⑥ 慟哭に代えた咆哮
今回も“暴力ネタ”……
苦手な方はお避け下さい<m(__)m>
「私、ちゃんと録音しておいたんだ! だから絶対リベンジする!! あと、私を裏切ったマオも許さない!!」
こう息巻いていた彼女……(まだ、茜ともMATHILDEとも呼びかねて“あーちゃん”と呼んでいるのだが)に私は
「あーちゃんに何かあったら私、死んじゃう! お願いだから危ない事は止めて!!」
と懇願している状況で……油断していた!!
まさか彼女がこんな事になっていようとは!!……
“あーちゃん”の事を裏切った田辺真央と言う少女はJKで、“あーちゃん”の居た児童保護施設に後から入所して来た。
入所理由は『母親の愛人が行っていた虐待からの保護の為に』だったらしい。
この少女、まず自分の隠し持っていたお金で“あーちゃん”に洋服を買い与えたり、ご馳走したりして“お金の味”を覚えさせた。
そして、自分と同じ“ショーバイ”をさせる為に自分が通っている高校の制服を盗ませるよう“あーちゃん”を手引きしたのだ。
『どうせオトコにヤられるんなら、それで稼がなきゃ!!JKは“売れる”!』
それが彼女たちの理屈だったし、“あーちゃん”の隠し持っていたスマホが保護施設の職員に見つかり“ショーバイ”の事がバレそうになって保護施設を脱走した時も二人一緒だった。
しばらくは二人一緒でネカフェや安ホテルに泊まっていたが、真央にカレシができて“あーちゃん”の所へ戻らなくなり、二人の関係は自然消滅していった。
“あーちゃん”が外国籍で両親とも消息不明なのと彼女の“ショーバイ”の詳細を知っている人間は真央しかおらず……“あーちゃん”をどんなに暴行しても、彼女が自分から警察などへ駆け込む事はしないと犯人に教えたのは真央に違いない。
この真央という人間の薄汚さに吐き気と憎しみを覚えはしたが、私は“あーちゃん”を養子にして日本国籍を取らせてあげたかったから我慢するしかないと考え、『だから“あーちゃん”も我慢して』と泣かんばかりに説得した。
そして『こんな縁起でも無い制服はサッサと捨てよう!!それより可愛らしい“お出掛け服”を買いに行こう』と“あーちゃん”を街へ連れ出した。
ところが表に出た途端、“あーちゃん”は無口になり……そこそこ混んでる電車に乗り込もうとした時、悲鳴を上げて乗車口から飛び退き、ホームに座り込んでガタガタ震え出した。
とにかく“あーちゃん”を抱きかかえてタクシーで帰ろうとしたがタクシー待ちの短い列でさえ、へたり込んでしまい、彼女を抱きしめたり励ましたりしながらようやくの事で家に帰り、そのままベッドに寝かせ、ずっと手を握っていた。
今まであの子の身に降りかかった様々の……酷くて恐ろしい“暴力”が激しいPTSDを発症させたに違いない!!!
ようやく寝入った“あーちゃん”を起こさないように、私は声を殺してさめざめと泣いた。
そして私は狂った。
“あーちゃん”に近付く悪しき者は全て嚙み殺してしまいたいと切に願った。
私は“あーちゃん”の食事の用意をしながらスマホを立ち上げ、“お急ぎ便”で“牙”になりそうな物に次々と買いを入れた。
幸い明日は日曜だ。大半は明日、荷受けできるだろう。
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先ずは田辺真央を捕まえたい。
散々悩んだ挙句、“あーちゃん”の状態が落ち着いている時に真央の居場所を尋ねたら、“あーちゃん”はスマホの地図アプリを私に見せた。
「この赤い点がアイツの居場所!」
訊けば二人で行動した時にお互いの位置確認でインストールしたらしい。
こんな事になって“あーちゃん”は自分の位置を非表示にしたが、どういう訳か真央はそのままにしていた。
私は自分のスマホと“あーちゃん”のスマホを交換し、買い整えた“牙”をゴッソリ装備して真央を追った。
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ポケット双眼鏡で雑居ビルの出入り口を見張っていると、出て来た人影が……つば広の帽子にペールピンクのふわ波巻きヘア、琥珀色のカラコンで……ああコイツだなとすぐに分かった。
私はバックポケットに手錠を仕込み、スタンガンの電極カバーのマジックテープを剥がして手に持った。
「さて、どうやって近付くか」ともう一度双眼鏡を覗くと、後から出て来た男が真央の腕を掴んだ。
チッ!! 男連れか?!
あ、いきなり真央を殴った!!
私は防犯ブザーの紐を引き、物陰から飛び出し
「火事だ!!」
と叫び猛然と駆け出した。
男が怯んで離した真央の手を逆に引っ掴んで、すぐ近くの階段で地下道に入り、そこから一番近いデパートへ入って中を迷走し、女子しか知らなそうな出口から抜け出て地下鉄に乗った。
地下鉄に乗って、さも心配そうに真央に声を掛ける。
「ホント!怖かったわね! あなた、お家は?」
「ん、テキトー」
「じゃあ、今日はウチに来なさい。お風呂にお布団、スウェットくらいは貸すよ」
こうして上手く言い包めて真央を私の部屋へ引っ張り込み、先に上がらせて後ろ手でドアをロックした。
真央が“あーちゃん”の居るリビングへ入って行って……
“二人”の悲鳴が聞こえてた後、
「ババア!!てめえ!!」とこちらへ向かってくる真央の目の前で「バチン!」とスタンガンをスパークさせたら彼女の足が止まり私はギラリと光るサバイバルナイフを鼻先に突きつけてやった。
「誰がババアだって?!」
スゴむ私の声に真央を追いかけて来た“あーちゃん”まで固まってしまった。
「こっちは!!私の可愛い“あーちゃん”をあんな目に遭わせたお前をブチ殺したくて仕方ねえんだ!!」
実際、私の手は突き刺したくてウズウズと震えていたので真央は廊下にへたり込んだ。
「“あーちゃん”! そこのスリッパ置きに手錠が引っ掛けてあるでしょ? コイツに後ろ手で掛けて」
真央の喉際までナイフとスタンガンを突き付けて置いたので、“あーちゃん”は難なく真央に手錠を掛ける事ができた。
。。。。。。。。。
イラストです。
今回は“あーちゃん”
暴力シーンはなるだけ書きたくないのですが……(:_;)
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