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人生失敗大学生が失敗した理由、あるいはエッセイという名の弾劾

作者: 星宮星雅

 私だって、こんな大人になりたかったわけじゃない。

・はじめに

 学習意欲という言葉がある。今となっては教育現場の人間だけでなく多くの一般市民が知る言葉だ。

だが、現実にこの学習意欲という言葉を意識して、それを引き出すために行動が出来る大人は一体どれほどいるだろうか?その行動を成功させられる人間がどれほどいるだろうか?


・失敗の始まり

 昔、私は3つ上の兄にべったりくっついているような子どもだった。兄の方も私を邪険にせずよく気にかけてくれて、本当に仲の良い兄弟だったように思う。だが、思えばソレが私の失敗の序章でもあった。

小学校や保育園に入ると年齢でクラスが分けられる。だが、ずっと兄にべったりくっついていた私は兄の居ない環境に戸惑うことしか出来ず、気が付けば私は孤立していた。

しかし、兄が家で友達の話をしていた所為か?あるいは単に既存の学校のイメージに引っ張られた所為か?厄介なことに私には友達を作らないといけないという強迫観念のようなものがあった。

環境に馴染めない幼子が無理に仲間を作ろうとするとどうなるか?もし、すんなり、いい仲間に巡り合えると思うなら、そいつは頭ハッピー症候群か何かで脳外科医にかかることをお勧めする。

答えは、無理に周囲の気を引こうと言いなりになる、一人ぼっちで言いなりなので何をしてもいいサンドバッグだと思われる、中でも特にタチの悪い生徒に目を付けられる。の3つ全部だ。

当然学業の方も無影響とはいかず、小学校低学年の私には「勉強は難しい」という意識が植え付けられた。


・ゴロゴロと転がり落ちて

 小・中一貫だったため、悪い生徒に目を付けられることは変わらず、ならばと高校は少し遠くの学校へ通ったが、一度染みついた性根がそう変わる筈もなし。私はまた2年もの間孤立することとなった。

幸い、介護学科だったお陰もあってか高校でいじめられることはなく、3年生の時にはよい友人を得られてのでそれはいいのだが、問題は小・中と長年かけて積み上げられた卑屈な性根である。

ちょっとしたことでプレッシャーによる胃痛を起こし、勉強は必死にかじりついては見るものの心の何処かで「どうせできない」と囁く自分があり、それゆえに直ぐに馬鹿らしくなってやめてしまう。

元来不器用な上に元々人間関係から逃げてきた男が上手くやれるはずもなく、実習でも失敗体験を積み重ね続ける結果となり、高校卒業後は次々就職する学友を後目に一般大学へ逃げるように入学した。

泣きながらも必死になったお陰で資格自体は取れたのだが、報告を受けたのがICUで意識が朦朧としていた時だったことが災いして、大した成功体験にならなかったのも大きい。つくづく魔の悪い自分である。


 ・ゴーレムではなくガラテアに

 教員諸君はよーくご存じだろうと思うが、教育心理学にはピグマリオン効果とゴーレム効果がある。

ギリシャ神話において彫刻をこよなく愛したピグマリオン王。

その愛が女神に通じたことで彫刻は動き出し、彫刻の美女ガラテアはピグマリオン王の王妃になった。というのがピグマリオン王の逸話である。転じて、人形偏愛症のことをピグマリオンコンプレックスと呼ぶのだが、今回は関係が無いのでピグマリオンコンプレックスの話は脇に置いておく。

今回大事なのは教育心理学におけるピグマリオン効果であり、その内容を簡単に言い表せば期待によって意欲を高めることを指す。無論、物事には限度というものがあるので、兎に角期待すればいいというものではないのだが、少なくとも否定を繰り返すよりはよっぽどマシである。何故なら、その否定を繰り返した結果がゴーレム効果、否定による意欲低下につながるからだ。

失敗→怒られる(否定される)→意欲低下が更なる失敗を招く→なんの役にも立たない木偶の坊ゴーレムが誕生する。この負のエスカレーターに私は乗ってしまった。私だって本当はガラテアになりたかった。


 ・おわりに

 私は何も叱るなと言っているのではない。一度も叱られずに育てば増長した勘違い野郎になる。

だが、面倒を見ている子どもが生徒が失敗した時に考えてみて欲しい。何故こんな失敗をするようになったのだろう?本当に責任は彼または彼女だけにあるのだろうか?真剣に考えて欲しい。

人を作るのは環境であり、罪はその人自身だけの罪ではなく、その人を作った環境の罪でもあるのだ。だからこそ、私は今こそ失敗者として警鐘を鳴らしたい。伝えなければならない。

【汝、罪ありき 1人に背負わせるべからず】、結局のところ、言いたいのはこの一言だけなのだ。


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