表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/77

8 『千の魔法を持つ者』

 窓から飛び降りたレオーネは、カードを手に持っていた。

 そのカードを一枚、地面に投げる。

 すると、空中に大きな水の塊が現れた。

 五メートル四方はありそうな塊の中にレオーネが足から入るや、落下スピードが水中のように緩和され、ゆったりと水中を通り抜けると、高さ三メートルほどの地点からまた普通に地上へと降り立った。

 もちろん、レオーネの身体は濡れていない。


「《空中プール(アクアブロック)》」

「すげーなー! レオーネ兄ちゃん! 初めて見た魔法だぞ!」


 感激するリディオに、レオーネがにこやかに解説してやる。


「この前いただいた魔法さ。空中に水の塊を出せる。そこを通り抜ければ落下速度を落とせるし、塊の中から出なければ空中に留まれる。中では息もできるし濡れもしない」

「へえー! おれもやりたいぞ!」

「あとでな、リディオ」

「おう!」


 レオーネは爽やかにロメオに言った。


「さて。話は歩きながら聞こう」

「ああ」


 ロメオはうなずき、リディオに優しく声をかける。


「すまない。リディオ」

「いいぞ、別に!」

「またあとで遊ぼう」

「おう!」

「約束だ」


 続けて、ロメオは報告に来てくれた少年に言った。


「案内してくれますか?」


 レオーネの魔法を夢見心地で見ていた少年は、やっと正気に戻って答えた。


「あ、す、すみません! あんまり突然魔法を使われたので驚きました。レオーネさんはさすがですね。世の中でも魔法を使える人が全体の一割。その中でも二つ以上の魔法を使える人は一割にも満たないのに、『千の魔法を持つ者』って呼ばれるんだから。今の魔法も初めて見ましたけど、本当に千の魔法を持っているんですか」

「さあ。どうかな。それより、案内を頼むよ」

「あ、はい! そうでした! こっちです!」


 ロメオがリディオに軽く手をあげ、三人はロマンスジーノ城の門を出て行った。

 ラファエルが城館から出てきて、後ろからリディオに呼びかけた。


「リディオ」

「なんだ、ラファエルもいたのか!」

「残念だったな、ロメオさんと過ごす時間がつぶれて」

「いいんだ。ロメオ兄ちゃんはマノーラのために頑張ってるんだからな!」


 兄のロメオと過ごす時間をなにより大切にしているリディオだけに、残念な気持ちがないと言ったら嘘になるだろう。しかし本当にそれは割り切っているようで、ラファエルはふっと表情をゆるめる。


「なにして遊ぶ予定だったの?」

「雪だるまつくろうって話してたんだぞ!」

「じゃあボクとつくろう」

「おう! 楽しみだなー! やるぞー!」


 リディオが張り切って、ラファエルも「うん」と楽しそうに微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ