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花びらが三枚  作者: Suzugranpa
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第7話 原動力

 陸は珍しく担任の先生から褒められていた。模試の合格判定がBまで上がったのだ。


「本橋、この調子だ。現役はここから伸びるからな。自信を持って臨め」


 先生に励まされるなんて初めてだ。陸は却って調子が狂った。先生は陸の目を覗き込む。


「しかし、本橋は何だって急に静水を希望したんだ?」


 うわ、そこ突いて来るか…。言えねぇよ。陸の気持ちはじわっと後退する。


「ははん。さてはカノジョが静水受けるとか、そんな理由か?」


 陸は沈黙してしまった。沈黙は金…ってこの場合はどうなんだ。


「図星だろ」


 先生は笑った。


「咎めてるんじゃないよ。そう言うのがな、男の最大のパワーを引き出すんだよ。いいことだ」


 先生は陸の肩をポンと叩いて行ってしまった。若干違うけど、弁解するほどの違いはない。奏さんが彼女って…。


 いやいやいやいや・・・ 


 年上だし、そもそも苗字すら知らんのだ。つまり今んところ、勝算はゼロだ。


「帰ろ」


 陸は声に出して席を立った。そうでもしないと自分でも自分が恥ずかしく、居たたまれなくなる。一人で赤面しながら陸は家路を急いだ。


+++


 家に帰った陸は、模試の結果シートをコザクラの前にかざした。


「ほれ見ろよ。やっとここまで来たぜ。これからまだ伸びるってさ。おまえと一緒だな」


 葉っぱを落としたコザクラは何も答えない。


「奏さんのこと、おまえも覚えてるよな。奏さんが僕の彼女って、やっぱ変だよな。あり得ないよな」


 陸は鉢植えの前でぶつくさ繰り返す。


「あり得ないんだけどな、でもそのためなら頑張れる。先生の言った通りだよ。なんか悔しいけど」


 言い残して自室に入ってゆく陸を、コザクラはじっと見送った。


 すぐに陸の部屋の灯りがつき、そして机のスタンドが点灯するのがカーテン越しに見えた。


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