第6話 花冠《カローラ》
だから麻美は、黒髪に黒目がちなその女の子を見て閃いたのだ。クロが毎朝来てくれてたんだ。きっと庭園の向こうにあった林に住んでいたに違いない。あそこからなら市立公園にだってひとっ飛びだもの。やっと判ったわ。
麻美は嬉しくなった。私、ボケてるって思ってたけど、冴えることもあるんだ。
でも林がなくなって、きっとクロはお家を失った。可哀想に。それで新しいお家を探すのに忙しくなったのだろう。だからヒナに、いいえ、正確には子ガラスに頼んだのよ。クロ、お母さんだったのね。麻美の心は温かいものに満たされた。
麻美は女の子に向かってにっこりと微笑んだ。
「お母さんに伝えてくれる?」
「ん?」
「もう気持ちは十分に頂いたからって。あなたたちの事を好きじゃない人間も多いから、この辺には来ちゃ駄目よ。もうお花も充分頂いだから。あ、ちょっと待ってね」
女の子は目をパチパチさせていたが、麻美は構わずに部屋の中に取って返し、そして
「はい。お礼の気持ちよ」
麻美は貰い続けた草花で編んだ花冠を女の子の麦わら帽子に被せた。
「ありがとう、すてき」
女の子ははにかんだ。
「あなたもお母さんも素敵よ」
麻美はまた微笑んだ。
「じゃあね」
女の子は頭の花冠を手で押さえて駈け出す。そして、門扉を曲がり、見えなくなった。
麻美が空に目をやると一羽のカラスが舞い上がっていく。
「やっぱり…」
麻美は呟いて、カラスが黒い点になるまで、満足そうな笑みを浮かべながら見送り続けた。




