24 『闇医者ファウスティーノ』
数日後。
あれ以降モレノと会うこともなく、ジュストからの連絡もない。レオーネとロメオも『ASTRA』の仕事があり、《気象ノ卵》についての調査ができていなかった。
しかしこの日は、《気象ノ卵》の情報収集を行う。
「レオーネ、どこへ行く?」
「やはり、あの医者のところだろうね」
「なるほど」
「《気象ノ卵》に関しては、マノーラ騎士団もわかっていないことが多い」
「ああ。だが、気になるのは不審死の報告。あの医者――ファウスティーノさんならば、いくつかの死体を調べていておかしくない、か」
「そういうこと。マノーラ一の闇医者だからな。彼の検死結果はぜひ聞いておきたいじゃないか」
そんなわけで二人が向かっているのは、とある医者の元だった。
照座理這捨乃。
マノーラの闇医者で、レオーネとロメオの友人。
年はレオーネとロメオより四つ上の二十四歳。
常に一定の距離を保った付き合いが続く間柄であり、レオーネとロメオもたびたびお世話になる。逆もまた然り、裏社会に通じているレオーネとロメオがなんらかの手回しをしたりと手を貸すこともしばしばある。
二人は、とある病院にやってきた。
だが、中には入らず、裏手に回った。
この辺りは三階建ての建物が多く、細く縦に長い家が並ぶようになっている。
その中の一つに入っていった。
外観としては、三階建ての建物に各階二つずつ、計六つの窓がある。中はマンションのように階段と廊下がある。
しかし、マンションでもなければ、六つの部屋に分かれているわけではない。外観はフェイクで、一つのつながった建物だった。
薄暗い廊下を通り、二階に上がった。
二つのドアがある。
一方は開くことのない作り物、もう一方のドアには、『病理研究室』の看板がかけてあった。
ドアをノックして、レオーネとロメオは部屋に入る。
「やあ。いるかい?」
爽やかにレオーネが呼びかける。
すると、奥から背の高い青年がやってきた。
一八〇センチより高いくらいだが、針金のように細い身体が、この建物みたく必要以上に縦長に感じさせる。真っ白な白衣をまとっているため、骨がそのまま動いているようだった。実年齢よりも年齢を感じさせる。
「レオーネ。ロメオ。どうしたのだ?」
メガネの下から、理知的な切れ長の目が覗く。
ロメオが挨拶する。
「こんにちは。ファウスティーノさん」
「オレとロメオは今、マノーラで増えているらしい不審死について調べてる。話を聞かせて欲しい」
たったそれだけで、ファウスティーノは話がわかった。
「そうか。なら、ついてこい」
「グラッチェ」
「ありがとうございます」
気兼ねする必要もない友人だが、一応ロメオは年上のファウスティーノに敬語を使う。レオーネはフランクにしゃべる。二人のそんな違いすら気にせず、ファウスティーノはいつも冷静で淡々としている。
二人はファウスティーノについて階段を降りていった。もちろん、ドアの外にある廊下の階段ではなく、家の中の階段である。
「気になる死体があったのですか?」
ロメオが問うと、ファウスティーノはニヒルな笑みで答える。
「まあな」