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百鬼徒然  作者: 葛葉幸一
18/37

─雪女─

山で遭難した男は、雪女と約束をする。

「私の事を誰にも言わなければ、命は助ける」

その後男は、雪女のことを誰にも話さずに暮らしていた。



数年後。妻帯者になった男は、もう大丈夫だろう、と妻に雪女のことを話してしまうのだ。

すると妻は妖怪に変幻する。

その姿はまさに雪女。

そして、約束を破った男は氷漬けにされ、雪山へと連れ去られたという。




祖父曰く。

神や悪魔や悪霊なんてのは『約束事』が好きな連中だ。

それは口約束でも、違反したら逃れられないのさ。

奴らと話す時は気をつけろ。

魂持っていかれるぞ。




もう4月も半ばだと言うのに、ひどく寒い夜があった。

ちらりと外を見ると、女が一人で雨の中立ち尽くしている。

濡れ女子か?

いや、違う。

あれは……。


僕は慌ててカーテンを閉めた。

目は、合っていない。

心臓が早鐘を打つように鳴り響く。

そして、何の気なしに後ろを振り返る。

「見たね…」


先ほどの女が後ろに立っていた。


「……っ!?」

「死ぬか、わたしの事を未来永劫誰にも話さないか、決めなさい」

それは言霊。

しかし。

しかし、僕も言霊は得意な方だ。



「み、未来永劫話さない!そ、そのかわり……」

僕は頭を回転させる。

この場合、おそらく生き続けても、死ぬ間際に僕の魂を奪いに来るだろう。



「僕が天寿を全うしたら、天国に行きたいんだ!でなければ…」

僕はスマホを見せる。

「世界中にあんたのことを、話してやる!」



「……?」

どうもスマホがよくわからないらしく、一から懇切丁寧教えてあげる。

「人間も変わったのね……。あなたの条件飲みましょう。それと」

「ま、まだ何か?」



「あなた、なかなか物の怪に好かれやすいみたいだから、これを持ってなさい。天寿を全うするまで、あなたの魂はわたしのものよ」

それは、氷でできた、タリスマンのネックレス。



これはなんなのか聞こうとした時には、雪女はすでに消えていた。

しかしこれだけはわかる。

僕の口車に惑わされた雪女は、僕が約束を破るか、死ぬまでは僕の味方だ、と。

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