─青行燈─
ここはオカルト研究部の部室。
今日はここで、百物語をやるらしい。
このオカ研がある棟は昔、生徒が自殺をし、今もその霊が彷徨い出るという噂がある。
そして、見える質でもある俺が、なぜか呼ばれていた。
おかしい。
部室で飲み食いするだけという話だったのだが、いつのまにか百物語になっている……。
はっきり言って、この棟には霊はいない、断言できる。
しかし、雰囲気に押され、俺まで怖い話をしだしてしまった。
そして。
90話目が終わる頃。
耳鳴りがし始めた。
怪異が押し寄せてくる。
91…92…と終わりにつれ、耳鳴りは声に変わっていた。
今ならまだ間に合う。
今やめれば、怪異は起きないなのに。
百話目は俺だった。
祖父曰く
百物語ってのは、一種の降霊術みたいなもんよ。
物も百年経ちゃあ、立派な妖怪になる。
怪談だって百話やりゃあ、一つくらいは本物になるってもんだ。
百話目に話すのは、青行燈。
百物語が終わると現れる怪異。
この世とあの世のトンネルをつなげ、ここに怪異を呼び起こすのだ。
しかしそれは、百話目を話している僕自身なのか?
ガタガタと扉が震えて、ロウソクの火が消える。
周りは怯えて、逃げ出そうとするものもいた。
そう、これこそが本物の怪異だ!
…。
……。
………。
翌日。
一人でオカ研の部室で寝ている僕が、メンバーに発見された。
オカ研の連中に聞いても、百物語などやっていない、という。
ならばあれは……。
最初から最後まで、奴らの思う壺だったのかもしれない。
このオカ研のある棟に、魔魅穴が開いてしまった。
こうして部室棟の怪異は本物になったのだ。