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5話.勇者が育った家



俺が協力を承諾したことで、話は次に進んだ。

ミカエラが具体的にソフィを助ける方法を教えてくれる。


その方法は、ミカエラの精神魔法でソフィの心の中に入り込み、直接ソフィと話合うと言うものだった。


精神世界?どこのフィクションの話?

ツッコミが抑えきれず頭がパンクしそうになる。


フィクションの小説(英雄譚)は3年前までよく読んでいたが、所詮俺はしがない農民だ。


平凡な俺の頭では、そんなファンタジーな理屈を現実世界に落とし込んで考えることがうまくできなかった。

こんなやつらと同じ世界で世界で生きていたんだなと、眠るソフィを見て思う。


おれは理解を諦め、要点だけ押さえることに全力を尽くす。


要は、ミカエラが精神世界なる場所で俺とソフィを会わせてくれるから、そこで、目を覚ますように説得すればいいのか。


その結論に達した時、脳がその行動を拒絶する。

俺とソフィは、3年前喧嘩別れをしたきり会っていない。


正直気まず過ぎる。


思い返しても、ひどい別れ方だった。

謝ってすむ問題でもないし、なにより謝る立場である俺の方が自分の気持ちを整理できていない。


こんな状態ではソフィを助けるどころか、また彼女を失望させてしまうだけかもしれない。


そういえば、最後にソフィに会った日、ソフィは俺のことをすごいと言っていた。


一体こんな俺のどこをすごいと思ったんだか。


そこで、1つのことに気づく。


そういえば、ソフィはこの村に来る前はどこにいたんだろう?


ソフィと一緒にいた期間、そこに思い至らなかったわけではない。

ただ、それを聞こうとしても、ソフィは寂しそうな顔をするだけで答えてくれなかった。


あの時は、気を使ってそれ以上踏み込まなかったが。


そこに、ソフィの心の傷のヒントがある気がする。


「話を聞きに行くか」


そう呟き、俺は勇者一行の2人について来るように促した。






外に出ると、王宮でも注目されそうな高価な装飾品をまとっている彼らの格好に、この村の風景は全く合わず、違和感しかなかった。



しかも、その中心にいるみすぼらしい格好の俺は、さぞかし浮いていることだろう。

村びとたちはすれ違うたびにこちらを振り向いていて居心地が悪いったらない。



10分ほど歩くと、一軒の家が見えてくる。

他の家となにも変わらない普通の一軒家だ。


だが、この家こそがソフィが生まれ育った家だった。


そして、ソフィの叔父が今も住んでいる。


ノックをすると、ソフィの叔父、カイマンがドアを開けてくれた。

「おや、君は」

「お、お久しぶりです」


気まずさでぎこちなくなる。

姪であるソフィに酷いことをしてしまったため、後ろめたさがあったのだ。


むしろ考えてみれば、俺が後ろ暗さを感じない人間関係は、0である。


どうしてこんなことになってしまったのやら。


「後ろの方は?」

カイマンが尋ねた。

「私たちは勇者一行のメンバーです。ソフィさんには、いつも大変お世話になっておりました」

ミカエラが答える。


ソフィの名が出たからだろうか?

ミカエラの返答を聞き、カイマンは目を細めた。

そして、怪訝そうな顔をした。


だが、俺はその事については、深く考えなかった。

それより、ソフィが死亡したという報せは、当然カイマンの耳にも入っているだろう。

彼の心中を思うと、一刻も早くソフィの生存を伝えねばと思った。

「入りなさい」


それだけ言うと、カイマンは家の中に入れてくれる。



居間にソフィの写真があるのを見つけた。

ソフィとは普段外で遊んでいたため、この家に入るのも初めてのことだった。


写真にはソフィの両隣にソフィの両親と思われる男女が写っている。


その男女に見覚えがないことを考えるとやっぱり、ソフィの両親は…


「気になるかい?」

写真を見る俺の様子に気づいたのだろう。

カイマンが尋ねる。

カイマンの問いに頷き、今日はむしろそのことについて聞きたいのだと伝えた。


そして、ソフィがまだ生きていること。魔王の呪いにかかり、それを解くため、ソフィの心の傷を癒す手がかりが欲しいのだと言うことも、全てを打ち明ける。


カイマンは、ソフィの生存を知り、目を抑えた。


「そうか、あの娘は生きているのか。よかった」

こちらに背を向け、涙声でカイマンは言った。


カイマンがソフィを実の娘のように愛していたことを、俺は知っている。

だから、自然とこちらも嬉しくなった。


ちょっと待てよ。

そこで、俺の脳裏にある考えがよぎる。

「カイマンさん、あなたならソフィを救えるんじゃないですか?」


ソフィは、昔カイマンに感謝していると言っていたことがある。

心の傷を癒す。

それは、育ての親にこそ適任の仕事に思えた。

少なくとも、ソフィを裏切ってしまった俺よりは。


だが、カイマンは首を振る。

「…正直に言おう。私には無理だ」

「なぜですか?あなたなら」

「あの子の心の闇は私では払えないからだ。それができるのは、レオくん。君だけなんだよ」












読んでくださりありがとうございます。


もし少しでも気に入っていただけたのであれば

下にある☆☆☆☆☆から、評価をくださると嬉しいです。


ブックマークや感想もよければお願いします。



「かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。」

も連載中なので、よければそちらもどうぞ。

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