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百鬼徒然  作者: 葛葉幸一
23/37

─提灯お化け─

ひどく懐かしいものを見てしまった。

それは今や忘れ去られた提灯お化け。

「けけけっ」

と鳴くと、付いて来いと飛んでいく。


祖父の言葉を思い出す。

お化け幽霊、妖怪なんぞは人間が信じちまうから生まれるんだ。

そして、使うものは年代を重ねるごとに変わっていって、古いもんは滅びゆくのよ。

もう使わねぇもの、あんだろ?

ああいうのは境を隔てた向こう側に行くのさ。


境の向こう側、と祖父は行った。

時代遅れになり、人からも忘れ去られた妖怪。



それは妖怪たちにとっての天国や地獄のようなものなのか。

赤提灯お化けはフラフラと一軒の酒場に入っていき、そこで姿を消した。



「いらっしゃい」

老夫婦が二人で切り盛りするような小さな酒場。

外には赤提灯が、下げられている。

少しはあのお化けも集客になっているのかもしれない。

それは、付喪神のように年月を経てこの老夫婦に、恩返しがしたかったのか……。



たまには美談も悪くない。

そう思ってから数日後。

その酒場は無くなっていた。


なんでも火の不始末で火事になったそうだ。

死者は二人。

あの老夫婦だ。

「けけけっ」

またあの声を聞いた。

あれは老夫婦を守るものだったのか、それとも仇なすものだったのか。

最後までわかることはなかった。

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