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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第五章】

【第五章】

 夜陰に浮かび上がる巨城・元。乱世の煽りで随所に火の手が上がっているものの、配備されたおびただしい駐城兵・守備兵によって守られて、鉄壁の防御体制の中にあった。

 元城は、河朔州と河洛州を隔てる要衝。司隷で暴政を行う董卓を誅滅するために、戦勝祈願の一同は、まずここを抜かねばならない。先日、攻城を中断した寿張よりも更に一回り上の強度を誇る。しかし、ここを落とさねば、先へ進めない。多くの武将が早々に部隊を派遣して、行軍によって減滅した、士気・体力の回復を行っていた。中には、名を為さんと意気込む双子の武将、出湖鎮・出湖譚の姿もあった。

「今後を占い、道を開く大戦。なんとしても武勲をあげ、故郷に錦を飾らん。」

「そうよ兄者!我らの身を案じながらも、笑顔で送り出してくだされた母者の願いを叶え、自慢の息子になりましょうぞ。」

 出湖兄弟に限らず、集まった全ての将兵が、沸々と気力を沸き立たせていた。

 今回の作戦は、まずは力ある者が突撃し、敵前衛となった部隊を見極め、対して得意兵種の部隊が当たりに行き、確実に削っていく。その後、百家涼藍の加勢も得て駐城部隊を倒し、その後に兵器部隊を投入して城壁耐久を削っていく。これまでのような力任せの総突撃ではない。

「諸将、指示書を精読せよ!今宵は、無理を通す作戦。流れを理解し、思いを一つにせよ!」

 亥の初刻を告げる鐘が近くの寺で打ち鳴らされた時、戦勝祈願の陣太鼓も鳴り始めた。

「指示書のとおり、進軍せよ。」

 すっかり寝入っていたであろう周囲の山の鳥たちが、突然沸き起こった地響きに、一斉に飛び立つ。

 駐城部隊を倒すのにやはり時間はかかった。ジリジリとする中で、次々と得意兵種で突撃を重ねる諸将。そして、皆が見守る中。

「駐城部隊、排除完了!!」

「よっしゃぁー!」

「全突撃!!兵器部隊出番だぁ!削れぇぇぇ!!」

 号令一下、320を越える部隊が攻撃を始めた。それは、地が割れて天が裂けるかと思われるような轟音。そして、雄叫び。

 若い部隊が1つ2つと脱落するが、それを補って余るほどの追加部隊。

「この勢いが維持できれば、なんとか。」

「すまぬ、我が隊は撤退だ。」

「ご苦労であった。後は任されよ。」

「大丈夫。まだ300は戦い続けている。行ける。我らなら、きっと行ける!」

「ぐはっ。体がめっちゃ熱くなっている。」と出湖譚。

 懸命に剣を振り、槍を突き、弓を放ちながら、コツコツと削っていく。交代の駐城部隊が到着するまで、あと半刻。それまでになんとしても城内に侵入し、制圧しなければならない。

 そして。

「申し上げます!城壁突破!城内制圧。トドメは 李天殿です!」

「やったぞぉー!おお、一番城壁を削ったのは出湖譚殿か。」

 全ての武将が歓声を上げる。河朔の勢力が、全土で最初に司隷に連なる州への侵入を果たしたのだ。

 これからが始まり。だが、今宵はこの勝利に酔いしれよう。


【章末】


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