─蒙古高句麗─
垢舐めが垢を舐めとる妖怪なら、皮を剥ぐような恐ろしい妖怪もいる。
まぁ、この都会で見かけることなんか珍しいが。
精々が転んで擦りむいたくらいのもんだろう。
しかし昔はそうはいかなかった。
ちょっとした傷でも、感染症から死に至ることすらあったのだ。
さらには戦争があった。
そういう時には、やつらには格好のエサ場だったであろう。
祖父の言葉を思い出す。
しかし、奴らは剥ぐものを変えたんだ。
垢舐めが、垢以外に人の記憶や常識なんかをなめとるように。
あいつらは魂を少しずつ剥ぎ取るのだ。
夜中にふと、体の痛みで起きたことはないだろうか。
寝違え、姿勢、そのせいもあるだろう。
歩いている時、腰を痛めたり、膝を痛めたりすることもあるはずだ。
もちろん、ギックリ腰や、捻ったり、酷使したりが原因だ。
または、加齢によるものもある。
それが人間だ。
99.9%の現実と0.1%の怪異。
しかし。
祖父曰く。
奴らは、剥ぐものを変えて力をつけた。
人の皮を剥ぐのをやめて、魂を少しずつ削るようになったのだ。
人間の医療が発展すればするほど、魂は減りにくくなる。
だからこそ奴らは飢えることなく増えて、力をつける。
対策すればするほど。
ーーモクリコクリーー
元々は蒙古襲来、元寇の恐怖が形をとった物の怪だが、少しずつ。
少しずつ、力を手に入れて。
少しずつ、魂の皮を剥ぎ。
少しずつ、人を死に追いやるのだ。
それは驚異的で、どうしようもなく絶望的な、逃れられない。
死。
そのもの。
そう、今この瞬間にも。