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「はじめまして、マリアンヌ様。この度、講師を賜りました、リリーナ・クロフォードと申します。宜しくお願い致します」


髪をシニヨンでひとまとめにして、眼鏡をかけた女性が挨拶をする。着ているドレスも控えめな紺色のドレスで雰囲気も先生そのもの。眼鏡をかける姿は、絵本で見たことのある、ヒロインを厳しく躾けるテンマイヤー先生みたいだとマリアンヌは思った。


「はぢめまちて、くろふぉーどせんせい。まりあんぬ・あどねりあでごじゃいましゅ」


椅子から立ち上がり、カーテシーで挨拶をする。綺麗にみえる様に、慎重に。


「マリアンヌ様、丁寧なご挨拶ありがとうございます。流石、公爵家のご令嬢ですね。所作も大変綺麗です。マリアンヌ様のご年齢であれば不足はないかとおもわれます。ただ、レオン様の隣に立ちたいと思われてるいらっしゃるのですよね?」

「はい、しょうでしゅ」

「レオン様もお小さい頃にはわたくしがお教えしたんですよ」


にっこり笑ってリリーナが教えくれる。


「そうなのでしゅか?」

「はい。レオン様がお小さい頃はとってもやんちゃで、なかなかに扱いの難しい生徒ではありましたが、わたくしがお教えした中ではもっとも優秀な生徒でした」


「では、わたくしは、れおんしゃまのつぎにゆうしゅうなせいとといっていただけるようにがんばらねばですね」

「まぁ、マリアンヌ様。えぇ。えぇ、わたしくもしっかりお教えさせていただきますね」

「はい、よろしくおねがいいたしましゅ」


リリーナの講義はとても厳しく、レオンの為と思って頑張っているマリアンヌでも、くじけそうになってしまう事も度々あった。

だが、厳しいだけあって、マリアンヌの所作はみるみるうちに洗練されていった。元々侯爵令嬢として教育されていた土台があった事もあるが、それでも、マリアンヌのたゆまない努力の賜物と、リリーナは認めていた。




リリーナの講義が始まって早半年。基本的な内容はもう会得したとマリアンヌはお墨付きをいただいた。後は学んだ事を忘れる事なく、実際に日々の生活の中で生かしていけるかどうか、実際の場で体験をしていく事が必要とリリーナから話されていた。


「マリアンヌ様、そろそろ実際に学んだ事を生かせるかどうか、実地訓練を行ってみましょう」

「じっちくんれんでしゅか?しょれはどのように?」

「お茶会をしてみましょう。お客様をお呼びして、マリアンヌ様主催のお茶会を行うのです」


「おちゃかいでしゅか?でもわたくし、おともだちとよべるかたはまだだれもいなくて」

「マリアンヌ様、お茶会に及びするのは何もご友人だけとは限りませんよ?まずはレオン様をご招待してみてはいかがですか?」

「れおんしゃまをでしゅか?きていただけるでしょうか?」

「マリアンヌ様のご招待であれば大丈夫ですよ、きっと」


マリアンヌは、リリーナに教わった様にレオン宛に招待状を準備した。レオン様の事を考えながら一文字一文字丁寧に書き、リリーナに託して渡して貰う事になった。


「確かにお預かりしました。きっとレオン様も楽しみにされると思いますよ」


招待状に記載されたお茶会の日程は1週間後。場所はアルドネア侯爵邸。招待客はレオン一人なので、会場のセッティングは2脚の椅子とテーブルのみ。


後はどの様なお茶を用意するか、テーブルを飾る花はどういった物にするかなどは、マリアンヌの采配となる。


季節は秋。日差しはまだ暖かいけど、風が冷たく感じる事もある。折角レオン様に来ていただくのにはと、マリアンヌはリリーナに相談しながら、色々と考えた。




招待状を出して1週間後。いよいよレオン様を招待してのマリアンヌのお茶会が開催される日。


レオンからは、是非にも参加したいとの返信がリリーナの手によって届けられていた。

王宮での出会いから半年ぶりに会うレオン。少しだけでもレオンのレディーに近づいたかどうか、マリアンヌはもうドキドキして昨夜は眠れない一夜を過ごした。


「レオン様がおつきになりましたよ、マリアンヌお嬢様」


リンダがマリアンヌに声をかける。

マリアンヌが駆け足にならない程度の早足で玄関に向かうと、ピンクの可愛らしいバラの花束を抱えたレオンが立っていた。


「ようこそいらっしゃいました、れおんしゃま」


リリーナに指導されたカーテシーを披露する。流れる様な気品のあるカーテシー。

頭の先から指先まで一本の糸が通っているからの様な、精密な動き。マリアンヌの可愛さも相俟って、周りにいた従者やメイド、リンダまでもがほぉーっとため息をつく。


「お招きありがとう。マリアンヌ、少し会えない間に、こんな素敵なレディになって。リリーナが褒めちぎるのも無理はないかな」

「くろふぉーどせんせいがでしゅか?」

「そうだよ。レオン様は素晴らしい教え子だったが、マリアンヌは、私の最高傑作だ、そうだ」


「くろふぉーどせんせいがそんなことを?」

「なかなかに辛口の先生だが、自分が認めた教え子には支援を惜しまない方だよ。良かったね、マリアンヌ」

「ありがとうごじゃいましゅ」







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