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15 『魔法を盗む』

「わしの魔法を盗むだと?」


 怪訝そうな瞳をレオーネに向け、モレノは不快な声で言った。

 それにもひるまず、レオーネは悠々とカードをシャッフルしている。


「盗むといっても、原理を盗ませて欲しい。オレたちは『ASTRA(アストラ)』。革命家であり、盗賊であり、マフィアと縄張り争いするアウトサイダーであり、マノーラ騎士団の友人で、マノーラの治安を守る正義の味方です。他にもいろんな顔があるが、盗賊といっても義賊だから、なんでも人のモノを盗むのはオレくらい。オレは、魔法の原理を盗めば自らもその魔法が使えるようになる。むろん、盗んだあとも、あなたはこれまでと変わらず魔法を使い続けることができる」

「……ほう。つまりはコピー。要するに、わしがおまえに魔法の情報を教えてやるだけでいいのだな?」

「その通り。それだけのことです。オレはそうやって盗んだ魔法をカード化してデッキをつくり、五枚の手札を引いてランダムに魔法を使う。それがオレの魔法、《盗賊遊戯(シーフデュエリスト)》です」


 モレノの返答は早かった。


「わかった。教えよう」

「ありがとうございます」

「『ASTRA(アストラ)』の名は、わしも聞いたことがある。主導者は『革命家』と呼ばれた、『華麗なる大盗賊』時之羽恋(ジーノ・ヴァレン)。やつは『美の化身』ともささやかれているそうだな。わしもその組織について知らないが、盗賊とは聞いても悪い噂は聞かない。ただし、『敵対すれば命を落とす』、ということ以外はな」

「あはは。まあ、いろいろあります。ただオレたちはオレたちの正義を掲げるだけで、優しい市民の味方ですから、悪事を見逃せない時だけ、ちょっと」


 とレオーネはウインクしてみせる。

 今度はモレノが「ふはは」と笑った。


「変な組織だな、『ASTRA(アストラ)』」

「まったく。変わった組織なんです」

「そのカード。無数の魔法を扱うスキル。このマノーラに来る前から噂には聞いたことがあった。もしかしたら……と思っていたが、おまえが、『千の魔法を持つ者』か」

「正確にはいくつ持っていたか、覚えていませんが……確かにオレはそう呼ばれています」


 それがレオーネの異名だった。

 本人さえ数え切れないほどの魔法を保有し、それをランダムに使うことができる。

 マノーラの外でも、レオーネとロメオは知られた存在なのである。ヴァレンが世界で十本の指に入る有名人なのだから、その最高幹部である二人も知られていて不思議ではない。


「さて、それではモレノさんの魔法《大気視覚アトモスフィア・アイズ》について、教えていただけますか?」

「わかった」


 モレノは、自身の魔法について語った。

 知っていることをあますことなく説明する。自分にしかわからないような感覚の部分の話さえした。目の奥にまぶたがあってそれが開く感じだ、とか、魔法を使った状態でも生活はできる、とか話して、モレノは聞いた。


「これでいいか?」

「はい。カード化されました。これはいわゆるコピーです。そして、オレはこのカードを使う。《シェア・ファイブ・センス》」


 なにを始めるというのか。モレノはレオーネの指先を見つめている。人差し指と中指で挟まれたカードを、ロメオの腕に触れさせる。カードは消えた。


「これによって、オレとロメオは五感を共有できる。五感――すなわち、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚だが、そのうちの一つのみが共有される」


 レオーネは微笑を浮かべ、


「おかしな欠陥もある魔法で、音も匂いも二重に感じるし、視野も二つ持つことになる。元の持ち主は、スポーツ選手で、二人組で競技をするプレイヤーだった。彼は相棒と二つの視野を持ちながら戦ったそうだ。自分が俯瞰的に見えるのが最大の強みだと言った。が、それはまた別の話です。オレはただロメオにも同じものを見せるだけ」

「今回必要なのは視覚のみですからね」

「ということで、さっそく使わせてもらいます。いくよ、ロメオ」

「了解」


 レオーネはカード化したばかりの魔法を使用した。


「ちなみに、盗んだばかりのカードについては、特別に手札に入れられるんです。《大気視覚アトモスフィア・アイズ》」

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