61 『ジュストと共に』
レオーネ、ロメオ、ジュストの三人は、カフェに入った。
三人で遠慮なく話してみると、いろんな意見が出た。
エッグについて新たに考えられることはないか、環境問題とモンスター化の因果関係はどれほどなのか、ドメニコのどこが怪しいのか、そもそもドメニコの尾行は続けるべきなのかなど、一度それぞれが考えを口にし出すと、いくらでも語り合える。
ドメニコのことになるとジュストは過激になったが、それも今のこの場では感情もコントロールできていて、冷静さを欠いているわけではない。レオーネとロメオもドメニコへの疑念を持っている点は同じだから、エッグの謎を追うためには、環境問題の改善よりもドメニコの尾行が大事だということで意見は一致した。
そうすると、どうやって尾行するのがよいかという話になる。
尾行によって突き止めたいことは、ドメニコが毎日外を出歩いてなにをしているのか、その狙いはなにか、不審死の直前にどのような行動を取っているのか、ということだった。
ジュストが考えを述べる。
「今までだったら、レオーネとロメオの二人だけだからコンビで動くのもわかる。二人で離れずに、互いに注意喚起し合うのも悪くない。だが、このままではダメだ。そこにボクが入っても劇的に変わるわけじゃない」
「一理あるね。それで、ジュスト。劇的に変える方法に心当たりは?」
レオーネがジュストから意見を引き出そうとする。
「勘違いしないで欲しいのは、普通の尾行が悪いわけじゃないってこと。今日のところは惜しかった。ボクが割り込まなければ、おまえたち二人はドメニコの決定的瞬間を見られていたかもしれない。だが、やはり邪魔が入る可能性もあった。それを分散するのはどうだ?」
「つまり、三人が個人で動くということか」
ロメオがジュストの意見を要約したが、レオーネはすぐに首を横に振った。
「オレは反対だね。危険なことをしていた場合、三人でいっしょにいたほうがリスクは分散される。三人でなら対処できる場面もある。それに、オレはロメオと話しながらのほうが考えをまとめられるしスムーズに進められる」
「おまえたちはどんな仕事も二人でこなしてきた。二人で居すぎたんだ。たまには離れてもいいだろ。別の角度から観察したほうが尾行の精度は上がるとボクは思うが」
ジュストが、今度はロメオに視線を投げた。どちらの考えに賛同するのか、意見を述べろということだ。
「ワタシは三人バラバラに尾行するのもいいと思う」
「ロメオ」
考え直せと言いたげなレオーネを一瞥して、ジュストに説明する。
「どうせやるなら、三人がそれぞれ、互いに見つからないようにも気をつけるべきだ。それほど徹底してやっと、個人の緊張感が高まり、尾行の成功率が上がる」
「おもしろそうじゃないか。ボクはいいぜ。レオーネは?」
レオーネは肩を落として嘆息した。
「二人がやるというなら従うよ」
「そうこなくちゃ」
とジュストがやる気に満ちた笑顔になる。
「まったく、二人共、昔から目的を定めると突っ走るところがあるからな。まあ、今の彼の注意力なら問題ないだろう」
とレオーネは肩をすくめた。
普段は、ロメオはレオーネを補佐してくれることが多く、むしろレオーネ以上の慎重さで物事を運ぶ。そんな堅実さを頼もしく思っているが、身内や仲間などが関わっていると、ロメオは目的意識が高くなりすぎるときがある。ただ、レオーネはロメオのそういった気質も美徳だと評価していた。
「尾行のターゲットはドメニコだが、ドメニコに仲間がいるかもしれない。細心の注意を払っていこう」
「ああ」
「当然、そのつもりだ。明日は、ドメニコの正体を暴いてやろうぜ。レオーネ、ロメオ」
算段はついた。
あとは、明日を待つばかりである。
明日こそはと胸に誓って、ロメオはジュストと別れた。




