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ひだる神──ヒダルシン──
ある日相談をうけた。
妖怪を退治してほしい、と。
しかし僕は見えるだけで退治などはできはしない。
しかし、たしかに彼女には妖怪が憑いていた。
彼女は空腹感、飢餓感を常に抱えているはずだ。
二口女か、それとも餓鬼か。
それともまた違うものか。
祖父曰く。
はるか昔から成仏できない怨霊というのはいるもんさ。
普通年月も経ちゃあ、自然と怨念も消え、勝手に成仏しやがるが、そうじゃねえのもいる。
今、現代にもな。
そう、これは妖怪ではない。
ひだる神だ。
神など名乗っちゃいるが、奴らは神ではない。
怨霊だ。
恐らく原因は彼女の住んでいるアパートにある。
僕は彼女に引っ越すように進めた。
後日、そのアパートは取り壊されらしい。
そして。
彼女が住んでた部屋の真下からは、白骨化した遺体が見つかったそうだ。