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百鬼徒然  作者: 葛葉幸一
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─うわん─

夜。

なんとなく眠れなくて外を散歩していた。

特に目的もなくさまよっていたら、みたこともないお寺のそばに出ていた。

(こんな寺、近所にあったのかな?)

気にすることなく散策していると、犬の鳴き声が聞こえた。


うわん。

そして、壁の向こうから、返事を返すように。

うわん。

二匹は一言ずつ壁越しに話しているのだ。

うわん、うわん、うわん、うわん


その時、祖父の言葉を思い出した。

奴らの言葉には呪詛がある。しかし、同じ言葉を繰り返せば、呪詛は奴らの元に倍になって返んだ。

しかし、奴らも死にたかぁねぇ。

だから、また呪詛を吐くのさ。

その名前をたしか。

うわん。と言ったか。


ふっ、と僕は息を吐く。

怪異の正体みたり、か。

犬同士が夜中に吠えってるだけのなんとも陳腐な出来事だ。

しかし。


僕の背中には一雫の冷や汗が流れていた。

そして、寺の外にいる犬が

うわん

と鳴いた時、寺の内側から返事がなくなった。

静寂が辺りを過ぎる。


犬は静かに僕の方をむいて、ジッと睨んだ後。

うわん。

と鳴いた。

僕はとっさに、うわん!と叫んで逃げ出した。

どこをどう走ったか覚えていないが、気がついたら行きつけのコンビニの前にいた。


あれはなんだったのだろうか。

ただ犬同士が話していただけだろう。

僕は自分にそう言い聞かせて、帰路に着いた。

まんじりとして眠れぬ夜が明け、大学に行くために仕方なしに起き、外へ出る。


そして見てしまった。

家の前にある犬の死体を。

みたところ外傷はない。

寒気がして後ろを振り返ると、昨日の犬がいる。

そして、ゆっくりと口を開きこう言った。

うわん。

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