表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/77

74 『戦闘開始』

 二人の友人は、なぜこんなところにいるのか不明だった。

 だが、気まぐれに遊びに来たような雰囲気である。

 イストリア王国中を観光すると言っていた二人だから、たまたま観光地に選んだだけに過ぎないと思われる。

 そんな二人は、レオーネとロメオと同い年で、つい最近知り合ったばかりの(せい)()(じん)の男女だった。

 アキとエミである。

 サンバイザーがトレードマークの自由な二人組で、イストリア王国各地を観光している間、ロマンスジーノ城を拠点に生活している。たびたび城を空けて数日帰ってこないなんてこともあるが、今もどこかへ行っている期間だった。今朝も見ていない。

 それが帰ってきたらしい。


「なんだあれー!」

「なんのモンスター!?」


 びっくり仰天のアキとエミに、レオーネが声をかける。


「二人共、危ないから近寄らないで」

「あ、レオーネくんとロメオくんじゃないか!」

「レオーネくんとロメオくんも危ないよー? こっちにおいでよー」


 エミに手招きされるが、はいそうですかと言うわけにもいかない。アキとエミの強さや隠し持っている能力など、わからないことも多い。だが、なぜだか、こんな状況だからか、彼ら二人に頼ってみようと思った。唐突に現れた二人に、レオーネはお願いすることにした。


「あの二人をここから遠ざけてやってくれ。それから、観光客の老夫婦も。オレとロメオが戦う」

「頼む」


 ロメオにも言われて、アキとエミは顔を見合わせ、力強くうなずいた。


「わかったよ!」

「こっちは任せて!」

「絶対勝ってね! 《ブイサイン》」

「気をつけてね! 《ピースサイン》」


 アキとエミが必勝祈願と安全祈願をしてくれる。


「グラッチェ」

「ありがとう」


 レオーネとロメオも礼を言って、『大気(アトモス)の王』と向き合った。


「さて。あとはやるしかないな。相棒」


 ロメオはゴーグルに手をかけ、装着した。

魔法透過(バニシングスルー)》が発動する。

 これで、魔法の効果をすり抜けることができる。『大気(アトモス)の王』にも効果があるかはわからないが、戦闘準備はこれだけしかない。


「もちろんだ。二人で止める」




 今回、アキとエミは、物語を変えるつもりはないらしい。『トリックスター』と呼ばれる二人は、ただ危険な状態にあるドメニコとジュストを助けてくれた。観光客の老夫婦も含めて四人をこの場から遠ざけて、勝利と安全を祈ってくれた。

 ここまでされたら、レオーネとロメオがするべきことは、ただ『大気(アトモス)の王』を倒すだけだ。

大気(アトモス)の王』の注意を引くためにも、ロメオが近づいて行き、撹乱を試みる。

 殴りかかられても、持ち前の反射神経で避ける。

 それを何度か繰り返すが、『大気(アトモス)の王』が暴れてレオーネにまで攻撃の手が及ぶ。レオーネはサッと飛んで離れるが、攻撃は続けざまにきた。もう一方の拳もレオーネに振り抜かれた。


「相当動けるな」


 とつぶやき、レオーネは苦笑を漏らした。

 このままでは、拳がレオーネにヒットする。

 しかし、拳はいなされた。

 レオーネの上着の袖が拳を軽やかに叩き、レオーネがうまく方向転換して避けたのである。


「《ファブリックアームズ》。オレのこの上着は、腕が武器になる。自在に動く構造になっているんだ。これを使わせるなんて、かなりの苦戦を強いられそうだ」


 いなされた拳は空振り、遺跡を破壊した。破片が散らばる。その破片をも、レオーネの上着の腕が弾き飛ばした。

 普段レオーネが肩にかけている上着は、勝手に動く。魔法の力で上着自らが考えて動くように仕掛けられており、腕が手刀を繰り出すように遺跡の破片を壊し、レオーネには傷一つつかない。

 アキとエミがレオーネとロメオ以外の者をこの場から遠ざけてくれたとみて、レオーネが言った。


「いいぜ、ロメオ。そろそろ攻略開始だ」

「了解」


 ロメオは直接攻撃を仕掛けに行く。


「《打ち消す拳(キラーバレット)》」


 魔法効果を打ち消す拳である。

 これを巨大な王の足に打ち込む。

 だが、なんの効果もなかった。普通の魔力体へこの攻撃をした場合、魔力で覆っていたものを剥がしたり破壊したりできる。

 それなのに、魔力によってできていると思われた『大気(アトモス)の王』には、ただのパンチにしかならない。


「おそらく、魔力体であろうと生物として一つの身体になっているからだ。微生物の介入により、魔法を扱える一生物になったんだ。もしその理由で攻撃が通じなかったとすると、オレの予想では、相手の攻撃もすり抜けられない」


 レオーネが推論を述べる。

 同時に、ロメオは『大気(アトモス)の王』から繰り出された拳を腕の防御で受けた。

 後方に数メートル、宙を舞いながら飛ばされる。

 腕には激痛が走った。


「っ……」


 痛みに顔をゆがめ、ロメオはそれでもしなやかに着地する。


「ロメオ」


 レオーネがカードを投げた。

 カードはロメオの腕に吸収され、痛みが引いていく。


「骨折までは治らないが、痛みはなくなる。補強もされた状態だ。やれるか?」


 ロメオは小さく微笑んだ。


「当然だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ