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7.たびのはじまり

冬椛のある計画?とやらで東京までむかってもらうのはまだ未登場の春珈にするらしい。……いやな予感がするが……。気のせいだと振り払う。

ようやく最後の美少女が登場するお時間。さてさて次はどんな美少女だろう。

ポチッ。


世界が、見えなくなっていく。まぶたをぎゅっと閉じる。

まぶたを開く。春珈が、生まれる。息を吐いた。

胸が、ある。……今回はさすがに触る気は……えいっ。なんだろう、こう大きすぎず小さすぎず……

→(強調点)ちょうどいい!!

……冬椛が怒ってそう。あの子だけなくて可哀想に、ドンマイです。……ナニとは言わないけど。申し訳ないけど、これははるかにはどうにもならない。柊さんにでも泣きつけばなんとかなるかもしれない。健闘を祈る。

そしてお顔チェック。……ほんわかした、やわらかい優しい感じの雰囲気を出している。どちらにせよかわいい私。3人とも髪が短めなのだが柊さんの好みなのだろうか。自分がデザインしたと言っていたし……。


話を上京作戦に戻そう。

冬椛の計算ではやはりバスが一番安く東京まで行くことができる。……飛行機には乗りたくないんだ。これは全員一致の意見。理由は…そのうち話すから。

柊さんから支給される交通費は飛行機に乗れるくらいの額があるのだが、節約するとそのぶん好きなことに使える。お財布が厳しい今、この差は大きい。

だが8時間ルールがある。バスの中で切り替わるわけにもいかない。バスの中で人が入れ替わる、プロマジシャンも驚く種も仕掛けもあるマジックが完成してしまう。

寝れば8時間にカウントしないのだが、バスの中でよく寝られるかが心配。そこで自称天才冬椛様が考え出したのは、大阪で一回降りるということ。多少必要なお金や時間がためには仕方ない。

流石は冬椛様。その頭脳をはるかにも分けてください。


ここはこの県で一番大きい、はずのJRの主要駅。…なのだがこの駅からは市の中心部を想像できない。少し寂れた雰囲気が漂う。繁華街からは中途半端に離れており、周りに目立つ建物といえば古いバッセンと新しくできたアミューズメント施設くらい。冬椛によると、もともとそんなに栄えていないところに作り、開発に力を入れなかった結果らしい。都会からきた観光客はこの駅を見てどう思うことか。第一印象は大事。地元をこよなく愛する民として玄関口がこう寂れているのが残念だ。


中身は年季の入った、単色オレンジ色の路面電車から降りる春珈。少し前までは味のあるクリームとオレンジ色の古き良き車体だったのだが今では見た目だけ派手な色で虚飾されているだけ。どうしてこうなったんだか。


駅の前のバスターミナルまで歩く。ここから一人旅。無事にたどり着いてやる。



###


ふぅ……無事にたどり着けた達成感に満ち溢れたままバスのステップを駆け下りる。…バスに座っていただけだけど。

ここが天下の台所、大阪ナリか?…時代が古すぎたナリ。

隣の席に人はいなく、快適にバスの中で過ごすことができた。

せっかくなので大阪を満喫したかったけど、残念ながらもう交代の時間。夏珂に切り替わる。


###


せっかく大阪に来たんだし、美味しいもの食べたいな。

というわけでやってまいりました串カツ屋。もう日は沈み暗くなった19時頃。やっぱり大阪に来たら串カツだ。他にも食い倒れの街ということで美味しいものはたっくさんあるけど。入りやすいよう家族連れでも行きやすいようなところにしておいた。



ここで美味しいもの食べて旅の疲れをゆっくり癒そう。まあ今日がんばったのは春珈であたしはほとんど何もしていないんだけど。

「よお姉ちゃん、若いのに一人か?」

悪かったね、こちとら友達のいない寂しい一人旅なんだ。酒を飲んでいたおっちゃんに話しかけられた。しかしあたしは人によく話しかけられるな…可愛くて愛嬌があるからか!理解。冬椛はかわいいけど近づき難いオーラを自ら放っていて愛嬌の一滴もないもんね。

「うん、そうですよ。大阪のおばあちゃんのところに向かっている途中なんです」

当たり障りのないちょうどいい嘘ではないか。

「そうなんか、それはばあちゃんも喜ぶやろな」

「そうですね、楽しみです」


串カツにかぶりつく。サクサクの衣とあふれるこってりとした肉汁、肉々しさ。うめぇ。ここに来てよかった。


 ここ重大な問題がある。寝る場所だ。これから夜行バスに乗るのもありだが、夜の行動は危険を伴う。

あたしは高校生なので、当然ホテルや漫喫に泊まることはできない。そこで自称天才である冬椛が考え出したのは…。

……コインロッカー。正直あの子どうかしてやしないか。

 考えることが鬼だ。発案者本人にこの地獄を味わせてやりたいけど、あいにく今日はもうあの鬼は出てこられないので私が入るしかない。

……駅の人目のない、狭い通路にコインロッカーを見つけた。

 一番大きいものを選び、500円を投入してお邪魔する…鍵どうやってかけるの。仕方なく500円を取り出し、鍵のかからないまま中に入る。まあこんな狭い通路に誰も入って来ないよね。

 体操座りを更にぎつぎつにしたような座り方でようやく座ることができた。

 めっちゃきっつい。膝こぞうが思いっきり豊かな胸に刺さる。背中やおしりは硬いスチールの壁と密着し、とにかく痛い。頭も天井に当たって頭と首の骨がおかしくなりそう。

……もともとおかしいって冬椛が言った気がする。

ピコン『自覚ありかよ』

 すぅ…………私は姉。寛大なり。

 スリープモードを起動させればこちらの勝ち。強制睡眠。

 ぐぅ…すぅ…美少女になって初めての眠りにつく。


###


金属が叩かれて響く音がして目が覚めた。まるで中にいる人にノックをするように。

真っ暗で隙間から少し入ってくる光以外何も見えない……身体中のすべてが痛い。こんなに狭い空間に一晩一人でいたのだから当然の理。

…あたしがこの中にいるのを知っている?寝起きで頭がまだ働かない。

ガチャッ

「やぁ、元気にしてた?」

 …寝ぼけた頭に差し込む眩しい光の情報。ロッカーの扉を開かれた。

「え?」

 一番下段のコインロッカーにぎゅうぎゅうに押し詰められたあたしの目線に合わせてしゃがみ、こちら覗き込む美少女が一人。なにがなんだか。


この舞台はどこでしょうか。

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