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67 『決着の日』

 のどかな朝だった。

 ロメオは目を覚ますと、食事と身支度を済ませて、新聞を読みながらゆっくりとコーヒーを飲む。


 ――今日、決着をつける。


 九月も下旬になった。

 真夏に雪が降った八月一日から始まったこの事件も、いよいよ解決のときを迎えようとしている。

 正午の前にはロマンスジーノ城を出発した。

 昨日までと同じように、ドメニコを尾行するために家の近くに張り込み、ジュストとも合流する。

 ドメニコが出かけるのに合わせて、尾行が開始された。

 三人はそれぞれ別行動する。それも昨日までと同じだ。個別に動きながら、ターゲットを見失わないよう気をつける。

 この日も、ドメニコは公園や広場などを巡った。

 相変わらず、なにを考えているのかわからない動き方で、歩くのも速い。その反面、警戒心はかなりのものだから、尾行も楽じゃない。

 一時間ほど歩いて、とある広場に辿り着いた。

 古代マノーラ広場という。

 旧市街にある。

 遥か昔、この広場一帯はマノーラでもっとも栄えた中心地であり、五つの神殿、演説や演劇のための舞台、記念柱、裁判所などが集まった区域だったのである。面積としては他の広場よりも圧倒的に広い。

 これら建築物をそのまま残したものが、遺跡群となっていた。

 今ではすっかり観光名所である。

 だが、人の姿は少ない。

 マノーラの人間たちは代々歴史を大切にし、ありのままを保存するために広場として形を残してはいるが、観光に来る外国人は、現在のマノーラの中心部でショッピングをしたり、コロッセオを見たり、華やかな楽しみを目当てに訪れる。

 ドメニコはこの広場を観光でもしているかのように首を動かして見て回り、神殿を通り過ぎ、墓地を通り過ぎ、記念柱の脇をすり抜け、演説の舞台がある前までやってきた。

 そこで、ドメニコは足を止めた。

 周囲を見回して、ポケットに手を入れた。

 ここから、ドメニコの行動が始まった。

 なにかを行おうとしている。

 まず、ポケットから小さな玉を取り出した。

 黄色と黒色の縞模様の玉で、手のひらにも収まるサイズのカプセルだった。


 ――やっと、ドメニコ氏の秘密がわかる。


 ロメオは目が離せなかった。

 集中していたから、自分の後ろから迫り来る何者かの気配にも気づかなかった。

 不意に察知し、ハッとして振り返る。

 相手の手が伸び、ロメオは口を押さえられた。

 声を出せない。

 すぐに相手の顔がわかる。

 わかれば、ロメオも少しずつ落ち着いてきた。

 顔を近づけられて、小声でささやかれた。


「落ち着け。ボクだ」

「……」

「いいからちゃんと見ておかないとだろ、ロメオ」


 それはジュストだった。

 手が離され、ロメオは小声でしゃべりかける。


「なんでこんなタイミングでワタシの横に現れる」

「気づかないのか。もう一人、レオーネの他にもだれかがいる。それを報せておこうと思ってな。おまえはまた注意がそれていたぞ。ボクに見つかるのは二度目だ」

「それは悪かった。だが、だれがいるっていうんだ」

「わからない。いることはわかるが、姿が見えない。要警戒だぞ」

「了解」

「ああ。さあ。まずはドメニコ氏の観察だ」


 二人はドメニコのここからの行動を、目を皿にして観察した。

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