2.あたしは美少女になる
2.あたしは美少女になる
柊さんは何者なのだろうか。まあなんのヒントも与えられていない僕は、なんの想像もしようがないのだが。
まあ彼が残していったブツを漁るしかないだろう。悩んでいても仕方がない。
まず1つ目、黒く光る最新機種のスマートフォン。
いちばん高性能なやつだ、10万円以上するだろう。セットアップまでされている。
一応僕もスマホ持ってるんだけどな……高校に入るときに買った、もう画面バリバリの一番安かったやつ。
え?僕の指紋と顔登録されてるよ。パスワードも僕の誕生日になってる。怖いんですけど。
あれ?電話帳に柊さんの連絡先が、某メッセージアプリには柊さんだけ勝手に友達登録が。
かわいそうに…友達いないんだな……。
まあ僕が言えたことではないが。後で電話かけてやろ。あいつに聞きたいことはたくさんあるし。
ん?謎のアプリがいくつも入ってるんですけど。アプリ名なし…うん、とりあえず放置!
そして紙袋。運転免許証が一枚、パスポートとマイナンバーカードが3枚ずつ……。知らない人の名前が書いてある。
どういうことでしょうか…偽造かな?犯罪の匂いしかしない……。よし、闇に葬ろう!!!!!
そして僕の第6感が反応した封筒。金だ、金の匂いがするぞっ…!
中には10万円。うん、大切に使おう。も、もうちょっと多いとなんて思ってないよ?
あとは手紙か。うげっ、10枚くらいあるんですけど。ラブレターかな?
……ワープロで打つラブレターなんて聞いたことないや。
要約した
・おめでとう!君は女の子になれるよ!!
・鍵はあるアパートのもの。自由に使いたまえ。
・今日から君は自由だ!!!!!!!
このスマートフォンにあるアプリを使えば3人の美少女になれる?
神すぎるだろ。宗教かしら。こんな事が僕なんかにあっていいのだろうか。どうして僕なのだろうか。
こんな事考えても仕方がないな。ブラインドを下ろす。
なんで軽トラにそんな物がついているのか不思議だったが、着替えのためだったか。
今日はおかしなことがありすぎた。今までが辛かった。もう信じるしかない。
これでいまの現状から抜け出せる。誰の顔も見る必要はない。
偶然僕の目前に舞い降りた奇跡、まさに棚ぼた、これを食わずして何が生物だ。食らいついてやる。
アプリを起動。突然このアプリに名前がついた。「かわいくなりたいっ!」
そうだ、僕はかわいくなるんだ。この暗いちっぽけな世界から抜け出して、大空を見よう。
夏珂、冬椛、春珈。秋がないのは秋休みがないからだろうか。
深呼吸。息を吸う。
3人いる中の1番目の名前を押す。
ポチっ。
ーーー僕は…あたしは「森 夏珂」になった。