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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第七章】

【第七章】

 河洛州を、北部連合の支配下に置くべく、戦勝祈願は黙々と足場づくりを続けた。その甲斐もあり、魏郡と河内郡をつなぐ埠頭を無事に陥落させ、河内郡の支配を委ねるために百家涼藍へと引き渡した。

「諸将、もう一息で司隷につながる関・陽武だ。疲労の極みにあると思うが、努められよ。」

「陽武への隣接を取れば南部連合に圧をかけることも叶いましょう。」

「その後は、いよいよ魏郡の統治じゃな。」

 その時、伝令が駆け込んできた。

「申し上げます。南部連合・三輔の軍勢が、関内とつながる陜津を落とし、関内へ進軍したようです。」

「なんと、穎川へ行くよりも先にか?」

「こちらを側面から崩す目論見でしょうか。」

「備えねばならぬな。我らも関内へ援軍を送る準備をいたそう。谷遠の関へ進軍の前触れを。」


 当初、南部連合も穎川にいち早く侵入し総力で司隷に迫ると予想していた。しかし、南部の第一勢力が穎川に侵入を果たしたタイミングで、別勢力が関内へ侵攻してきたのだ。

「関内からの侵入を阻止せねば。」

「もとより北部連合は中央に主力を配した為、関内は中小同盟が乱立している。これらが組織的に南部第二勢力の同盟を留めるのは難しかろう。全軍あげて、谷遠を落とさん。」

 号令一下、諸将の動きは早かった。陽武関への隣接を果たし、その返す刀で谷遠関へ部隊を集結させた。


「谷遠の強度ならば、攻略は、さほど心配しておらぬが。」とある武将が不安を口にした。

「指示された要所守備、いわゆる門神ならまだしも、魏郡への遷城を解禁したため、そちらの準備を優先している将も見られるのぉ。」

「今後の足並みの乱れにつながらねば良いが。」

「なに、遷城を早めるものは、今後、中央の戦さで、矢面に立つ覚悟のある者ばかりであろう。その活躍に期待すれば良い。」

 生真面目に、全力を谷遠へ向けた者が貧乏くじを引くようであれば、結束は崩れるし、士気・気力を損ねるだろう。だが今は、遷城を急ぐ者たちが、いち早く前線での活躍を決意してのことであろうと、信じるしか他にない。

「疑心暗鬼。疑う心が暗闇に鬼を生む。信じようではないか。」

「他州の動向も、想定から少しずつ外れる気配も見える。それゆえ、せめて我ら戦勝祈願の内で相互不信に陥らぬよう、全ての将が、互いの会話をおろそかにせず、声を掛け合う事を、改めて心がけよう。」

「うむ。まずは谷遠じゃ。」


 事態が動けば、心も動く。その中で、いかに心の柱を見失わずにいるか。乱世こそ、人としての価値が試される時でもある。


【章末】


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