22 『ジュストとの出会い 回想2』
ロメオが気づいた二つのことは、難しい話ではない。
名前も知らない少年についてわかることなど、探偵でもないロメオにはそうそうあるものでもない。
だが、大事なことだった。
一つ目は、ロメオは「ああいう恵まれた人間は、ワタシのような存在を同じ人間とも思っていないことだろう」と思い、あの少年を最初から別世界の人間だと区別したが、それはロメオが勝手に引いた線でしかないこと。逆に、少年のほうはレオーネとロメオを、まるで区別することなくフランクに接してくれたのだ。ロメオは自分の視点がいかに非論理的に物事を決めつけていたのか気づかされた。
二つ目は、この少年とは仲良くなれそうだということだった。だれにでも分け隔てない少年の明るさのせいかもしれない。なんとなく、この少年には気が置けない空気もあって、素直に少年の問いかけにも答える気になっていた。
少年は科学が好きなのか聞いてきた。
だから、ロメオは言った。
「ワタシもレオーネも科学に興味がある。特に物理方面だけど」
「やっぱりそうかあ! ボクも科学が好きなんだ! 将来は科学者になりたいんだ」
天真爛漫に言い切る少年に、レオーネがにこやかに聞いた。
「科学者ってどんな分野なんだい?」
「生物学かな! いや、自然科学全般かも。植物とか、地学とか、そういうのみんな興味ある」
「へえ」
相槌を打つレオーネに、少年は問いかけた。
「そういえば、まだ名前聞いてなかったね。ボクはジュスト。去琵鬼授澄都だ。おまえたちはなんていうんだ?」
ロメオはレオーネと目を合わせて、順番に名乗る。
「ワタシは狩合呂芽緒」
「オレは振作令央音だよ。二人共、今年十二歳になる」
「じゃあボクと同い年だ! よろしくな」
レオーネとロメオは「よろしく」と挨拶を返す。
三人は友だちになった。
ジュストは、レオーネとロメオがこの辺りに住んでいると聞くと、よく遊びにくるようになり、共に過ごす時間も増えた。
とりとめもなく科学の話をすることが多く、なにか気になる科学の課題について延々と議論するようなこともある。考えたことをだれかに話すわけでも研究結果を発表するわけでもないが、科学の話をするだけであっという間に時間が過ぎる。
また、レオーネとロメオは、ジュストにあのフラスコのことも教えてもらった。
「ボクの父さんが科学者でさ、《気象ノ卵》っていうのを発見したんだぜ! それでボクは調査してたんだ」
「《気象ノ卵》って?」
ロメオが尋ねると、ジュストはとっておきの秘密を打ち明けるように話してくれた。
「実は、世界中の人はみんな知らないことなんだけど、空気には魔力があるんだ。空気中に窒素や酸素、二酸化炭素なんかが含まれているだろ? あれと同じで、魔力も空気を構成する成分の一つってわけさ。でも、普通の人には目に見えない。父さんはそれを見ることができる魔法が使えるから発見できたって言ってた」
「へえ。おもしろい」
「もっと教えてくれ」
レオーネとロメオがせっつくと、ジュストは「まあまあ。話すから」となだめるように両手を向け、コホンと咳払いをする。威厳はないが、学者が研究を発表するみたいに背を伸ばして、
「この《気象ノ卵》は、魔力の粒で、球状になってる。タマゴみたいな感じ」
「だからエッグか」
「いいや。それもあるけど、それだけじゃないんだレオーネ」
もったいぶってニヤニヤしてレオーネとロメオを交互に見てから、ジュストは続きを話した。
「ぱんぱかぱーん! タマゴからは、妖精が生まれるんだぜ」




