57 『存在シャッター』
奇妙な二人組、アキとエミはいつも元気だった。
リディオとラファエルのよい遊び相手になってくれるが、じっとしてるのが苦手なのかすぐに旅に出て、その日のうちに戻ることもあれば数日後に帰ってくることもある。
一週間が過ぎた頃、レオーネとロメオのほうでは《気象ノ卵》の件で進展があった。
目をつけていた人物、ドメニコの住居がわかったのである。
出かけようとするレオーネとロメオを見かけて、アキとエミはピースサインをしてみせた。
「気合入ってるね! レオーネくん、ロメオくん。《ブイサイン》」
「怪我しないように気をつけてね! 《ピースサイン》」
これは、二人の魔法らしかった。
ピースサインでありブイサインでもあるポーズを取ることによって、向けた相手に必勝祈願と安全祈願をしてくれる。
二人のトレードマークのサンバイザーにも、日の丸を挟んでそれぞれアキが『必勝』、エミが『安全』の文字がある。
しかも効果はちゃんとあるようで、どうしたわけか、これをしてもらった日はすこぶる調子がよいのである。
レオーネとロメオは礼を言う。
「グラッチェ」
「いつもありがとう」
アキとエミは二人にニッと笑いかけると、元気よく走り出した。レオーネとロメオを追い抜き、軽やかに手を振った。
「じゃあボクたちも行ってくるよ!」
「明後日くらいに戻るね! ごきげんよーう!」
すいすいひらひらと動き回る彼らが妖精みたいに見えて、ロメオは思わず笑ってしまった。『星降の妖精』の異名は伊達じゃないらしい。
レオーネが楽しげに言った。
「じゃあ、オレたちも行くとするか」
「ああ」
ロメオはうなずき、さっそくドメニコの追跡を始めることとした。
この一週間で『ASTRA』が調べてくれた情報には、ドメニコについて不可解な点があった。
まず、謎の徘徊をしていること。
次に、だれとも交流がないこと。
また、ドメニコは現在だれにも会わずに徘徊をするときだけ外に出ていること。
そして、不審死が起きた現場の近くで見かけることが何度かあったこと。
「ただし、肝心の不審死が起こる五分前には、ドメニコの姿を見失ってしまうらしい」
「言い換えれば、ドメニコ氏の尾行は失敗しているということ」
「同時に、ドメニコの尾行には価値がある、かもしれない。だから、オレたちで尾行をしよう」
「そうだな」
もしドメニコが度重なる『ASTRA』による尾行に気づいていたら、尾行への警戒は強まり、レオーネとロメオも追跡が難しくなる。
だが、不審死が起こる直前のドメニコの行動はなんとしても見ておきたい。
ドメニコの家の付近にやってきて、こっそりと監視できる場所を探す。
レオーネが山札からカードを一枚ドローする。
「こちらの姿を相手に見えなくするか。あるいは、本来見えない場所からでもオレには見えるようにするか。そんなカードを求めて、手札を入れ替えないとね」
適当に魔法を使って、ささやかな人助けをした。助けられた本人も気づかないほどのことを二度、三度とやって、ついにちょうどいいカードが巡ってきた。
「《存在シャッター》」
「確か、割と最近手に入れた魔法だったな」
「ああ。動きを止めればその瞬間を切り取って景色に溶け込める。要するに、動かなければ、景色の一つとしか思われなくなる。存在がなくなるようなものさ」
「それはワタシにも使えるのか?」
「使える。が、使用できるのは一人だけ。オレかロメオどちから一方のみしかこの恩恵に預かれない。どちらが使う?」
「ワタシに使ってくれ。レオーネは手札の入れ替えをしていてもいいし、休んでいてもいい」
「いいけど、オレだけ休むのは悪いだろ」
「構わないぞ」
あんまり平然としているので、それがロメオらしくてレオーネは笑った。
「まあ、オレは手札のカードの整理でもしてるさ。よし、さっそくロメオの存在にシャッターを押そうか」




