも話せるほどでもなかった。あれは、あらゆるものを警戒していた。ラウラもその対象だった。髪も目も肌の色も理由にならなかった。そういう人はラウラにとって貴重だ。

 今、いつものように道を歩いている町人たちは、警戒心が緩いのだろう。己の日常を崩す必要はないと感じているのかもしれない。連れ立った男たち、買い物途中の婦人、姉弟らしい、手を取り合った子どもたち。

 この中で髪と肌を晒したとき、彼らはどういう反応をするだろう。

 これだけ人がいる中で、死んだのはダリアだった。

 ラウラを疎ましく思って施設に放り込んだ祖母でも、幽霊だと囃し立てた施設の連中でもない。蔑みも哀れみも持て囃しもせずに、ラウラの存在をありのまま認める人間は少ない。

 己が行けばよかったのだ。そうすれば話は簡単だったのに、子どももシリウスも両方、手に入れようと欲を張るから、こうなる。

 赤焼けた空がラウラの心を寂しくさせた。とぼとぼとと歩いて、気が付くと町の端まで来ていた。

 町の入り口で、何人かの町人と封鎖に当たっているらしい教会の人間が口論していた。町の外へ出られる道は、いくつかある。小さな入り口は彼一人が当てられていた。

「だからどうして出られないのよ!」

「凶悪な強盗の一味を逃がさない為だと、何度言ったらわかるんだ!」

「じゃあ、そいつらはいつ捕まるの? いつまでわたしたちを閉じ込めるつもり!?」

 大きな荷物を背負っている中年の女は、どうやら行商人らしい。

「それは、悪い奴らが全員、捕まるまでだ」

 おそらく、彼も上からきちんと説明されていないのだろう。対応がしどろもどろだ。

「山の方のじいさんたちに食料を届けなきゃならないんだが」

「今日中にここを発たないといけないんだけどねぇ」

 一人の僧侶に対して、寄って集って現状を訴える。端から見ていても彼の焦りが伝わってきた。

「我々がその凶悪な強盗の一味に見えるのかね?」

 誰かがそう尋ねた。

「あたしたちが悪者だっていうの!?」

「俺たちを疑うのか?」

「エルジバのやることはいつも勝手だ!」

 堰を切ったような勢いだった。それまで状況を見守っていた人たちまで加わって、僧侶は何歩か退いた。

「わ、わかった!」

 それは悲鳴に近かった。

「い、一列に並べ。身分を証明できるものを提示しろ。証明できるものから、行っていい」

「お、おい……」

 一歩踏み出したラウラを、列の最後尾に並んだ人が睨んだ。今にも殴りかからんばかりの目つきに怯んでしまう。

 身分証など、この場合、何の役に立つものか。

 彼が、よっぽど脅しをかけて命令されていれば、そのような選択は選ばなかっただろう。

 詳しい説明をされないうえ、町人から一方的に詰め寄られれば参ってしまう。彼なりに理論的な行動を取ろうとしているのだろうが、応用の利く器ではないらしい。

 一人、一人と町の外へ解放されていく。その数はせいぜい十人程度。

「言ってみるもんだね」

 並んでいる途中、行商人の女が、老人の肩をぽんと叩いた。背中を丸めた老人は目深に被った帽子の鍔を摘んで、女の方に顔を傾けた。目配せをしたようだった。

 なんだか、そのやりとりが奇妙に見えた。

 老人の番になった。

「その子どもは?」

「孫です」

 意外にがっしりとした手は傍らの子どもと繋がれている。

 掌大の紙切れを差し出して、老人はすんなり町の外へ出された。子どもも揃って出て行く。これから荒野に出なければならない。砂避けに頭から外套を羽織るのは、珍しいことではなかった。だが、裾から覗いた小さな手は、見るものをぞっとさせるほど青白い。

「おい、そこのじじぃ」

 思わず呼び止めた。

「列を乱すな!」

 強い口調で僧侶に怒鳴られる。単なる八つ当たりだ。ラウラの方はそれに構わなかった。立ちふさがる僧侶の横から声を張り上げる。

「おい、じじぃ止まれ!」

「えぇい、騒ぐんじゃない!」

 肩を突き飛ばされて、地面に尻餅を着く。

 列に並ぶ人から失笑が漏れた。

「なんなんだい、あんた」

「あのじじぃが扇動したんだろう! 強く押し切れば出られるって言ったんだろうがよ! どけよ!」

 気迫に僧侶がたじろぐ。

「お、おまえは何者なんだ!」

「関係あるか!」

 根無し草のラウラは身分証など持っていない。それを悟ったのか先ほどから一転して、僧侶が傲慢に顎を上げる。

「身分の証を立てられない者はここから出すわけにいかない」

 今しがた出来上がった意味の無いルールが、まるで古くからある決まり事のように言う。その場の誰も、僧侶の意見に反論はないようだった。誰もが他人事のように冷たい顔をしている。

「くそったれ!」

「僧侶さま」

 町の外から、よく通る声がした。老人と子どもが戻ってきていた。

「その人は、わたしの知り合いです。お騒がせして、申し訳ない。通していただけませんか」

 そうして僧侶の手に何かを握らせた。

「いや、しかし」

 しぶる僧侶にもう一つそれを手渡した。今度は硬貨がはっきり見えた。

「……知り合いなら、仕方ないな」

 道を開けた僧侶がそっぽを向く。無関心を装うことにしたらしい。

「さぁ、行きましょう」

 いやに優しい口調で老人は言った。

 その声でラウラの頭は瞬時に冷却され、次いで困惑を引き起こした。ここは町の境界線だ。外に出るということは、エアリアルが豊富にあるということだ。

 昔の戦場を思い出す。彼らはエアリアルを使うのが上手い。

 乾燥した荒野を背景に、老人と幼女は悠然とラウラを待っていた。


「死体が生き返ったくらいでなんですか!」

「話には聞いておりました。しかし、しかしあの少女は死んでいたのですよ?」

「説明したでしょう?」

「しかしお嬢様」

 あれを説明というのですか? と言いかけた付き人をカルミナはきっと睨む。それだけで二人はすっかり萎縮してしまった。

 前触れなくアリスは目覚めた。シリウスが子どもを浚いに来ると警戒していた二人は、いきなり死体が自立歩行を始めたのに驚いて、腰を抜かしてしまった。アリスはかってに倉庫のドアをあけ、そのまま堂々と歩いて出て行ったという。敬虔な教徒たちはどこかの部屋で祈るか怯えるかしていて、少女の存在に気づきもしなかったようだ。

「シリウスと一緒に、アリスも迷子として探してもらおうかしら? でも説明が面倒そうね」

 どこまで話して、どこまで秘密にするか。少なくとも、猿の件は後々まで尾をひきそうだ。

 倉庫にやってきたカルミナは、包んでいたはずの毛布がめくれているのを確認した。寝起き後のシーツのように、クシャクシャになっている。

 どっと肩が重くなった。そういえば、夕べは一睡もしていない。

「こちらでしたか。なにか新しい報告はありましたか?」

 オルネオが廊下を駆け足でやってきた。うろんげにカルミナはそちらを見遣る。

「悪い話と悪い話があるけど、どっちを聞きたい?」

「聞く必要がないと捕らえてよろしいでしょうか? ラウラは戻ってきていませんか?」

「来たとしても、私のところに顔を見せにくるか疑問だわ」

 ダリアの件で相当、頭に来ていることだろう。カルミナとしても、今は出来れば会いたくない。

「猿は処理したわ。シリウスに関する情報はまだよ。それと聖女候補の目が覚めて、ここを出て行ったわ」

「では、そちらも探しましょう」

「簡単に言うわねぇ」

「結局は、そういうことになります。留守をお願いします」

「フォルカー司祭に話は通してるのよねぇ? わかったわ。諸々をまとめておきます。あなたたちは、せめて教会周辺を探してらっしゃい! 死体だろうがなんだろうが、子どもの歩幅よ。そう遠くへ行かないわ」

 一礼を残して付き人二人は踵を返した。

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