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百鬼徒然  作者: 葛葉幸一
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─百鬼夜行─

 人気のないところで怪異に会うというのは特別なことではない。

 しかし。

 人がたくさん往来しているところで出会う怪異が一番厄介だ。

 人が多いと言うことはそれだけで怪異が存在しづらい場所になる。

 街灯。混雑。喧騒。機械音。不自然な音。歓喜。

 対して妖しが好むのは、暗闇。静寂。無音。

 なにより人の恐怖心や怨みの念をもっとも好む。

 だから視える性質の僕も安心していた。

 が。今日出会ってしまった。

 繁華街のスクランブル交差点。

 沢山の人が行き来する場所だ。

 信号待ちをしている僕の隣に並ぶ馬。

 本当に馬が走っていたら大騒ぎだ。

 だからそれが怪異だとすぐに気がついた。

 馬。たしかに馬だ。

 だが首から先に頭がない。そこには大きな1つの目。

 夜行……!

 僕は気づかないフリをしてコンビニの中に入る。

 灯り。そして恐怖心のない大勢の人。怨みつらみとはかけ離れた歓喜。


 祖父曰く。

 夜行ってのは先触れよ。

 百鬼夜行の、な。

 ぬらりひょんと夜行と、先頭に立ってやってくるんだ。

 百の鬼を連れて、現世に災いをもたらしに来るのさ。


 コンビニで立ち読みした振りをする。

 夜行は鏡越しに俺の目の前に立ち、じっとこちらをみてくる。

 雑誌に目を落とすも、何一つ頭に入って来ない。

 やがて1つ目の馬は、老人を乗せて去っていく。

 ホッとした俺は急いで家に帰る。

 何事もなく家にたどり着き、テレビを見ている時。

 耳元で声がした。


─見つけたぞ─


 驚いて外を見る。目玉だけの馬が数多の鬼を引き連れて僕の前に姿を現した。

 まるでこれから始まる百鬼夜行を見せつけるかのように。


─見ていたろう?─


 街に、人外の馬の嗎きが響き渡った。

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