表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百鬼徒然  作者: 葛葉幸一
9/35

─雨女─

気が重い。

体がだるい…。


梅雨前だと言うのに、暑い日が続いて辟易してるのは僕だけではないはずだ…。

そろそろ梅雨に入って涼しくなってくれないかなぁ。

そんなことを考えていた矢先、雨でもないのにずぶ濡れの女の人を見つけてしまった。

あれは、やばい。


祖父の言葉が頭をよぎる。

同じも者だと言っても、機嫌がいい時もあれば、機嫌が悪い時もある。

特に自然相手に干渉できるような奴はきをつけろ。

あいつらの機嫌は梅雨の空模様みたいにころころ変わりやがる。


雨女がいるところには、干ばつの文字はない。

その名の通り、雨と共に在るのだ。

放置してる分には問題はないかもしれない。

もし機嫌の悪い時にあたったら、最悪命はない。

しかし、いつの間にか姿を消していた。

ホッと息をついた瞬間。


が。


後ろから首を掴まれた。

気づかないうちに後ろに回り込まれていたらしい。

「く…あ…っ!」

ギリギリと爪が食い込み、血が滲む。

振り解こうともがくが、雨女の力は異常に強く、ビクともしない。

息ができず、血液も止められた意識が霞掛かる。


意識を手放す瞬間。

苦しくて開けた口から、なにかが飛び出し。

「はぁ、はあ、…」

見れば中にただよう朧な光。

あれは、鬼火か…。

それと同時に、自分の中にあった陰気がなくなっていることに気がついた。

陰火に照らされた雨女を、大きく息を吐き、喉を抑えながら見上げる。

その口元は、笑っているようにみえた。

そして、俺の陰気は陰火となって、雨女とともに消えて行った。


もしかしたら、雨女は機嫌よく僕の陰気を連れて行ってくれたのかも知れない。

もう少し方法は考えて欲しかったが…。

そして、降り出す雨。

その日、この街も梅雨入りしたと後で知った。

あの雨女は、梅雨を連れてやってきたのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ