43 『奪還』
扉の先には、リディオがいた。
誘拐犯たちがリディオを取り囲んでいる。
椅子に座らされたまま、手足を後ろで縛られていた。口にはタオルを噛まされているわけでもなく、自由にしゃべれる状態にあるようだ。
リディオはロメオとレオーネを見つけた瞬間、声を上げた。
「ロメオ兄ちゃん! レオーネ兄ちゃん!」
「リディオ。無事か」
「おう! 平気だぞ!」
レオーネとロメオの顔を見たらすぐに明るい笑顔になるリディオ。
まずはリディオが無事だったことにホッと胸をなで下ろし、ロメオは誘拐犯たちを見渡す。
人数は三人。レオーネが《レッド・シルエット》の魔法で探知した結果と同じく、性別はすべて男。人数も間違いない。
たったの三人だが、武器も小銃があるだけだ。
――武器も頼りない。人数も少ない。となると、魔法の力が強い可能性が高い。が、ワタシとレオーネを知って脅迫状を送りつけてきたほどだ。ワタシが魔法を無効化できることも把握しているはず。
それでも挑むということは、かなりの使い手かもしれない。
ただ、これまでも、レオーネとロメオに目をつけて仕掛けてきた者たちは、強さにかかわらずたくさんいた。金銭目当てや逆恨みなど、いろんなケースもあった。今回に関してはエッグが絡んでいるという特殊な事情があるが、いくつもの修羅場を切り抜けてきた経験から、リディオさえ無事に取り戻せれば戦える自負はある。それでもロメオが油断したことはない。
レオーネがアタッシュケースを掲げる。
「リディオが無事でよかった。さて、このアタッシュケースに金はある。受け取ってくれ」
「当然、リディオと交換です」
ロメオもそう付け加える。
誘拐犯たちは黒づくめで夜なのにサングラスをしているため顔もよく見えないが、交渉には普通に応じた。
「よし。まずは金を確認する」
一人が前に進み出て、ロメオがレオーネからアタッシュケースを受け取って、相手の前に持っていく。
アタッシュケースが開かれて、中身を確認した。
「ちゃんとあるな」
おい、と後ろを振り返って仲間に呼びかける。
すると、もう一人の仲間がリディオの手足を縛っていたロープをほどいて、リディオを連れてきた。
一人がアタッシュケースを手に取るのと、リディオが解放されるのが同時だった。
リディオはロメオに抱きつく。
「おれは怪我もしてないぞ」
ニッと笑うリディオのたくましさに、ロメオもつい頬が緩んだ。
が。
誘拐犯のうち、手前にいた二人が、ロメオとリディオに小銃を向けた。
「これで取引は成立だ。もう帰っていいぜ。オレたちもずらかるからよ」
「妙なマネしたら撃つからな。おまえらが動くのは、オレたちがいなくなってからだぞ。いいな?」
ロメオは耳を疑った。
――おかしい。
確かに、相手の目的は身代金にあり、取引が終了したから逃げるのは当然だ。しかし、このまま逃げるのはおかしい。
なにがおかしいのか、すぐに気づく。
――なぜ、エッグについてなにも言わないんだ?
あまりにも関心がなさすぎる。あの奇妙な条件を書いておいて、今ここで釘を刺さない理由がわからない。
その思いはレオーネも同じで、それを問いただした。
「聞かせてくれ。なぜ、エッグの調査を辞めるよう、オレとロメオにここで言わないんだ。大事なことじゃないのか」




