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44 『コウモリ』

 レオーネに突きつけられた問いによって、誘拐犯たちは思い出したようにあっと声を漏らした。


「そうだったな! 調査はするな」

「以上だ」


 やはりおかしい。

 レオーネとロメオは視線だけで意思疎通する。


 ――そうだな、レオーネ。これは明らかに、彼らにとってエッグはどうでもいいことであるとわかる。そして、彼らを追求しても、得られるものは少ない。行動に移るのが先だ。


 目と目で考えを伝え合う。長年いっしょにいる二人には、魔法なんかなくても、自然にできることだった。

 銃口をレオーネとロメオに向けながら、後ろに下がって距離を取っていく誘拐犯。

 不自然な動きをしたら発砲される状況の中、レオーネとロメオは機をうかがっていた。

 三人のうち一人が、廃墟の教会の壁の壊れた場所から、外に逃げようとする。その一人だけは銃口を向ける役目を持たないため、先陣切って逃げる算段であろう。


「ッ!」


 しかし、その誘拐犯の足が止まった。

 ばかりか、廃墟内にいる全員が動きを止めた。

 教会の窓の一つが、パリンと割れたのである。

 ガラスの割れる音は、静かな廃墟の教会ではよく響いた。それだけ、その場にいる者たちの驚きも大きくなる。


「な、なにがあった!?」

「だれかいるのか!」


 誘拐犯たちが目をしばたたかせている隙に、レオーネはカードを宙に放った。


「《飛鼠ノ暴風(シャドウアサルト)》」


 廃墟内にコウモリが大量発生して、吹雪のように空間を荒し埋め尽くす。襲いかかってくるコウモリに、誘拐犯たちは頭を覆って身を守る。


「やめろおお!」

「うわっ! 来るな!」

「どけえ!」


 混乱する誘拐犯たちとは逆に、レオーネが魔法を発動させたときには、ロメオも動き出していた。

 一気に敵との距離を詰める。

 同時に、割れた窓ガラスから侵入してきたジュストと視線を合わせて、誘拐犯二人に突撃した。

 ジュストが窓を割って侵入し、レオーネがコウモリを出現させて戦う算段だったのである。

 誘拐犯二人は、ロメオとジュストを間近にして初めて気づき、攻勢に出た。

 しかし、幸い、相手は持っている小銃を構えるだけで精いっぱいのようだった。特殊な魔法を持っているかはわからないものの、コウモリに邪魔されて狙いを定めることもままならず、ロメオとジュストの体術に叩きのめされた。

 二人の立ち回りは、それぞれ次のようなものだった。

 まず、ロメオは小銃を下から払うように腕を上げ、がら空きになったボディに拳を繰り出して倒す。ジュストは小銃を握る手をピンポイントに蹴り上げて、その勢いで身体をひねって後ろ回し蹴りをお見舞いした。

 先に倒し終えていたロメオには、ジュストの技も見えていた。


 ――ジュストも動けるじゃないか。言うだけある。このコウモリたちはレオーネが作り出した幻影であり、実体はない。うまくそれを利用して二人を撹乱させることはできた。残り、一人。


 ロメオの機動力はかなりのもので、一人を倒してから最後のもう一人を倒すまでの切り替えが早い。

 一方、コウモリに視界を邪魔されても、誘拐犯の一人はすぐにこれが偽物のコウモリであることを把握する。


「ただの幻か? 驚かせてやがって!」


 しかも、元々小銃を構えていなかったから、咄嗟の状況で選ばれた行動は、自らの魔法を発動させることだった。大きく口を開く。

 すでにロメオもゴーグルに手をかけており、自身の魔法によって、他者の魔法をすり抜ける形勢はつくられていた。

 だから、発動される未知の魔法にも、果敢に飛び込む。

 誘拐犯が、大きく開かれた口から煙を吐き出した。


「《スモークルーム》」

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