8 修理
濃紺の髪の男と目が合い、沈黙がその場を包んだ。
沈黙を破ったのは濃紺の男だった。
「なあ、君たちちょっと手伝ってくれないかい?」
「どうする?デグンくん」
俺が、デグンくんに小声で話しかける。
「どうしましょうか。ここから無視は流石にできませんし」
デグンくんが応答する。
「話だけ聞いてみませんか?」
デグンくんから話だけ聞かないかと言われたので、そうすることにしよう。
「そうだね」
そんな会話を小声でして、こう返答した。
「すぐそっちに行きます」
宿の部屋から出て、階段を駆け下りる。
「やあ、君たちごめんね」
「僕の名はシャーレトルテ。しがない魔工職人…見習いだよ」
「そう。見習いなんだけど、職人が今日熱ででられないんだよね。それで、このゴーレムの一体が壊れちゃったみたいで」
「配列がおかしいのはなんとなくわかるんだけど、どこの配列がおかしいのかどこを直せばいいのかがわからないんだ」
ゴーレムの魔工回路を覗き込む。
基盤のような感じでできていた。仕組みとして一緒かも。
デグンくんが回路を見て言った。
「これは、回路がズタボロだなぁ」
「魔工学基礎と準応用までは勉強したことがあるので分かるかもしれません」
そういえば彼は民間の学校で魔工学を専門にしていて、魔工基礎士という学位を持っていると聞いていた。こういう時に頼りになる。
デグンくんがそういった、
「魔導溶接機貸してください」
はんだごてのようなもので基盤を取り外した。
「アルファ1〜3が損傷、ベータ2、4、5が損傷だね」
「だから2を直せば動くけどほかも直さないと効率が悪いね」
俺には全くわからないけど、アルファが右側。ベータが左側らしい。
多分右側が上から1、2、3の配線が壊れてて、左側が上から2、4、5の配線が壊れているみたい。
真剣な顔でデグンくんが唸っている。
「この回路式古いなぁ。たぶん百年くらい前のでしょ?」
「このゴーレムが作られたのは今から130年くらい前らしいから多分そうだね」
「これどうやって動力生み出してるんだろう?」
デグンくんがブツブツとそんなことを呟く
「そうか。そういうことか」
理解したみたいだ。
「ユウセイさん。これすごいですよ!これがここでループして反射することでここがモーターの役割を担ってるんですよ」
「えーと…」
「この基盤そのものがモーターのようなエネルギーを取り出す装置なんですよ!」
「ほう?」
「多分下手にいじったら機能がなくなりすねこれ」
「なので、破損部位を切離して、修復を行おうと思います」
「できるのかい?」
「おそらく何とかなります」
デグンくんはさっきのはんだごてのような機械を使いテキパキと基盤を直していった。
「ふう。何とかなった」
基盤をゴーレムに戻すとゴーレムの目に黄色の光が走る。
ゴーレムの腕がゴゴゴゴと音を立てて動く。
「よかった。ちゃんと成功したみたい」
「ありがとう君たち。これで明日の親方の仕事は少なくなったよ」
「お礼になにかあげられるものは…」
「そうだ。これあげるよ」
卵とその卵を守るための保護容器だ。
「この卵の種族はジェットイーグルっていう生物でね、最大時速140キロを出せるんだ」
彼から聞くとジェットイーグルは成長すると翼長2メートルにもなる巨大なんだとか。
卵には雷のような模様がついていて嵐の中でも飛べそうな感じがする。
「ありがとうございます」
「ジェットイーグルは魔力を込めて1ヶ月程度温めれば孵化するよ」
「ありがとうございます」
そうして俺たちは宿に戻った。
ミトンさんが帰ってきて卵に言及する。
「なんだ?その卵」
「さっき人を助けたときに卵をもらったんです。ジェットイーグルの卵だって」
「ジェットイーグルだあ?」
ミトンさんの驚き様が尋常じゃない。
「どうしたんですか?」
「あいつらは確かに子供の時から育てると懐くが、野生じゃ獰猛な生き物でな」
ミトンさんが苦い顔をする。
「俺も昔、一度やられたことがある」
へえ、そんなに強いのか。
「成体になったらどのくらい強いんですか?」
「Cランク上位からBランク下位ってところだな」
俺たちの「緑光の集い」がDランクだから、相当強いってことになる。
「ジェットイーグルが特に厄介な理由は、空を飛べることだ」
ジェットイーグルは空を旋回しながらいきなり襲いかかってくるらしく、子育ての時期は100体単位の群れをつくって格上のグリフォンやワイバーンすら狩ってしまうこともあるとか。
「それでいて、大体1年で成体となっちまう」
「強い魔物に食われるのもいるが、それでも生まれる数のほうが多い」
「おまけに頭が良いから戦いづらい。逆に手なずければ芸も覚えられるってことだがな」
と話ながらガハハと笑った。
「別に育てても構わんが、生まれたら従魔契約書を通じて公的な身分証明を作らなきゃならんからな」
「その身分証明を作れるのはここ黒の都もしくは、神の都、中立の都しかないからな」
「まあ、俺たちについてくるんだったらこいつが孵化する頃にはどっちかについているだろうけんな」
その話を聞いて決めた。
こいつのこと育てる。
せっかくもらった卵だし、この子を育てれば俺を守ってくれるかもしれない。
それに、地球じゃ親がアレルギーでペットって飼ったことがないから飼いたい。
そう思ったら動くが吉だ。
「そうですか。俺、育てます」
「ジェットイーグルを孵化させる方法は魔力を注いで温めることだ」
「魔力?」
魔力ってなんだろう?この世界の人は当たり前に知ってるみたいだけど、そこら辺にありふれた力らしい。
気力や精神力みたいなものか?
そんなことを一人で考えこんでいたときのことだった。
「魔力なら私が教えよう」
ラティカさんが魔力について教えてくれるらしい。
これは非常に助かる。
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