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百鬼徒然  作者: 葛葉幸一
19/37

─ア行サン─

昼休み。

オカ研の一人から話しかけられた。

「ア行さん、って知ってる?」

「ア行さん?聞いたことないな…」



いくら僕だって、全ての妖怪を知ってるわけでもない。

そしてこういうタイプの男は、こちらが知らないも図に乗るタイプだ。

案の定、誇らしげに話す。



「ア行さんはね、暗い夜道を歩いていると、いきなり背中に飛び乗り、『アギョウサン、サギョウゴ、如何に?』と聞いてくるんだ。

そして、それに答えられない奴は殺されるんだよ」



そう言って、ぼくの肩を叩いて、立ち去ろうとする。

その間際。

「3日以内に来るはずだから、気をつけてね」



と言って、今度こそ去っていった。

(なんだ、その話か……)

ア行さん、アイウエオの三つ目つまり『う』

サ行ゴ、さしすせその『そ』

つまり『うそ』だ。

しかしムカついたし、せっかくだからあいつに仕返ししてやるか。

そして後日、俺はそいつに声をかける。



「まだ生きてたみたいだね。答えられたんだね」

「おかげさまでね」

あ、ただ。と僕はそいつを呼び寄せた。



「アレは、そんな簡単な妖怪じゃないぞ」

目一杯ドスを効かす。

「あれは、ア行さんじゃない。『悪行斬』だよ」

「え?悪行斬……?」

「昔、悪行を犯した者は体に刺青を入れられたんだ。社会に出ても、こいつは犯罪を犯した奴だ、とわかるように」



俺はそいつの目をじっと見る。

「悪行斬。それでもまた悪行を重ねた者は、最後には斬られるんだ」


祖父曰くーー

言葉は時代とともに変化して、尾びれ背びれが付き、全く話の内容が変化するんだ。

その怪異を根本まで遡ると…。

案外危険なのさ。


そう、遡ったのだ、ア行さんを。

ア行さん、サ行ご如何に。答えはうそ。

嘘という悪行を重ねる妖怪になってしまったのだ。



そして、重ねられた嘘という悪行により、悪を斬る妖怪になり、その力を増していく。



「随分たくさんの人に嘘をばらまいたみたいだな。気をつけろ、3日以内に来るぞ」

「そ、そんな助かる方法は…っ!?」

「そいつは悪行を斬るんだ。なら、善行を重ねるしかないのさ」


それからこの男はボランティアに参加したりするようになったらしい。

いいことだ。

悪行斬。

あんなの、口から出まかせの『うそ』だったのにな。

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