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百鬼徒然  作者: 葛葉幸一
11/37

─火車─

親戚の葬儀ため、久方ぶりに田舎へ帰った。

正月には酒を飲んだ赤ら顔で、楽しそうに話してるのをみたことがある。

そして、いつも飼い猫を膝に乗せてそれこそ猫可愛がりしてたものだ。

それくらいの親戚。


この地方では、式が終わった後一晩は、ロウソクの火を絶やさない、という風習がある。

遺骸をさらう物の怪が出るからだ。

火車、と言ったか。


祖父曰く

死体にゃいろんなもんが詰まってる。

その人が生前積んだ業とか福運なんかが、まだこびりついてるもんよ。

奴らはそれが欲しくて、妬ましくて仕方がねぇのさ。


その中で、なぜか僕がそのロウソクの寝ずの番を任された。

とはいえ、特別やることはない。

ロウソクの火を絶やさなければ、なにをしていてもいいのだ。


「にゃーお」

猫が入ってきた。

確かこの猫は、このおじさんの飼い猫。

猫は何事もなかったかのようにその場に座る。

じぃ、と遺体の顔を眺めていた


そういえば、火車の正体は猫じゃないかと言われることもあるらしい。

もしかしたらこの猫も…

「にゃあ」

猫は僕の顔を見て小さく鳴いた。


僕は緊張していた。燭台を手に取り、身構える。

その時、フッと電気が消えて、あたりはロウソクの光だけになった。

そして。

がたり、と戸がひらく。

ロウソクの火だけではよく見えないが、あれは、人間、では、ない。

生臭い匂いがして、ロウソクの炎が揺れる。

火を消そうとしているのだ!

身体で息を遮り、ロウソクをまもる。


その時。

「ふぎゃああああっ!」

猫がすごい勢いで、飛びかかった。

そして、謎の影と猫は取っ組み合いをしながら、外へと行ってしまった。

へたり、とその場に倒れこむと同時に、電気が復活した。

その日はそれ以上何もなく終わったが、あれから猫は行方がしれなくなってしまったという。

最後の最後まで、飼い主を慕い火車という怪異から主人を守ったのだ。


葬儀を終えて、思う。

猫は火車と同視されるが、火車から遺骸を守る役目を持っているのではないか。

守るのに失敗した所を家主に気づかれて、妖怪と勘違いされたのではないか。

そんな気がしてならない。

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