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46 『誘拐犯の目的』

 ジュストがロメオの側にやってくる。


「煙は本物だったか。相性が悪かったな」

「ああ。だが、この程度で済んでよかった。それより、彼らから情報を引き出そう」

「くたばっているこいつらから、どうやって?」


 ここに、レオーネがつかつかと歩み寄り、答えた。


「眠っている相手に有効な魔法がある。下手に起きているより都合がいい」


 カードを誘拐犯たちに投げる。

 一枚のカードはカーブを描いて誘拐犯たち三人を切り裂くように飛んで、レオーネの手元に戻ってきた。ブーメランのようだった。カードはまだ消えず、もちろん、誘拐犯たちに傷もついていない。

 レオーネは言った。


「《()()(しき)との(たい)()》。これは、眠った状態にある脳に直接語りかけることで、深層心理と会話することができる。よほど強い信念がない限り、オレからの問いに嘘はつけない。ただし、一人につき一度だけしか質問できない」

「なるほど。ちょうどいい」


 とジュストが微笑む。

 こうした魔法の使い手はたまにいる。だから、この世界では情報というものが秘匿されやすい。同じ組織にいても、互いの魔法を知らないこともあるくらいに、情報は重要なものだった。


「ロメオ、ジュスト。彼らに聞きたいことはあるかい?」


 先に答えたのはジュストだ。


「確認しておくと、この三人はエッグに関心などなさそうだった。つまり、バックに何者かがいるのか、依頼主がいるのか……とにかく、別のだれかがあの一文を書き足すように指示したと思われる。この三人の目当ては金だけだった。それはいいな?」

「ああ。オレもそう考える」

「だから、だれの指示であの一文を書いたのか。それを聞くことは最重要だ。でないと、真相に近づかない」

「もっともだね。他には?」

「あとは、その人物について深掘りすればいい。もしおまえたちが、誘拐犯がリディオを狙った理由を問いただしたければ、それを聞いても構わないが」

「ロメオは?」

「ジュストに同意しよう。まず、裏にいる何者かが、だれなのか。それを問い詰めるだけで充分だ」


 レオーネはうんとうなずいた。


「さて。じゃあ彼らの心の声と対話してみよう。まず、キミ。だれの指示でオレとロメオにエッグの調査を辞めるようにと書いたんだい?」


 目を閉じて気絶していた一人が、まぶたも開かず身体をピクリとも動かさずに答えた。


「オレたちに、ガキを誘拐して身代金をせしめるのにいいやつがいるって教えてくれた人だ。名前は言わなかった。帽子をかぶっていて顔もよく見えなかった」

「特徴はそのくらいか」


 つぶやくレオーネに、もうなにも答えない。

 今度は、レオーネがまたジュストとロメオに向き直った。


「ジュストの予想は当たったらしい。指示をした人間がいる。しかしだれなのかはつかめそうもない。なにを質問しようか」


 これにもジュストが即答する。


「こいつらが指示役と深い関係があるとは思えない。これ以上の情報は期待できないかもしれないな。一応、その指示役について知っていることを問いただすしかあるまい」


 結果は、ジュストの言う通りだった。

 二人目が知っていることは、帽子をかぶった男が急に接近してきて、誘拐案を提示したことと、レオーネとロメオの魔法くらいのもので、その指示役についてはなにもわからない。

 最後の一人には、一応、彼ら自身の個人情報を聞いてみた。名前や生まれ、現在の生活などを引き出し、質問は終わった。金も底を尽きかけ、生活をしのぐ分と遊ぶ金が欲しかったらしいことまで白状したが、エッグにつながることはなかった。

 誘拐犯たちはマノーラ騎士団に引き渡すことにして、ジュストは先に帰ることになった。


「じゃあな。二人共。さすがのスキルだったぜ」

「いや、今回は褒められたものじゃない」

「ワタシもしくじったしな。昔みたいに」


 苦笑するレオーネとロメオを見て、ジュストは笑った。レオーネとロメオもつられて笑って、ジュストが背を向ける。数歩進んで、肩越しに振り返った。


「誘拐事件があってこんなこと言うのもおかしいが、今日は楽しかった。昔みたいだったよ。いつでも手を貸すから、声かけてくれよな」

「ああ。手伝ってくれると助かるよ」

「気をつけて帰れよ」


 レオーネとロメオが手をあげ、リディオも手を振った。


「またなー」


 ジュストはまたくるりと背を向けて手をあげて去って行った。

 現場には、まだ気を失っている誘拐犯三人と、レオーネとロメオとリディオが残っている。

 ロメオがレオーネに聞いた。


「我々の捜査を邪魔しようとしている何者かがいる。しかし、その人物は我々の魔法まで知っているというだけで、それ以上の情報も得られなかった。ほかに、なにかわかったことはあるか?」

「帽子で顔を隠すのも、なんの特徴にもならない。また捜査は振り出しだ」

「ああ」


 わかっているのは、レオーネとロメオに敵意がある人物がいて、エッグの調査を辞めさせたいことだけである。それ以上のことはわからない。その人物の目的も不明。

 マノーラ騎士団に誘拐犯たちを引き渡すのはレオーネがやってくれるというので、ロメオはリディオを連れて先に帰るように言われた。

 リディオとの帰り道、ロメオはエッグ調査をすることで、どんな人間にデメリットがあるのかを考えていた。

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