54 『カリストの狙い』
アキとエミのことを、レオーネもロメオもカリストも、みんなただのイタズラっ子だと思っていた。
しかし違うらしい。
堂々と胸をそらすアキとエミに、カリストは説明した。
「帽子で顔を隠していたのは、確かに怪しかったかもしれません。ただ、自分はマノーラ騎士団として、不審死について調べていただけです。なにか不審死に関する手がかりがないかを足で探して回り、掲示板にも目を光らせていた。そんな折、掲示板の貼り紙の下に、見逃せない貼り紙があった。『不審死について、我が輩はその秘密を知っている。これを世間に知られなくなかったら、モルターナ公園の林の中に来い。』と地図といっしょに書いてあるじゃないか。マノーラ騎士団を挑発する、《気象ノ卵》の関係者だと思った。そういうことですよ」
とカリストはレオーネとロメオに顔を向けた。
アキとエミはがっくりとうなだれた。
「なんだよー」
「作戦失敗ー」
そして、姿勢を正して、カリストに頭を下げた。
「すみませんでした」
しっかりと謝る二人を見やり、やっとカリストは微苦笑を浮かべた。
「わかってくれればいいんですよ。しかし、あなた方こそ、なぜこのようなことをしたんですか? 《気象ノ卵》の関係者、にも見えませんが」
「うぇざー? えっぐ?」
「アタシたちは、友だちになった子のためですよ。その子たちが不審死のことを話していて、物騒だから困ってるって言ってて。だから、悪いことしてる人がいるかもしれないって思って、捕まえようと思ったんです」
その子たちが何者なのかはわからないが、一般人にまで不審死のことが注目される段階に来たのだろうか。
カリストは話を聞くと、優しく声をかけた。
「市民を不安にさせているのはマノーラ騎士団が頼りないからです。それは申し訳ない。だが、我々マノーラ騎士団が必ず安心安全なマノーラにしてみせる。だから、キミたちは危険なことには関わらないでくださいね」
「はい!」
「わかりました!」
よい返事をするアキとエミを見て、にこりとうなずき、カリストはレオーネとロメオに質問した。
「《気象ノ卵》について、なにかわかったことはありませんか?」
「いいえ。さっぱりです」とレオーネが肩をすくめた。
「そうですか。それでは、自分はまたパトロールに戻ります。またなにか情報があれば教えてください」
「ええ。我々にも教えてくださればと思います。できる協力はなんでもします」
どうも、とカリストは微笑み、去って行った。アキとエミはカリストに大きく手を振って、
「頑張ってくださいねー!」
「ごきげんよーう」
と見送った。
その場に残ったレオーネとロメオは、アキとエミとも別れようとするが、二人は気になることをしゃべっている。
「空振りに終わったのは残念だけど、レオーネくんとロメオくんがいればきっと解決するね」
「うん。アタシもお役に立ちたかったなあ。リディオくんとラファエルくんにも、きっと大丈夫って言っておこうね」
身内の名前を聞き、ロメオが問うた。
「リディオと知り合いなのですか?」
「一昨日かな、知り合ったんだ!」
「そういうロメオくんも知り合い?」
エミがそんな質問をしてから、アキとエミはなにかに気づいたようにずいっとロメオに顔を近づけ、
「あああああああっ!」と声を上げた。そして、そろって叫んだ。
「似てるー!」




