─海南法師─
僕はここ二、三日、毎晩夢を見るの。
暗い。真っ暗な浜辺に立っているのだ。
身体は動かせない、声も出ない。
そんな中、真っ暗な海から何かが上がってくるのだ。
最初は一人。
こいつが海難法師だ。
それは夢を追うごとに増えていき、俺を取り囲む。
その時、祖父の言葉がおもいだされた。
祖父曰く。
夢ってのは、現実を暗示してるのよ。特に、おめぇみてぇな力を持った奴の見る夢は要注意だ。
下手すりゃそれだけでお陀仏だ。
ただ、夢にゃヒントが隠されている。
それをうまく見つけ出して、奴らを満足させりゃ、助かるだろうよ。
ヒント、ヒント!?ヒント!
いくら考えても出てこない。
いや、まて。
何故ぼくはこんな暗闇の中で奴が「海難法師」だと気付けた?
顔どころき服装すらもわからないほどの暗闇なのに。
ならば、赴くしかない…。
ここが海難法師伝説が残る場所。
俺は何の迷いもなく、一つの浜辺に来ていた。
こここそ、夢で見たあの場所だ。
不意に、冷気を浴びた様な悪寒が走る。
ーー後ろに誰かいる。
ひたり、ひたり。
と足音が付いてくる。
時折肩に手が触れる。
そして生臭い息を耳元で吐きかける。
おそらく今夜夢を見たら俺は死ぬ。
それだけは避けたい。
考えろ!かんがえるんだ!
奴らは海から現れた。
何の目的でだ?
この先には…。
一軒のお寺!
俺は一目散にお寺に駆け込む。
そして、忙しいであろう住職に、何とか頼み込んで、お話を伺うことができた。
海難法師はここで祀ることにより、その怪異を沈めていたそうだ。
しかし、その御本尊が何者かに破壊されたらしい。
ご住職曰く、たった今御本尊が出来上がり、また海難法師を封印しようとしていたところだった、と。
そこへ海難法師に取り憑かれた俺が来たものだから、驚いたらしい。
ただ一つ疑問なのは、なぜ俺だったのか。
塵芥の雑多な怪異ならいざ知らず、本物の怨霊に出くわした。
ーーあなたにはこれを渡しておきましょう。
それは祝詞。その歌に宿りし言霊が、悪霊からその身を守ってくれるらしい。
しかも、これは海難法師の元となった人物が高僧につくらせた、霊験あらたかなものらしい。
俺はうやうやしく礼をして、お寺を後にした。
サルボボからはじまり、これを機にレアなアイテムが俺の元にあつまりはじめたのだった……。