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─煙々羅─
僕はやらないが、大学まで行くとタバコを吸っている奴はやはりいる。
最近はIQSなど電子タバコなんてのもあるが、タバコには違いない。
祖父曰く
煙ってぇのは、奴らの格好の隠れ蓑よ。
ふわふわ雲みてぇで、とらえどころがないところなんざ、奴らそっくりよ。
あんなん吸う奴ら、みんな取り憑かれたと言っちまってもいい。
煙になぁ。
煙々羅なんてのは、江戸時代の鳥山なんたらが描いた創作妖怪だ。と言われている。
しかし、ここまで人を虜にも不快にもする煙。これは一体なんなのだろうか。
妖でもなんでもないとしても、僕はあの煙には近づかないようにしている。
最近は喫煙所でしか吸えなくなったせいか、煙がさらに密集している。
そしてそれは不定形に揺らめいてみせるのだ。
時に揺蕩い、時に人にからまり。
そして、風に紛れて消えていく。
これがもし、自らの意思で人に害を成した時、それは怪異となり得るのか。
もし、創作妖怪だったとして。
時間が経ち、それが本物にならないと誰が言えようか。