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6.これからのお話、!

 真っ黒な空が橙に色づき始めた。このまま明けないのではないかと思われたじめじめとして暗い夜にもおしまいが来る。名残惜しいがそろそろ行かなくては。いつまでもここにいるわけにはいかない。冬椛の時間制限も来てしまうだろう。

 祈葉さんはまだぐっすり安らかに寝ている。起こすのも悪いのでこっそりと去ろう。置き手紙と連絡先くらいはおいておく。下のくまが気がかりだ。普段は寝れていないのだろうか。

 祈葉さんを起こさないようそっと扉を開く。

「うぅ…」

 もう11月の半ば。冬はまだ本番ではないが朝は冷え込む。あ、太陽の頭が少し見えてきた。黒色の世界が、朝日に照らされて。太陽に負けない眩しさでわたしも燃え尽きたいな。


……また雨の日のにはここに来てもいいかな。


「一日の時間制限に達したので強制切替します」突如響く無機質な男の人の声。頭の中で響くようでなんか不愉快。驚いて周りを見渡す。…この声、柊さんベースじゃないか。道理でふゆかい…ゲフンゲフン。……あたし今夏珂じゃん。強制切替ってそういうことか。

 誰にも見られていなくて良かった。これからは気をつけないと。


 よし、我が住処にかーえろっと。ゆっくり歩きだす。


 ソファーへ飛び込む。ふー、まだ一日しか住んでないのに実家のような安心感。このボロ…な、懐かしい感じが安心感を与えるのだろうか。

 そうだ、柊さんに深刻な事態の改善について相談しなくては。チャットアプリを開く。

『柊さん、寝られないのに困っているんですけど。』

 3秒後。

『了解した。』

 え、こわ……。

 3分後

 アプリ通知『アプリの更新Ver.2.0.0:スリープ機能、自動覚醒機能、スリープ中の一日存在制限時間無カウント、3人でのボイスチャット機能』

 うわ、怖っ……。ソフトウェア開発って時間かかるものではないのか。そもそも、切り替わりの仕組みがよくわからないけど。魔法か神の業かなにかでしょうか。

 けどあたしがどう頭を働かせようがそんな見えないものは解るはずもない。

 まあ寝られるようになったのはとてもありがたい。感謝しとくわ。

 そうだ、大家さんの相談を聞きに行くように柊さんに言われてたんだっけ。夏珂のほうが適任だろうし話を聞いてみるか。ちょっとめんどくさそうだけど。


 あ、大家さんがアパート前の花壇に水をやっている。やっぱりご老人の朝は早いね。

「おはようございまーす、朝から精が出ますね」

「いやあ好きでやっていることだからね。あんたも若いのに朝早いねえ」

「いやー、なぜか早く目覚めてしまって」平然と適当な嘘をつく。

「……あんたに任せてもいいのかね。あのイケメンは随分とあんたのことを買っていたようじゃが」

 このおばあさんは人の名前を覚えられないのかな。……柊さんはどこまで私のことを知っているんだ?むしろ知っているなら、あたしの今までの醜態を理解しているはずなんだけど。まああたしに期待してくれているなら、できる限りの働きはしてみせたいものだ。あたしを自由にしてくれた人なのだから。

「あたしにお任せください!できる限りのことは何でもしますよ!!」

 …大見え切っちゃった。あの、おばあちゃん、なんでそんなにすがるような目であたしを見ているのかな。もう後には引けないんですか……。

「…よし、あんたのその自信を買った。任せたぞ、小僧」

 …小僧?…やるっきゃねぇか。どんと来いや。


 おばあちゃんのお部屋にお邪魔する。これで二度目か。この部屋だけやけにきれいなんだよな。とてもとても外見の酷…味わい深い見た目からは想像できやしないほど。

 お、抹茶…渋いねえ。若い子に飲ますようじゃないと思うよ、あたしは。まあいただきます。案の定苦い…。

 さあ、観念しておばあちゃんの相談を聞こうか。あたしは負けないぞ。


 大家さんにはひとりの孫が東京にいる。JK2年生。その子を助けてやってほしいらしい。助けを求めるような電話がかかってきてから連絡が来ないようでとても心配だそう。だが足腰が衰えいており自分では行けそうにない。

……というわけであたしの出番ということですか。まかせとけやぁ…責任おもすぎん??何にせよ引くに引けない状況なので進むしかないのですが。

 まずはおばあちゃんの連絡先を頂いておく。意外とハイテクに囲まれた生活を営んでいるようで、パソコンの扱いは完璧(?)らしい。もう80らしいのにすごいなあ。

 これで3人目の連絡先を入手…柊さん、祈葉さん、そしておばあちゃん。祈葉さんからはお怒りのチャットが来たよ…へへ。


 というわけで、あたしたちはしばらく東京へ旅立つんだ!!この案件は長くかかると考えたほうがいいかもしれない。交通費や食費、宿泊費などは出してくれるそうなので本当に助かる。無事お孫さんを助け出してみせましょう!!

 あ、おばあちゃん。そんなに不安そうな目で見ないで……。


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